“Football is a results business“ という有名な言葉がある。その過程に何があろうとも結局重要になってくるのは結果だけであって、結果を出さないことには評価もされないしお金も貰えない。そんなシンプルな考え方だ。
これは事実だ。優勝すること、昇格すること、残留すること。フットボール界に従事する上で究極的な目標となってくるのは結局そういったことであって、それを実現するためには勝利やドローという結果を出さなくてはいけない。フットボールではフェアプレイ賞やゴールの美しさを勝ち点に替えるシステムがないため、結果を出す以外に評価を掴み取る方法はない。
にもかかわらず、大変興味深いことに「結果だけがマター」という考え方は完全に時代遅れのものになりつつある。いや、正確に言えば前述の通り、当然結果は最大のマターではあり続けている。しかしその結果を出すためのプロセスとして、「結果にこだわる」という考え方が時代遅れとみなされるようになってしまったのだ。
先週、Twitter上で横浜F・マリノスの新監督にハリー・キューウェルの就任が有力というニュースについての私見を投稿した。実際に就任するかどうかはまだ発表がないのでわからないが、移籍・人事の噂が紙面を躍らすことの少ない日本(ちなみにこれが個人的に日本のフットボールカルチャーに乗れない理由の一つだ)においてスポーツ紙が報じるのならば、少なくとも交渉自体は行われているということなのだろう。こういう時、マスコミ嫌いをこじらせているのか知らないが利口ぶって冷めた態度を取るのも個人的にはメディアリテラシーがない人だと思うので、もっとこういった不確定情報を楽しむことをおすすめしたい。
その上で、もちろん私はJリーグに関しては門外漢もいいところではあるが、キューウェルについては少しばかり語れることがある。彼がここまでの監督キャリアで指揮を執った4クラブ中、3つがEFLに所属していたからだ。
2017年から18年にかけてのクロウリー、2018年9, 10, 11月のノッツ・カウンティ、20/21シーズンのオールダムの内実について日本で目を光らせていた人など私以外にいるはずがない。少しでも知っていることがあるなら書いておくのが筋だと思い、普段今のEFLに関係ないことはなるべく取り上げないようにしているが、そのルールを破ってこの話題に触れることにした。
https://twitter.com/Japanesethe72/status/1732958030822588785
彼の過去の監督としての成績を見て不安を覚えるのは当然のことだと思う。そもそも(ノッツは一部のマニアなら知っているかもしれないが)それぞれが聞いたこともないようなクラブだろうし、そこでどのような目標を課されていたかなどわかるはずもない。客観的な結果としてどこのクラブでも負け越し、ノッツとオールダムに至っては彼が指揮を執ったすぐ後に降格。「自分で調べるタイプ」であってもここで結論を出す人がほとんどであろうことは想像に難しくない。
ただ、それだけの情報で「マリノスのフロントは何を考えているのかわからない」といったような批判ムードが無批判に広がっていくことには違和感を覚える。あくまでTwitter上での反応を見ての話だが、個人的にはこの件でまさにその雰囲気が見て取れた。
「結果」というのはいわば最も初歩的な数字だ。Wikipediaを見れば誰だって調べられることだし、今回のように対象物がニッチな場合には、(常識的な範囲では)それくらいしかリサーチ可能なものがない時もある。
問題はそれをあくまで一つのファクターと見るか、それとも覆しようのない証拠と見るか、という点だ。
言うまでもなく、後者は “Results Business“ の考え方だ。そしてある程度の間私の発信を見てくださっている人であれば、私がこれを忌み嫌っていることを既にご存じなのではないかと思う。これまで「内容に見合わない勝ち/負け」、「結果こそ出ている/出ていないが…」といったようなことを何回書いてきただろうか。
もちろん発信者、もっと言えば人間の性としてよりセンセーショナルで切れ味のいい意見を書いた方が気持ちいいしインスタントに注目も浴びることができるのでは?という思いもないわけではない。しかし結局のところ、それはモラル的に私が与することのできない考え方だ。
