今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:セインツの無敗記録が止まり、新たな行進の群れ現る
League One:近年最大のグレートエスケープへ、チェルトナム再発進
League Two:2試合で13ゴール。13ゴール?
各ディヴィジョン、連勝チームを中心に振り返ります。
チャンピオンシップ
連勝チーム4つの中では最も下位のブリストル・シティから見ていくことにする。何せリーグでは8試合ぶりの勝利となった土曜日のミドルズブラ戦の後、TVゲームだった火曜日の夜、あのサウサンプトンのクラブ記録公式戦25試合無敗を止めてみせたのだから!
そもそもからして土曜日の試合も1-2とはいえ失点は90+1分のもので、実質的にはミドルズブラをほぼ完璧に封じての内容。そして途中FAカップのビッグランがあったとはいえども今年に入ってリーグでは未勝利だったのにもかかわらず、ゴールセレブレーションなどを見る限り非常にチームの雰囲気がよく、「あるいは」という色気も十分に感じられた中でのセインツ戦への臨戦過程だった。
その期待に違わず、いやあるいはそれ以上のビッグパフォーマンスを見せてこそ、「25試合無敗」を打ち破るに相応しいチームの姿だ。前の試合で5得点を奪いその立役者となったジョー・ロスウェルやデイヴィッド・ブルックスもしっかりと先発させてきたセインツに対し、まず前半でシステムで前方への進出を阻止した上で試合を落ち着かせ、後半に相手が焦れたところをカウンターで仕留める。ゲームプランを完璧に遂行しての勝利だったように見える。
やはり前回の移籍市場についての話でも書いたように、1月の大成功がチームとしての好況にも繋がっているのではないだろうか。もちろんセインツ戦ではこの冬の補強選手は1人も先発していないが、次の夏に加わってくる実力者たちを含めチーム内での競争が激化することに疑いの余地はなく、それは必ず各々のパフォーマンス良化にも繋がる。好循環が生まれているように見え、長期的な視点で見ても非常に今後が楽しみになってきた。
そのサウサンプトンの久方ぶりの躓きに乗じて、再び2位が変わった。これで7連勝、その間1失点、今度はリーズの行進が止まらない。
もちろん相手の順位も考慮する必要があるし、特にロザラム戦の1点目は誰がどう見てもハンドなのに構わず喜んでいる(+試合後公式Twitterが恥じらうこともなくこのゴールを単体でアップする)ことには疑問を呈さずにいられないが、それはそれとしてリーズが大幅にギアを上げてきたことは間違いない。
その中でウィリー・ニョントである。記憶の彼方から戻ってきた「当初の予定の」スターマン、これで公式戦ここ4試合で4G1Aの活躍だ。
ダン・ジェイムズの負傷離脱中というタイミングもさることながら、夏の移籍騒動からのゴタゴタでシーズンの半分を実にもったいない形で棒に振ってしまった彼にとって、この復活劇には正直なところ驚きを禁じ得ない。動きを見てもなぜかつて彼が世界最高の若手選手の1人に数えられていたのかがわかるほどには戻っていて、どうしても精神的な弱さが目立っていた夏以降の道のりの中で、出場機会もさほどなかったこのシーズン途中の段階で復調してきたことにも感心する。本来の実力をもってすればリーグ内でも5本の指には入ってくる選手に違いなく、その彼が本調子になっていくのだとすればそれは何にも増しての補強と考えていいはずだ。
他の連勝チームでは当然レスターが枠の中に入ってきて、彼らのフォルスカウンターを説明する上でこれ以上ない例示となるようなワトフォード戦の2点目など、いつも通りの勝ち方で首位を堅持している。
もう1チームはプレストン。この期に及んでやはり彼らはまったくもって掴みどころがなく、これで先週のイプスウィッチ戦から続けて3連勝と再び好調期に突入。このプレスがハマっている時にはどんなチームでも倒せてしまうような力が確かにあるのだが、何分シーズンを通して見た時の波が激しすぎる。
下位に目を移すとまず目を引くのがハダースフィールドの2試合だ。惨敗も予想されたサウサンプトン戦で2度リードを奪っての5-3負けという大健闘、そしてミッドウィークにはサンダランドをホームに迎え1-0の勝利を飾った。それら全てを踏まえての金曜日、アンドレ・ブライテンライターの新監督就任というおまけまでついている。
