今週のEFLアイキャッチ
4つ分のマッチデイを振り返るため、個々の試合ではなく各争いをベースに紹介します。
チャンピオンシップ
イースターウィークエンドを制したのはイプスウィッチ、その次の週末を制したのはレスター、そして全てのチームがチャンスを見送ってしまったミッドウィーク。ここまで従来の水準を遥かに上回るレベルで争われてきたチャンピオンシップの昇格争いは、ここに来て各チームに最大の試練を課そうとしている。
一応の首位にはレスターが戻ってきた。しかもゲームインハンド(サウサンプトン戦)を持っての首位、実質的には3ポイント差があると考えることもできるため、普通の状況であれば彼らに当確を出すことができても何ら不思議ではない。しかし近9試合の成績が3勝1分5敗、その中にはQPRやミルウォールといった下位チーム相手の敗戦も目立つ。そこはかとない違和感が未だに纏わりつく。
変数を挙げればキリがない。ある種今に始まった話ではないが、やはりエンツォ・マレスカが築いたポゼッションのスタンダードは極めて高い水準を誇り、繋ぐテンポにしてもビルドアップのポジショニングにしても相手にしてみれば「どうやったらボールを奪えるのか」という絶望感すら感じさせるレベルのものにはなっている。にもかかわらずそれが決定機の数に結びつかない。決定機を迎えても決め切れない、というのも確かに一つ大きな問題ではあるが、それ以前の慎重さが最大の問題なのではないかと思わずにはいられない。また最近ではこれまでマレスカのシステムに守られてきた守備陣個々の不出来も目立つようになり、加えてファンからの気を急いだプレッシャーも確実に物事を悪化させている。考えうる限り最悪の状況で残り4試合を迎える。
2位イプスウィッチにしてみれば落差のあるここ2週間になってしまった。上位勢唯一の連勝で首位に立ったイースターウィークエンドの後、よりによって宿敵ノリッジに敗れての首位陥落。その後挽回のチャンスを得た水曜日の試合でもホームで勝ち切ることができなかった。
イースターの2試合で彼らが見せた勝ち方はまさしく正反対のものだった。なんとか1-0のスコアを守り抜いたブラックバーン戦、そしてチャンピオンシップ史に残る逆転劇を見せたサウサンプトン戦。飄々と逃げ切ることができて、試合中の修正で右肩上がりにフィニッシュすることもできる。チームとしての幅という意味では、これ以上ないほど心強いものだった。
しかし一方で後の2試合の結果を鑑みれば、「ジェネラルなパフォーマンスレベルの低下」という別の側面にこそ目を向ける必要があったのかもしれない。ここ20年程の歴史が作用したと考えるのはやや神秘的で超然的な考え方だが、ノリッジに対してはパフォーマンス的にも再び完敗といっていい出来。その後のワトフォード戦は相変わらずパターンは作れていたものの、同等にチャンスも作られてどう転んでいてもおかしくない内容だった。この状況での追う立場としての難しさは計り知れず、何らかの助けが降ってくることを願うしかない。
3位リーズにとってみれば輪をかけて悔やむべきここ4試合の内実だ。辛うじてホームでのハル戦に終盤のゴールで勝利したのみで、それ以外は2分1敗。またホーム無敗こそ継続してはいるが、停滞ムードは拭えない。
やはり1つ考慮すべき要素として、イースター前の代表ウィークに起きたウェールズ代表のハートブレイクを無視するわけにはいかない。アンパドゥ、ロドン、ジェイムズ、ロバーツ。これだけの主力選手たちがあの120分間の激闘に身を置き、そして最後に挫折を味わった。肉体的な疲労も去ることながら、チームのド中枢に非常に大きな精神的な疲れがのしかかったことは彼らにとって不運と評する他にない。
その後の内容には印象的なインテンシティレベルの低下、シャープネスの欠如が伺える。ここまで史上類に見るレベルでトランジションを武器としてきたチームが、その鋭さを失っている。あるいはここには、ダニエル・ファルケが生来好むスモールスカッドの弱点も関係してきているかもしれない。周囲の状況を思えば必勝を期したはずの火曜日サンダランド戦、90分間を通して生み出した枠内シュートはわずか1本。状況は深刻だ。
レスター、イプスウィッチ、リーズ。ともすれば、ここまでの激しい争いが知らず知らずのうちに彼らの身体と心を蝕んできていたのかもしれない。どのチームもそれぞれの理由で息切れが顕著な終盤戦、こうなると4位サウサンプトンさえ、連勝を重ねれば大まくりの可能性を見くびることができない。先に一歩抜け出すのはどのチームだろうか。