なぜなら、フットボールは「理由なき結果」あるいは「複雑すぎる理由を持つ結果」を大量生産するスポーツだからだ。結果から理由を逆算しようとしても、それはあまりにも困難な試みであることが多い。シュート数が20-1であろうが後者が勝つことだってある。ポゼッションが20-80であろうが前者が勝つこともある。運の要素が堂々と勝敗の決定に幅を利かせ、しかもその運が1シーズンの30~40試合如きで1周する保証などどこにもない。結果はいつだって一面的な結論を導こうとするが、それがフットボールの真実からかけ離れていることを、長年見続けている人なら誰もが知っているはずだ。
だからこそxGに代表されるUnderlying Dataという概念が開発され、この主観に満ち溢れたフットボール界に定性的な評価の仕組みを取り入れようとする動きが活発化している。確かにxGだけで最終的な結論を導こうとするのはありとあらゆる意味で間違っているが、「xGで負けてるチームが勝つこともよくあるから意味がない」とするのも根本的に間違った意見だ。世の中の全てがそうであるように、フットボールもまた複雑怪奇なものであって、種々のファクターの組み合わせからでしかまともな意見を導き出すことはできない。
重要な変数はいくらでもある。前監督が選手たちに植え付けたスタイルとの相性、オーナーシップの問題、サポーターとの関係性。いずれも内容、引いては試合結果に直結してくる要素だが、絶対に結果という数字を見ただけでは到達することのできない領域だ。
繰り返しになるが、よく知らないリーグのよく知らないチームで結果を残せていない監督に対して不安を抱くのは当然の反応だ。それを意見として表明するのもわかるし、何よりそれは言論の自由として保障されるべきことでもある。
ただ個人的な意見を言えば、その時に「自分は結果だけを見ている」という無知の知を忘れるべきではないように思う。第一にそれは時代遅れの思考になってきていて見え方としてもクレバーでない(数週間前の新たな監督人事トレンドの記事でも触れたように)というだけでなく、第二にそういった考えをさしたる論拠もなく広めることは誰にとってもプラスにならないからだ。
ツイートでも触れたように、キューウェルはある程度の我慢を擁する監督であると個人的には思っている。彼が残した結果だけが考慮されているのならば数多の候補者が応募する監督面接に何度も受かる理由がないし、それでもいろんなところでキャリアを積めているのは彼の中身・構想が評価されているからと考えるのが自然だ。しかし「イングランド4部5部ですら結果を残せなかった監督」という一次情報のみが伝わっていたとしたら最初から彼への視線は不必要に厳しくなるだろうし、経営陣へも短絡的に厳しい目が向けられるだろうし、その状況がマリノスのフットボールにとって良い方向へ働くとは思えない。誰のためにもならないのだ。
だからファンはできる限り理知的であるように努めるべきだと個人的には思うし、その上で物事を判断すべきだ。フットボールはただでさえ見ていると感情が昂ぶるものでもある。だからせめてスタジアムの外でくらいは結論を急いだり不必要に攻撃的な性格を演じたりはしない方がいいと思う(誰かが実際にそうしていた、ということではなく)。
結果というただの数字に惑わされない。フットボールについて考える上で私が最も大事にしていることに関連する出来事だったので、とても興味深いリシンクの機会になった。
今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:将来のマンU監督をかけた対決?KMc did it again!
League One:らしさ全開のポーツマス、首位攻防戦完勝!
League Two:運命が導くクルー相手の就任初戦、デイヴ・アーテルの素晴らしき新たな一歩!
チャンピオンシップ
チャンピオンシップのみ今週もミッドウィーク開催が設定される中、連勝を飾ったのはたったの3チームだけ。それでもその中の2つはトップ2、レコードセッターの2チームだった。
20試合を終えた時点(土曜日)でレスターが49ポイント、イプスウィッチが48ポイント。チャンピオンシップ移行後の同段階でのリーグ勝ち点記録を2チームが更新するという超異常事態に際して、我々が贈ることのできる言葉は限られている。ただひたすらに、両チームとも素晴らしい!