一部にはこのフォーム転換の立役者となった暫定監督ジョン・ワーシントンの正式監督昇格を望む声も当然出てきていたが、個人的にはその道を辿らなかったのは正解だと思う。暫定監督と正式監督とではもはやまったく別の仕事と言ってもいいほどに求められるもの、そして責任が違ってくる。実際に狂気的なほど勇敢に前からハメに行ったセインツ戦のパフォーマンスは到底サステナブルではないし、また正式監督の立場で採用できるような性質の戦術でもない。加えてここ最近の結果にはソルバ・トーマスのシーズンに一度あるかないかレベルでの絶好調も加味されており、ワーシントンにプロレベルでの指導歴がないことを考えても、これが今季中は最後になるであろう監督人事に相応しい存在ではなかった。
その上でアンドレ・ブライテンライターという選択にも首肯できる部分が多い。ドイツのトップレベルで多くの経験を持っており、2シーズン前にはスイスリーグでリーグタイトルを獲得。さらに第一として、そのプレイ哲学で名を売ってきた監督という点がいい。常々オーナーのケヴィン・ネイグルが言っている「攻撃的なスタイル」をダレン・ムーアの下で実現するのはどう考えても無理があったが、今回の監督人事からはしっかりとした狙いが見て取れる。残留に向けては厳しい戦いも予想されるが、クラブの近年の歴史との親和性も高いドイツ路線で運命の時期へと向かう。
逆に心配なのはストークとミルウォールだ。ストークは土曜日のブラックバーン戦で完全に手負いの相手に開始37分間で3失点、いずれも他人事のような守備でその絶好のタイミングを活かせず、火曜の6ポインターQPR戦には1-0で勝ったがこれはかなりレベルの低い試合だった。この勝利・完封が何かのきっかけにでもなればいいのだが、純粋なパフォーマンスレベルの低さを思えばそう楽観的にはなれない。
ミルウォールも厳しい。日曜のコヴェントリー戦はまたしても先制してからの逆転負け、先制試合数だけならレスターとサウサンプトンに次ぐ数字なのにもかかわらずあまりにもリードを守れず、水曜のイプスウィッチ戦はそれどころではないくらいの完敗だった。攻守両面において未だスタイルの浸透は見られず、選手たちがまだ頭を切り替えられていないように見える。行くも戻るも難しい状況に陥っており、早いうちになんとかしないといけない。
League One
連勝はわずか2チーム、対照的なことに両者のポジションは首位と降格圏。ポーツマスとチェルトナムからL1の項を始めていこう。
700マイル超えの大移動で挑んだアウェイでの最下位カーライル戦の順当勝ちに続いては、ニール・ハリスの下でいやらしいチームになりつつあるケンブリッジ相手の逆転勝ち。いずれも相手の順位を思えばポーツマスにとって何のことはない勝利のようにも思えるが、こういったチームに対して取りこぼさないという基本の欠如で冬以降勝ち点を落としてきていた彼らにとっては、再びあるべき道に戻ってきたという点で喜ばしい。
また前線の層の厚みが増していることにも目が行く。先週の移籍市場のコラムでも述べたように、まさにこの冬の成功を象徴する2試合のスタメンだ。土曜日ベンチスタートだったアブー・カマラが火曜にスタメンで鮮烈なゴールを決め、逆に土曜スタメンだった明らかにレギュラー格の実力を持つカラム・ラングとコルビー・ビショップが火曜はベンチスタート。ここにはアジアカップで不在だったクシニ・イェンギの復帰も大きく、2試合ともで2列目の先発選手を全員途中交代させていることからもその充実ぶりが伺える。
シーズンの最終盤に大一番を続々控える中で今の時期の彼らの過ごし方は理想的だ。下の躓きもあり2位とは再び6ポイント差、もちろん消化試合数の不利はありながらも一応は安泰の地位を築いた。
土曜はケンブリッジに0-1、火曜はブラックプールに2-0、いずれも完封勝利のチェルトナムもまた一時の停滞を振り払う連勝だ。あの歴史的な低調からスタートしたシーズンが今や降格圏脱出まで2ポイント差、今シーズン最大のサプライズパッケージとしての立ち位置はやはり譲れないところがある。
とりわけ火曜日の内容である。ブラックプールといえば直近のリーグ戦6試合で1敗、しかもその間にはFAカップでのノッティンガム・フォレスト相手の大健闘2試合なども挟まっていて、ここ最近の出来でPO争いへの参戦を決定づけたチームでもあった。その相手に対してホームとはいえ許したシュート数はたったの3本、xGバトルでも(1本PKがあったものの)2.32-0.27という大圧勝で、まさしく「力が違った」というレベルの傑出度を見せた。この試合2ゴールのCMFエリオット・ボンズは試合を通してシュート7本というパフォーマンスでもあり、チーム全体から漲る自信が伺い知れる。