PO争いも各チームの停滞が続く。水曜日にロザラムに勝つまで3連続ドローを喫していたのが5位ウェストブロム。なんともコルベランのチームらしくない「勝ち点を落とす」展開とパフォーマンスが続いた中で、こちらにも僅差のゲームを戦いすぎてきたが故の息切れの兆候が見える。もっとも勝ち点差を思えばPO進出はもうほぼ間違いなく、最終目標を思えば、少し手綱を緩めながらのフィニッシュとすべきだろう。
1試合消化の多い6位ノリッジと7位コヴェントリーとの差は5ポイント。イプスウィッチを倒したことであらゆる意味でPO進出濃厚と目されたノリッジへの楽観論は、早々に2点を奪った後のシェフィールド・ウェンズデイ戦の酷い戦いぶりで再びかき消されてしまった。その前のレスター戦の負け方も先制後不必要に引いてしまっての自爆で、依然として監督がこのチームのベストを引き出す術を知らないのではないかという疑惑は根強い。
追う立場のコヴェントリーは先週のリーズ戦でクラブ史上最多の観客数を集めての見事な勝利。好調を持続させるハジ・ライトとエリス・シムズの前線でのオールラウンドな貢献も心強い。一方で来週にはクラブ140年の歴史の中でも5本の指には入るであろう超大一番のFAカップ準決勝が控え、リソースの分配に気を配る必要がある。
戦いぶりを見るとそう強気にはなれないが、もちろん8位プレストンもコヴェントリーと同試合数同ポイント。その下にはようやく強さが出始めたここ8試合無敗のミドルズブラ、そして前線のコマ不足で失速中のハルがおり、このあたりまでは無視できない存在と言っていい。
5試合を残し、降格枠の1つ目が埋まった。当然実質的には1月ごろから既に見え透いていたことだが、ロザラムの長く苦しいシーズンがようやく終わりに近付こうとしている。昇格1年目の昨季でさえポール・ワーンの下でのスーパースタートに下駄を履いての逃げ切り、そこから夏には移籍金のクラブレコードを2度更新するなどベストは尽くしたものの、それが結果に結びつくことはついぞなかった。これまで幾度となく即復帰を果たしてきた過去の降格時とは違い、チームの地盤自体が揺らいだ中での3部行き。リアム・リチャードソンのディヴィジョン実績は胸を張れる要素だとしても、そう物事が簡単に行くようには思われない。
そんなロザラムに引導を渡したのが20位プリマスだった。毒々しい雰囲気がクラブに充満してしまった悪夢のイアン・フォスター時代に勇気ある別れを告げ、残り6試合で代打登場となったのはフォスターを招いた張本人のDoFニール・デュースニップ。自ら責任を取ると言わんばかりに、就任後の2試合で4ポイントを取る上々の出だしとなった。ともすればその結果以上に、フォスターの下で失われてしまったクラブの一体感、そして元来彼らが強みとしてきたショットヘビーな大胆な姿勢がすぐさま戻ってきたことが何よりものポジティヴかもしれない。フォスター就任以降冷遇を囲ったダン・スカーらの活躍がチームのムードも押し上げる。
そのプリマスより上にいるチームから。水曜にストークを破ったスウォンジーまではもう大丈夫と見ていいだろう。ウェンズデイとプリマス相手に立て続けに勝ち点を落としてしまったQPRだが、パフォーマンス的な落ち込みはまったくなく、あと1つ勝つことがそう難しいようには感じられない。ロザラムとハダースフィールドに連敗しレスターに勝つミルウォール、つまりは割り切って戦うのがとても上手ということだろう。残り4試合にレスターのようなチームはいないが、ここも欲をかかなければ勝ち点を上積みできるはずだ。
ブラックバーンは依然として心配なチームの1つだ。イースターの2試合では代表ウィーク期間中のジョン・ユースティスのトレーニングの跡が伺え、攻守両面での向上を示すことができたものの、その後はサウサンプトン相手の引き分けはいいにしてもブリストル・シティにアウェイとはいえ5-0の大敗。また失点のマナーが非常に悪く、せっかく見え始めた好況に完全に水を差す結果になってしまった。その下にいるのがストーク、こちらは攻撃面で一気に道が開き始め、この4試合でわずか1敗。スウォンジーに完敗したのはもちろんダメージだが、これは継続的な雨でかなり悪い状態にあったピッチコンディションの問題が作用したように見えた。あと1つ2つは勝てる状態と残りの相手と見ていい。
従って基本的には、ブラックバーンがここに加わる可能性は比較的あるにしても、残り2つの降格枠をバーミンガム、シェフィールド・ウェンズデイ、ハダースフィールドのうち2つが埋める公算が高くなってきた。
この3チームはいずれもここ4試合で1勝、しかしそのファッションを考えれば、23位に転落したバーミンガムに対する悲観論を述べないわけにはいかない。ギャリー・ラウエットの下で再スタートを切ったが、ピッチ上のあらゆる部分に問題が山積している。とりわけファイナルサードでの状況判断の悪さ、積極性のなさは到底残留争いをしているチームのそれではなく、しかもここ最近ずっとそれが続いていることも見過ごせない。「奇跡が必要」な領域に入ってきた。
