今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ
今週はFAカップウィークエンドのためチャンピオンシップのアイキャッチのみ。せっかくたくさんのチームに触れる機会だというのに0-0が3つもあったことは残念極まりないが、その一方でFood for thoughtsの結果もたくさんあった!
チャンピオンシップはまだ終わってなんかいない。そんな希望が示された週末だった。イプスウィッチは4枚交代で何とか追い付いてのバーミンガム戦2-2ドロー、そして何より13勝1敗の首位レスターを3位リーズが撃破した。
まずもって強調しておきたいのは、両チームともが素晴らしいパフォーマンスを見せた試合だったということだ。敗れたレスターにしても開始数分間のバックラインでの混乱を別にすれば(結果的に勝利していた)ここ2試合よりもずっといいパフォーマンスを見せていたし、それを上回ったのが90分間穴のなかったリーズの極めて集中力の高い試合ぶりだっただけに過ぎない。
その上で、リーズは一つのレスター攻略法を示したと言えるだろう。持ち味の超速トランジションを駆使したカウンター、そして攻撃時にポジションを外しているリカルド・ペレイラの裏を突くクリセンシオ・サマヴィルの再三の左サイドアタック。レスターのプロフィールを思えば最もベーシックでシンプルなアプローチに見えるが、ここまでのレスターの相手にカウンターを武器とするチームはさほどいなかったし、サマヴィルほどの突破力を持つ左のワイドフォワードもジャック・クラークくらいしかいなかった(そしてそのクラークも先々週レスター相手に大問題を引き起こしていた)。
つまりは逆に言えば、このリーズに敗れたことをレスターはそこまで恥じる・心配する必要はないようにも思う。リーズほどカウンターに鋭さを持っているチームがこの先現れることはない。もっと言えばその苦しい戦いの中ですら、最後の最後にサム・バイラムが謎のポジショニングと特攻を試みたことで(最後に競り負けたルーク・エイリングを責める声を見たが極めて近視眼的でしかない)上がったクロスにキアナン・デューズベリー・ホールが飛び込んだシーンによって、普通であれば1ポイントを拾うことができていた。結局この敗戦の理由は相手のGKがイラン・メリエだったからに過ぎない。
もちろん今後のポイント獲得への鍵はこの出来を維持できるかどうかにある。先週も書いたが、今シーズン既にロザラム、ハダースフィールド、QPRといった降格圏付近のチームとですら紙一重の試合を多く演じてきているレスターにとって、依然としてこの勝ち点合計をその内容を反映したものと形容することはできない。この試合にしても(時としてこの選手は足が速いだけなのではないかと思うこともある)アブドゥル・ファタウの好パフォーマンスなどの要素が重なったことは否定できず、その意味でミドルズブラのホームに向かう明日の試合には注目が集まる。
順位表の下部では22位と23位の降格圏直接対決があった。15時キックオフの国際配信カード、もちろん英国内では放送がない試合ということになるが、当地よりも一足先に世界の人々がマルティ・シフエンテスがQPRに植え付けようとするフットボール哲学を目撃することになった。
彼らがコーチングという概念そのものがもう何ヶ月間も存在していないチームだったことは、もしかするとシフエンテスにとっては逆に助けになったのかもしれない。相手がロザラムだったことは考慮する必要があるにしても、攻撃時のパス回しには(本数そのものは控えめだったものの)早くも明白な狙いが見えていた。
その戦術とは、左サイドのイリアス・チェアーを最大限に活かすというものだ。チームで一番いい選手を中心に戦術を組み立て一番ボールを集めるのは当然のことと言えばその通りなのだが、それですらも最近のQPRを思えば大変に評価するべきことのような気がしてしまう。この試合のピッチに立った選手の中では断トツトップのシュート4本、もちろんその内の1本があの素晴らしいカーラーでの先制ゴール。さらにはこの試合のタッチ数を見ると、試合全体を通した1位がLBのケネス・パール、2位がLCBのジミー・ダン、そして3位がチェアーとなっていて、左サイドに明確なパスウェイが築かれていたことが示されている。もちろん勝てなかったことは事実としてはあるが、QPRファンに小さくない希望を持たせるには十分な試合だった。
逆に監督業の出口という意味で言えば、日曜日のノリッジの試合は衝撃的ですらあった。スコアだけを見れば1-3、ブラックバーンが普通に勝利しただけのようにも見えるが、その内実は崩壊しきったDFラインの穴を突いて早々に2点を奪った後はブラックバーン側が遊びのようなプレイを連発、そして後半ややねじが巻き戻り3点目を取った後にスコット・ウォートンが退場したことで試合が膠着してしまっただけ。少し運命が違えば悲劇的なスコアになった未来も容易に想像できる。