トップチームとの対戦も既にほぼ済ませており、彼らがこのまま降格圏でシーズンを終える可能性はもはや相当低くなってきた。まずは次戦、順位では直上のポート・ヴェイルとのホームゲーム。下馬評は言うまでもない。
昇格争いでのもう一つ大きな動きはバーンズリーの4強崩しだ。一気に調子を崩してしまったピーターバラの間隙を突き、今週は1勝1分で4位に浮上。とりわけここ8試合で6勝2分だった絶好調レイトン・オリエントの牙城を崩した土曜日の試合は印象的だった。
同点弾の後に訳のわからないことが起きているが、まずは試合の流れを振り返る。それまでの間にシュート4本を畳みかける速攻を見せ10分にルエル・ソティリウのゴールで先制したのはアウェイのオリエント、そこからはシュート20本以上を浴びせる猛攻でホームのバーンズリーが攻め込み、ようやく88分にアダム・フィリップスのゴールで彼らが追い付いた。
当然沸き立つ選手たちと観客だったが、そこに大きく水を差す事態が起きた。このゴールの後のリスタートを急かすよう審判に強く迫ったルーカ・コネルに2枚目のイエローカードが提示されてしまったのだ。
これはもうルールなので仕方ないし、80分に1枚目を貰ってエキサイトしていたであろうコネルの責任が最も大きいのだが、今まで見てきた中でも最も奇妙な退場のうちの1つに入るシチュエーションだった。一度こういったことが起きればスタジアムの雰囲気は当然異常なものになってしまう。
その中で、しかも当然10人で、再びフィリップスが90+4分に決勝点を掴んだのだから凄まじい。この精神面の強さこそがクラブを団結させるのに相応しく、この日オークウェルに見に来たバーンズリーファンにとっては一生忘れられないような試合になったことだろう。まさにシーズンを左右するような結果になった。
League Two
「連勝チームから」という括りを付けなかったとしても、何がどうあっても今週はこのチームから始めなければならないだろう。2試合で合計13得点(!)、2000年代では初となるEFLでの1試合9得点(!!)、マンスフィールドの歴史的な大爆発である!
xGでは負けていたほどの土曜日のフォレストグリーン戦もそれはそれで強さを見せた内容ではあったが、前半5得点、後半4得点という火曜日の試合が何にも増して圧巻だった。しかも相手があれよあれよの間に土曜にはPO圏内7位に入ったばかり、「守備で勝ってきた」チームと言っていいハロゲイトだったのだから殊更だ。
こういった試合については理屈で片付けようとしても無理があるので、ただただマンスフィールドが出した驚異的な結果を褒めるしかない。一時期プチwobble的な時期も経験した彼らだがここに来て再び3連勝、そして依然としてxGもxGAもリーグベストという傑出ぶりで、タイトル争いの急先鋒として再び名乗りを上げている。
その直下は今週も自動昇格圏最後のスポットに動き。3位に乗り込んできたのはこちらも連勝のクルーで、しかも火曜日に関しては首位ストックポートを破ってのものだった。
同じマンチェスター近郊のチームでもあり白熱した戦いになったミッドウィークの試合、結果だけでなく内容でも圧倒した新生 “Low Magin FC“ の戦いぶりは何とも印象深い。これまで幾度にも渡る後半のカムバックなど派手な展開での勝ち方を繰り返してきたクルーだが、ここに来て明らかにそのイメージを変え始めた。
この試合で終始劣勢に立っていた「首位のホームチーム」ストックポートのシュート数はわずか6本。それ単体でxG 0.97を記録した同点弾と90+3分に放たれたいずれもアイザック・ウラウーフェのシュート2本を除けば他の4本はどれもxG 0.10にも満たない無理やりのアテンプトで、ここまでホームで2敗、16試合で34得点を記録してきたチーム相手の数字であることも思えば真に驚異的だ。シーズンが深まっていく中で次々に新たな属性を身に付け、予想外の昇格への道を突き進む。
ありとあらゆる面でコンテクスト満載の連勝を飾ったのがブラッドフォードだ。まずは土曜日にホームで今季わずか1敗だったレクサムに乗り込み土を付け、ミッドウィークには監督グレアム・アレキサンダーが10月まで指揮していた古巣でもあるPOチームMKドンズに4-0快勝。ちなみにこれまでレクサムが唯一ホームで敗れたのは開幕のMKドンズ戦、つまりアレキサンダーが指揮していたチーム相手だったので、本当にヘッドライナーには事欠かない2試合だった!