https://twitter.com/SkyBet/status/1734228442156023882
今シーズンの最多得点差勝利、そして今シーズン初の複数失点が立て続けに起きたレスターの1週間。彼らにとって間違いなくここまでで最も圧倒的なパフォーマンスだったと言っていいプリマス戦、そして守備面に不安を残しながらも勝ち切るいつもの形を見せたミルウォール戦、いずれもその中心にはよもやの存在パトソン・ダカがいた。
ヴァーディーもイヘアナチョもいない、そんな状況下でさえ彼の再生を予想した人はかなり少なかったはずだ。何せここまで今シーズンの出場時間は文字通りの「1分」。夏に放出失敗した選手のそれでしかなく、冬が迫る中でこのまま事を荒立てず静かに去っていく定めなのだと誰もが悟っていた。それがマレスカ戦術への適応の意思を見せての2試合2ゴール1アシスト、一フットボーラーとして尊敬を集めるに値する姿勢だ。
しかしそんなレスターと比較しても、今週最大の印象を残したのは2位イプスウィッチに他ならない。それもそのはず、土曜日はマイクル・キャリックとの元マンU副官対決、そして火曜日は洗練の度合いを日に日に増すワトフォード、共に難易度高めのアウェイゲームを戦って見事な連勝を飾ってみせた。
特に土曜の試合は「将来のオールド・トラッフォードのダグアウトの行方を占う」と銘打っても何ら不思議ない名前同士の対戦だったように思う。その中でミドルズブラがヘイデン・ハックニーら主力を複数欠いていたことは留意すべきにしても、あれだけ前線に特徴を持つボロを枠内シュート1本に抑えきったキーラン・マッケンナのセットアップは美しく、完全に起陣されたところを4人が絡んで瞬く間に崩し切った2点目は芸術的ですらあった。さらにワトフォード戦でも極めて珍しい構築のミスから先制を許しながら、最終的には意趣返しかのようなお家芸のハイターンオーバーで仕留めての逆転勝ち。ここまでの完成度を誇るチームはそう見れたものではない。
何が最も凄いかと言えば、このフットボールをほぼL1時代に取った選手たちでやっていることだ。今シーズンの活躍の色眼鏡を外して考えれば、今のイプスウィッチの選手層はチャンピオンシップでは下位グループ、下手をすれば「L1レベル」と形容する人がいてもおかしくないくらいの地味な集団である。もちろん地味なだけで実力者揃いではあるのだが、少なくとも通常レベルの監督であればPO争いすら期待するのは酷なスカッドだと言っていい。その選手たちを2段3段と向上させてチャンピオンシップ記録のポイントリターンを掴む。指揮官としての傑出度は計り知れない。
もう1チームの連勝勢はサンダランドだ。なんとPO圏のウェストブロム、リーズ相手に。なんと監督不在の状況で!暫定監督のマイク・ドッズはキャリア初となるシニアチームの指揮となったが、これ以上望むべくもない結果を掴んでみせた。
その中心にいたのは他でもない愛弟子ジョーブ・ベリンガムだ。間違いなく彼を追ってサンダランドにやってきたジョーブにとって、ドッズの暫定指揮が大きなモチベーションを与えたであろうことは想像に難しくない。形として1トップに入りながらもそこを出発点としてボックストゥボックスをやっているかのような凄まじい運動量で、チームとしてのまとまりを取り戻した戦いぶりの中核を担った。またリーズ戦のゴールシーンではSky実況のギャリー・ウィーヴァーが家族と絡めたコメントをしていたが、兄との比較は一旦置いておくとしても、ノンリーグの伝説的なストライカーだった父マークというルートも想起せずにはいられなかった。
下位グループではストークに監督交代が発生した。もう2ヶ月ほど前から危うい状況だったアレックス・ニールではあったが、一時的な成績良化で得た貯金もすぐさま使い果たす形になってしまい、最終的には両チームがフットボールへの冒涜とも言うべき内容を披露したシェフィールド・ウェンズデイとのホーム戦で90+1の決勝弾を浴びての終焉。いずれも以前とは別チームになっているとはいえ降格圏のQPRとウェンズデイに負け、その間には20位近辺のプリマスにも負けているのだから、何ら不思議のない帰結である。
昨季後半、短い間ではあったものの(もしかすると降格以後初めて)「リーグで一番強いチーム」だった期間が確かにあっただけに、それが今シーズンへの上積みに繋がらなかったことは残念でならない。昨季のそれは強力なローニー頼りでこそあったが、その買い取りがあまりできなかった穴埋めとしてこの夏には17人もの選手を獲得していた。もちろんワウター・バーガーのような目を引く選手もいたが、“Manager“ として補強に口出しを行う権限を持っているはずのニールの趣味とは思えないような国外ルート中心の補強戦略も直感的な理解が難しいものだったことは確かで、結果的にはそれが解任理由に挙げられてしまっているのはなんとも皮肉だ。
そして後任にグレアム・ポッターやらヨン・デール・トマソンやら、常識的に考えればありえないような名前ばかりが並んでいるのにも不安が募る。私には見え透いたPRスタントであるようにしか見えない。どう考えてもジョン・ユースティスに全力を注ぐ以外の選択肢はないと思うのだが、ボードの野心がまたしても間違った方向に向いてしまっていないか心配だ。