シェフィールド・ウェンズデイはポジティヴなここ2試合だ。内容的には何も見るものはなかったもののQPRに勝ち、その後はノリッジ相手に0-2から追いついてのドローゲーム。明らかに勤続疲労は伺えるものの、この3チームの中では試合中の修正力・あるいは精神力といった面で最も優れているように見える。
ハダースフィールドはミルウォールに90+4のゴールで勝った先週が印象的な試合だったが、称賛に値する内容からは長らく遠ざかっている。とりわけミッドウィークのプレストン戦の逆転負けが象徴するように、90分間を通してパフォーマンスを持続させる能力が低い。最終節にイプスウィッチが待つ中で、それまでの3試合の間になんとか最適解を見つけ出す必要がある。
League One
ゲームインハンドを残して2位ダービーと7ポイント差。消化数が同じ3位ボルトンとは9ポイント差。残り4試合、首位ポーツマスが昇格に王手をかけた。
ベストの出来には程遠かった2週間前の首位攻防、ダービーとの一戦。2回に渡ってリードを許した厳しい展開の中でも、後半には続々と攻撃的な選手を投入しボールを押し込んだ上で、その交代選手の1人オーウェン・モクソンが見事な同点ゴールを突き刺した。決して攻撃力に強みを持つチームではない中で、試合をコントロールするだけでなく修正力を見せて劣勢を跳ね返す力も持っている。ここに今季わずか4敗という数字の理由がある。次戦はボルトンとのアウェイ戦、従って勝てば昇格はほぼ決まりだ。
争点となるのは2位争いの方だろう。イースター後の3試合でダービーは1勝2分、そのダービーに代表ウィーク前敗れたボルトンがゲームインハンド残しで2ポイント差まで迫ってきた。ミッドウィークのウィコム戦ではカップファイナルを戦ったばかりの相手に対してアウェイとはいえ枠内シュート0本、ダービーの攻撃陣に不安が残る一方で、ボルトンは先週土曜にレディング相手に5得点。その後課題のアウェイでもブリストル・ローヴァーズに完勝し、必要な時期に状態を上げてくることができた。ただ残り4試合でポーツマスとピーターバラの双方が対戦相手に残っている。
そのピーターバラも依然として無視できない存在だ。何せ今季最初のEFLでのタイトル獲得チームとなった先週日曜日、その試合はインスタにも書いた通りやや期待外れの内容ではあったが、それを補って余りあるハリソン・バロウズのヒロイックがチームの雰囲気を高揚させた。その直前に最下位カーライルに負けているのがなんとも玉に瑕だが、2試合消化の多い2位ダービーとは6ポイント差、従ってまだまだ自動昇格を射程圏内に捉えられる位置にいる。
その下には5位バーンズリーがいてここは順位が動くとは考えづらい。問題はPO争い、現在の6位はようやくデズ・バッキンガムの歯車が噛み合い始めたオックスフォードで、ここ4試合ではしっかりと下位チームに取りこぼさず3勝1分。その下にいるのが猛然と追い込んできた7位リンカーンだが、一時の得点を量産し守備も盤石だった頃に比べるとそのパフォーマンスレベルはやや落ちつつある。消化試合数も考えるとほぼこの2チームの一騎打ちだろう。
なんともポエティックなアリ・コイーキの後半追加タイム独走によって、L1でも1つ目の降格チームが決まった。こちらもロザラム同様に冬から最下位を独走、worst kept secretとなっていたカーライルの降格だが、その中でも注目すべきディテールは多い。とりわけ昨年秋にクラブ買収を完了したアメリカ資本の新オーナーは、経営に対する確かな野心を表明する一方で、監督ポール・シンプソンに低迷の責任を負わせることをついぞしなかった。
シンプソンとカーライルとの関係を考えればそれは頷ける判断だ。地元出身、現役生活最後の3年間を兼任監督としてカーライルで過ごし、その後イングランドU20での実績も積んだ後2シーズン前にL2で最下位にいたチームに復帰。そのシーズンを驚異的な追い込みで残留に導くと、昨シーズンにはダークホースとしての評価を正当化してのPO経由昇格。まさにこのクラブにとってのレジェンド中のレジェンドと言うべき存在である。
もちろん彼を信じ抜いた判断が今季の残留だけを目的とした場合にベストだったとは思わない。しかしより中長期的な目線を持てば、主にファンとの信頼関係の構築という意味で、オーナーグループはまったくもって正しい判断をしたように思う。それは多くの外資系オーナーに付きまとうステレオタイプの払拭に大いに役立ち、カーライルにより有益な安定をもたらすはずだ。降格決定後のミッドウィークにはチェルトナムに勝利し、早くも明るい再生への一歩を踏み出した。