とりわけレクサム戦のファッションは劇的だった。シュート17本を許しながらトータルxGは1.07に抑える堅守を見せ、機を伺った結果83分にPKを獲得。しかし大エースアンディ・クックが今シーズン5本目にして3度目のPK失敗を喫し、少なくとも勝利のチャンスは潰えたかに見えた90分。自らのシュートのリバウンドにいち早く詰めたのは他でもないクック!特筆に値する強靭なメンタリティと言うほかにない。
MKドンズといえば、ブラッドフォードに負ける前の土曜日の試合にも触れておこう。観戦してきた試合で、主目的だったスタジアムMKの雰囲気の見学についてはインスタにも書いた通りだ。
対戦相手のアクリントンにはこの結果に不平不満を述べる権利がある。このハイライトだとかなり端折られていて、2つ目のシーンが71分のジャック・ペインのフリーキックになっているが、確かにそれくらい試合の終盤に至るまでMKのペースが上がらなかった。マイク・ウィリアムソンの就任後は毎試合のように20本に迫る、あるいは上回るシュート数を記録していた彼らだが、この試合に関しては41分までシュート数が0本だったことがその窮状を客観的にも物語る。
複数の要因が折り重なっていた。一つにノリッジローニーブラッド・ヒルズを中心としたアクリントンの守備陣が毅然とした対応でMKの前進を効果的に阻止していたこと。もう一つはMKの布陣に見えた構造的な問題で、この試合負傷欠場者が多かった中でも特に今季ブレイク中のSTマックス・ディーンの穴が大きかった。
代役としてダン・ケンプが9番の位置に入っていたが、もちろん彼ほどの実力者であればボールを収めてキャリーするくらいはできるものの、やはり本職ではないのでそこから味方を活かす動きまではできない。加えてヒルズのようなL2屈指のCBが対面にいる中でピッチ上のどこにもボールの預けどころがなく、さらに2人のCMFs(ルイス・ベイトとイーサン・ロブソン)がいずれも左利きでもあったので、全体的に後方からの組み立てにおける選択肢が限られていた。総じてピッチに立つ11人の選手としてのバラエティが欠けており、その尖り切った特性をアクリントンがうまくハメたことで完全に攻撃が行き詰ってしまった。
その点で試合を動かしたのは62分の選手交代で、ケンプに代わってターゲットマンタイプのエリス・ハリソンが入ったことで前線の流動性が生まれ始めたように思う。ワンタッチのプレイなども多用するハリソンのシンプルなプレイが同点のフリーキック獲得にも繋がり、その後の時間の圧倒にも繋がった。とはいえそれでも2得点はあの見事なFKと最後の最後でのディフレクションもあってのロングシュートとあって、実によく守ったアクリントンからすればアンフェアな結果だ。
MKにとってもこういった勝ち方ができるのは昇格候補としては重要なことだと思うが、その後のブラッドフォード相手の惨敗を見ると最近は単純にパフォーマンスが落ちているという見方もできる。ある程度好調/上位チームとの対戦が今後も続く中で立ち直れるだろうか。
最後にこの人に関しても触れておかなければいけない。金曜夜のジリンガム戦でなんともはや今季18アシスト目、ノッツ・カウンティのジョーディ・ジョーンズが成し遂げたのは、2月9日の段階でLeague Twoのシーズンアシスト歴代記録更新の大偉業!
加えて火曜のニューポート戦でも(いずれもマコーリー・ラングスタッフへ)2アシストをマークして数字は大台の20に。ノッツとしても久しぶりの勝利でPO圏7位に巻き返す一戦となったが、そんなことよりとりわけ1点目の暴走っぷりには戦慄すら抱く。こんな選手が4部レベルにいていいわけがない!