それ以外のところを簡潔にキーワードで振り返っておく。
カラム・オヘア、帰ってきた!坂元とのリンクアップも華麗にわずか1試合でフィットネスを戻し、一瞬にしてコヴェントリーのスターマンに返り咲き
QPRの降格圏脱出は間違いなく時間の問題。水曜は1人退場した後も規律を守ったプリマスを褒めるべき試合も、ハル戦勝利を含めての1勝1分はとても立派
ブリストル・シティ戦の1点目、ブラックバーンのアルノール・シグルズソンのファーストタッチに感服
2連続で監督不在ダービーを戦ったスウォンジー、プレイ速度がなさすぎ。強い個性を持つ次の監督が早く必要
バーミンガム、やっと勝った!が、それ以上にカーディフの不出来が気になった水曜日の一戦
League One
見た目の順位こそ違うとはいえ、2位の方が1試合未消化という事実を抜きにしても、この首位攻防戦を首位ポーツマス優位と見ていた人は少なかったはずだ。ここまで披露してきた内容を鑑みればプレシーズンフェイヴァリットのボルトンが名実ともにL1最強を証明するものだと多くの人が信じていたし、実際前半には概ねその筋書きで進行していっているようにも見えた。
だからこのマンデーナイトは、League Oneの今シーズンの展望に多大な変化を生じさせた!
ディオン・チャールズのあの信じられないミスがゲームに大きな影響を及ぼしたことは言うまでもない。あれが決まっていればもしかしたらズルズル行っていた可能性もある。しかし現実としてスコアラインは0-0で推移し、前半終了間際に逆のエンドのネットが揺れた。大事なゴールはいつもセットプレイから、CBのヘディングで!ジャック・スパークスの素晴らしいボールからコナー・ショネシーが決める、今シーズンのポンペイの様式美だ。
さらにそうして迎えた後半、ボルトンに目立った反撃を許さなかったことが何よりも凄まじい。あのボルトンがビハインドで入った後半にシュートたったの4本(ポーツマスは7で上回ってすらいる)、そしてダメ押しの追加点を88分に決めるおまけつき。アドバンテージを取られるファウルを喰らいながらも立ち上がり、その流れの中でフィニッシュに加わる。今のクシニ・イェンギの充実ぶりを象徴するゴールだった。
ビショップ不在の穴を十二分に埋めるイェンギの存在はなんとも心強い。この夏にオーストラリアから移籍金8万ポンド(!)で加わり、秋口から早くもこの国への適応を示し始めた。勝ち方を知るこのポンペイに選手層まで加われば、失速を促す変数はもはや数えるほどしかない。
もう一つ昇格争いに大きな役割を果たしてきそうなのがピーターバラだ。ホームでオックスフォードに3-0の完勝、Overachiveのツケを支払い始めた相手を尻目に、これでリーグではここ14試合でわずか1敗と勝ち点獲得ペースが止まらない。
これは前にも書いたが、この試合でも従前のエースジョンソン・クラーク・ハリスは出場すらしていない。それどころか3ゴールの内訳にはエフロン・メイソン・クラークもクワメ・ポクも入っていない。どうしてもポッシュといえば強烈な個の存在が取りざたされがちだが、こちらも間違いなくチーム力の向上が伺える。前半から最前線リッキー・ジェイド・ジョーンズが持ち前のスピードで相手をかき回し、レフトバックのハリソン・バロウズが遂に適正ポジションを見つけての躍動。何より26歳のジョシュ・ナイトがスタメン最年長という極端に若いチームが毎週高水準のパフォーマンスを継続している点に目を見張る。
冬にはまずクラーク・ハリスが放出され、おそらくはL2から気鋭のストライカーを獲得するはずだ(ジェイク・ヤング?アリ・アル・ハマディ?)。このチームもどんどん不安材料が消えていく好循環の中に身を置いており、自動昇格に挑む存在になるだろう。
現地観戦したバートン 1-2 スティーヴネッジについてはインスタにも詳細に書いたので割愛するが、心情的な部分で言えばぜひともスティーヴネッジに最後まで昇格を争ってほしいと強く思った。一方バートンは納得のディノ・マームリア解任、誰がやっても厳しそうな選手層というわけではないと思うので、次の人事には慎重を期すべきだろう。
他には共に順位表を転がり落ちるエクセターとポート・ヴェイルの崖っぷち対決が後者の手に。ホームで退場者を出しまたしても完封されてしまったエクセターはそれでもギャリー・コールドウェルに見切りを付けず、ファンの苛立ちが頂点に達しつつある。
そして連勝/連敗が大好きな “Lee Streaky Johnson“ は健在だった!フリートウッドのカップ戦も含めたここ4試合は全部アウェイとはいえ0-3、0-4、0-3、0-3。見るに堪えない成績で降格圏に逆戻りしてしまったが、きっとまた連勝のターンも来ると思う。
League Two
他のディヴィジョンは全部大丈夫だったのにL2だけは悪天候の影響で5試合も中止。インフラへの投資金額等も考えれば仕方のないことかもしれないが、なんとも寂しい一覧表になってしまった。
それでもコンテクストの面では申し分ない試合があった。クルーでの5年間の美しき記憶を経て初めて立った他のチームのダグアウト。デイヴ・アーテルのグリムズビー就任初戦での初勝利、その相手は他でもないクルーだった!