そのカーライルに続いては、23位のフリートウッドも直近のポイントリターンを思えば厳しいと言わざるを得ない状況だ。その上にいるチェルトナム、ポート・ヴェイル、バートンは2ポイント圏内。いずれも直近で明るい兆しは見えておらず、とりわけ21位ギリギリにいるバートンはあまりにも攻撃に見るべきところがなく現状のリーグ内最弱チームかもしれない。この3チームが突然結果を出し始めた場合にはその上にいるケンブリッジとシュルーズベリーにお鉢が回ってくるが、その可能性は極めて低いと見るべきだ。
League Two
紆余曲折を経ての冬からの戦いぶりではあったが、ここに来て再び首位として頭一つ抜け出たのは大本命ストックポートだった。昇格決定まではあと1ポイント、次節で決まる可能性が高い。
イースターからの4試合で4連勝、その内3つは現ボトム3との対戦という日程的なアドバンテージこそあったものの、とりわけサットンなどはビーチにいるミッドテーブルのチームよりもよっぽど手強い相手に違いなく、そこに対してしっかりと勝ち切ったことには一定の評価が贈られるべきだ。今後の日程を見ても最終節のレクサムまで目標のない中位勢との対戦が続き、最終節が大一番になる可能性は限りなく低いだろう。
2位以下の様相を一変させたのがこのグッドフライデーの一戦だった。上位陣相手に殻を破り切れない戦いを続けてきたレクサムの今シーズン現トップ5相手の初勝利(!)、それがこの絶好のタイミングで、絶好の相手に対して掴んだ大きな3ポイント。逆にマンスフィールドにとってはあまりにも痛恨の結果になってしまった。
マンスフィールドは延期を挟んでその次もクロウリーにホームで1-4の完敗。ここ最近ピッチコンディション不良での試合延期が相次いでおり、それによるスタイルへの影響や単純な調整の難しさなど様々な要素が絡んでいることには間違いないが、さらにもう1つには長年期待を集めながらこのリーグにスタックしてきたことによる “get over the line“ への心理的重圧を考えずにはいられない。火曜日のフォレストグリーン戦で4試合ぶりの勝利、しかしこの試合は私も見に行ったが、相手がFGRでなければ負けていても何らおかしくない後半の落ち込みぶりではあった。次は最後の大一番となるMKとの一戦を迎える。
そのMKドンズは自動昇格圏まで2ポイント差、しかしマンスフィールドよりは1試合消化が多い。少なくともあの事故としか言いようのないストックポート戦の惨敗を引きずっていないことは好材料で、マンスフィールドとの直接対決に全てをかける。
その下にクルーとバロウがいてここまではPO圏内当確。最後の1枠を争うのは現在7位のクロウリーからAFCウィンブルドン、ウォルソール、ドンカスターまでの4チームだろう。ここに10位ドンカスターの名前が入ってきたのは真に驚異的なアチーヴメントだ。昇格争いどころか残留争いのトークに顔を出していたシーズンの大半、しかし2月初頭からのここ14試合で10勝3分1敗、とりわけ直近ではクルーやレクサムといったチームとの対戦も含めての7連勝という凄まじいランを重ね、なんとPO圏と4ポイント差にまで迫ってきた。ここ7試合で4G1Aのハキーブ・アデラクンをはじめ選手個々人の好調ぶりも目立ち、残す対戦相手もコルチェスターを除いて目標のないチームばかりだ。
残留争いは依然として基本的には4チームの争い。その中で21位グリムズビーはおそらくあと1つ勝てば安全圏かという状況に入り、その下にいる3チームにより焦点が集まる。
驚異の4連勝で一気に最下位からの降格圏脱出を果たした22位サットンだが、1ポイント下にいるコルチェスターに比べて2試合消化が多い。残り3試合で勝ち続けるしかないが、来週にクロウリー、そして最終節にMKドンズが待つ日程から強気になることはできない。また別の観点として、コルチェスターは直近2試合で連敗中とはいえ、その相手はレクサムとストックポート。それ以前には勝ちこそ少ないものの堅実に勝ち点を拾っていく能力を示しており、この2試合のゲームインハンドが無駄になる可能性を高く見積もることは難しいだろう。
そしてより確実な降格候補に見えるのが最下位フォレストグリーンだ。少しマンスフィールドのところで書いたが、とにかく現状の戦いぶりが破綻している。選手たちの間でビジョンが共有されているようにはまったく見えず、ここ5試合の間だけですら枠内シュートを記録できなかったのがなんと3試合もあった。対戦相手を考えてもさすがにもう厳しいと言わざるを得ない。