まだデイヴィッド・ヴァグナーが解任されていないのが不思議なほどだが、もはや去るのを待つだけとなっていたSDスチュアート・ウェバーにとってみれば、盟友とも言うべきヴァグナーをこのタイミングで解任する気力など残っていないのだろう。そのせいもあってか後任SDのベン・ナッパーは当初の予定を早め、次の月曜日から実務を行うことになった。代表ウィーク突入直後、彼の初仕事を予想するのは簡単だ。
遅かれ早かれ解任は間違いないという状況、ヴァグナーのチームはついぞ「積み上げ」を見せることができなかった。思えば昨シーズンの就任直後も結果は出ていたが、その後情報が出揃ってくるといとも簡単に対処法を見出され攻撃パターンの少なさを露呈した。今シーズンも他の完成度が低い開幕当初こそジョン・ロウなどのブレイクもあり強さを見せたが、9月以降の降格フォームはチームとしての上積みのなさ以外の何物でもない。ブラックバーン戦でもそうだったがとにかく前線での連携しての崩し、パターン化された攻めがなく、成績の下降は必然の流れだった。
プリマス 3-3 ミドルズブラは今週のベストゲームと言っていいだろう。とりわけプリマスの3ゴールはいずれも見事だ。上で挙げたノリッジとは対照的に、バリ・ムンバ、フィン・アザーズ、モーガン・ウィテカーといった個の力を持つ選手たちの間に確かな共通理解があり、流れるようなボール回しから得点を奪うことができている。守備陣の無鉄砲ぶりもある種一つの魅力ではあり、少なくともエンターテインメントとしての楽しさを今最も持っているチームかもしれない。
Timesでの赤裸々なインタビュー(有料記事だが、ぜひぜひ読んでみてほしい)が今週大きな話題を呼んだラッセル・マーティンだが、サウサンプトンはその注目に恥じぬレイトウィナーを暫定監督最後の指揮となったミルウォール相手に掴んでみせた。その主役はまたしてもライアン・フレイザー。ニューカッスル時代のプレイする喜びを忘れかけていたという日々を経て、「ご飯も毎日一緒に食べる」セインツでの1日1日を楽しんでいるという旨の彼のポストマッチインタビューもまた感動的なものだった。人間の光と影を知るマーティンだからこそのマンマネジメント術だろう。
ウェストブロムについても触れておく必要がある。3連勝で3位リーズとは2ポイント差の5位。ピッチ外での騒乱を「無視する能力」でまたしても傑出ぶりを見せるカルロス・コルベランのチームらしさが日に日に増してきていて、流行のカウンタープレスに興味も示さずボールを奪われた段階で即起陣する潔さがそのまま成績に繋がっている。プレミアリーグで完全に自信を失ってしまっていたグレイディ・ディアンガーナの3年越しの復活も見ていてなんとも嬉しく、選手たち1人1人のゴールセレブレーションの熱さに今のチームの雰囲気が現れているように見えた。敗れたハルでは延々と完全に適正外のサイドで浪費され続けていたスコット・トゥワインがようやくその確かな才能を見せてくれた。世界レベルであることは疑いようのないプレースキックでまだ本領を発揮できていないことが歯痒いが、彼ほどの能力の持ち主が正当に評価されていない現状はもはや苛立たしい。ようやく見せる適応の兆しに少し胸のすく思いがした。
20位コヴェントリーはこれで4連敗。相変わらず内容的にはまったく悪くないはずなのだが、一方でこの段階まで来てしまうとファンの間から何かしらの変化を求める声が上がり始めるのも理解はできる。現状その中でも最も大きな支持者を持つ意見は「3バックを諦めろ」というものだが、これは当然現状のチャンピオンシップの戦術トレンドを反映した理性的な意見である一方で、その中軸となり得るワイドフォワードの適任者がチーム内にさほど見当たらないという問題点も孕む(それこそ坂元達裕くらいだろう)。その中でマーク・ロビンズは柔軟な姿勢を示唆するコメントも発表しており、試行錯誤が続く。
32分のバリー・バナンの退場さえなければ…という大きなタラレバが付いたブリストル・シティ 1-0 シェフィールド・ウェンズデイの一戦。意外なことにそのバナンの退場は試合後取り消しとなったことでウェンズデイにとってはさらに悔いが残る結果となったが、相変わらずダニー・ルール体制下での前向きなムードが続く。ブリストル・シティはこの試合後リアム・マニングを新監督に任命、この人事についてはまた後日取り上げたい。
他は0-0なので特段取り上げないが、どうしてもハダースフィールドの蛮行には一言物申しておきたい。
現代フットボールの流れを無視する完全守備型の5-4-1。しかも中盤の位置に入っている4人の内ジャヒーム・ヘッドリーとラマーニ・エドモンズ・グリーンは本職DFの選手ですらあり、実質DF7人を並べた布陣で挑み0-0のドローを勝ち取った。
ここ2試合がいずれも前半を0-4で折り返す恥ずべき内容だった、というコンテクストはあるにしても、これはエンターテインメント従事者として許されざる暴挙だ。善処を要求したい。