ペリー・エンジー、ハリー・ピッカリング、ライアン・ウィントル、チャーリー・カークら錚々たる若手をL2の舞台から育て上げ、それでいて同時に結果も出して予算規模で不利なクラブをL1昇格にまで導いたのだから、本来アーテルはもっと引く手あまたになっていい監督のはずだ。それがクルー解任後1年以上の間を開けてL2下位に戻ってこなければいけなかった理由は、紛れもなく「クルーに長くいすぎてしまった」ことによるブランドイメージの低下にある。
そもそも最終的な低迷は主力大量放出による戦力の低下が主要因だったが、それは頭の悪い契約ばかりを結んでいたボードの責任こそ問われるべきにせよ彼の責任ではない。明らかに厳しい戦いが予想された中でも1年目のL1残留の後アーテルは他クラブからのオファーに耳を貸さなかった。結果的にアーテルとクルーの結びつきはあまりにも確固たるものに見えてしまい、他のクラブもここまで彼に手を出さなかったのだろう。
そのアーテルが自身2クラブ目の指揮となるグリムズビーでの初戦でクルーを破ったのはなんともエポックメイキングだ。まして相手は自動昇格圏まで1ポイント差という状況、自身が率いるのは21位にいたチーム。内容的にもシュート数、ポゼッション共に上回る文句なしの内容で、これ以上ないスタートを切った。
上位勢ではレクサム、バロウ、マンスフィールドが試合延期となった中で、クルーをはじめストックポートやノッツ・カウンティも勝ち点を落とす波乱の週末となった。
その中で上位に割って入らんとばかりの躍動を見せたのがAFCウィンブルドン、強敵スウィンドン相手にまさしく完璧な内容で4-0の衝撃的な勝利を飾った。
あの強力な前線を擁すスウィンドンを完封しているのがまず凄いが、枠内シュート9本を放ってのピッチ全面を支配した内容は圧巻でしかなかった。スウィンドンの序盤での戦術変更にも中盤ダイヤモンドへのシフトで易々と対応しチャンスの芽を摘み取り、最後の仕上げはアリ・アル・ハマディ。彼については冬の移籍について取り上げる記事でじきに触れることになると思うが、もうこのレベルにいていい選手ではなくなってしまった。
ストックポートはアウェイとはいえまず勝ちを見込んでいたはずのモアカム戦でドロー、あの連勝が止まって以降の停滞ぶりは逆の意味で目を引いてしまっており、デイヴ・チャリナーは「戦力が足りない」という他の監督からすれば許されざるコメントを発してしまう始末。次は最下位サットンとのホーム戦、落とせない。
ノッツ・カウンティも心配だ。首の皮一枚踏みとどまるマット・サドラーのウォルソールが奮起したことには敬意を表しつつも、ここまで勝ち点を落としたほとんどの試合が上位相手だった中で、下位チームに対してパフォーマンスを発揮できなかったのはこれがほぼ初めてと言っていい。疲労もあるのだろうか?やや浮足立ちかねない近況が続いており、「普通の勝利」が早く一つ欲しい。