Twitterに書いた内容とも重複するが、Substackにもベリーの観戦記を少し綴っておきたい。
https://twitter.com/Japanesethe72/status/1700914028812390739
ここはギグ・レーン最寄りのスタジアムパブ “Staff Of Life“. ベリーの一連の出来事を伝えるニュース記事でも度々出てきた場所で、行く前から名前を知っていた。
一族経営と思わしきバーの中の風景で、ビールを買えば素敵な笑顔とともに “Enjoy!“ と言ってくれる、そんな良い意味でどこにでもあるパブである。
試合の1時間半ほど前。どうにかこうにかバスでここまでたどり着き、ビールを買った後とにかく誰かに話を聞きたいと思い、たまたま1人でいたおじさんに声を掛けた。それが “Jimmy Sirrel's Lovechild” というウェブサイトを運営しているという50代の男性だった。
聞けばおじさんはベリーのファンではなく、ブラックバーンのファンなのだという。ただ前述のウェブサイトを見てもらえればわかるように、一番好きなのはフットボールそのもの。何やらストレスフルな仕事をしているらしく、その分週末のフットボール観戦が至高の楽しみになっているらしい。
私も(別にストレスは抱えてないけど)似たような経緯でベリーまで来ていたので、それはもうとてもとても話が弾んだ。ベリーのこと、フットボール界全体のこと、カルチャーのこと…。この人と会えただけでも遥々ベリーにまで行った甲斐があったというものだ。
その中でも一つ、とても印象に残った言葉がある。
今そこを見てもらってもわかるように、子どもがいて、青年がいて、おじいさんがいるでしょ。僕はこれがフットボールの持つ意味だと思う。4,5歳の子がいて、あそこで酔っ払ってる人はまあ70代くらいだろう。その人たちがみんな同じ話題で話している。つまり3世代を繋いでいる。
フットボールクラブが無くなるということは、そういった繋がりが奪われるということなんだと思うよ。
私は今27歳で、個人的な嗜好として上にも下にも話しかけられるような趣味をたまたま持っている。だから誰と出会ってもあまり話のネタには困らない方だ。
しかしこれはおそらく少数派だとも思う。「どこへ行ってもソシャゲ」という子どもたちも少なくない(これはイギリスでもそうらしい)中で、また「老害」という言葉も完全に市民権を得た中で、「若い人/目上の人と何を喋っていいかわからない」という声もとてもよく聞く。そうして、世代を超えて繋がる機会はこの地球上からどんどん姿を消していっている。
やはりここに、フットボールの “Most important thing of unimportant things“ たる所以があるのだと思う。社会を繋ぐアイテムとしての役割。「スポーツ」だからこそ果たせる社会システム上の役割。その本分を見失ってはいけない。
ギグ・レーンはとにかく子どもが多いスタジアムだった。数年経てばこの状況も変わるかもしれないが、この先の生涯に渡って、彼らがこの景色を忘れることもないだろう。
また試合後には、なんと2人の「あるクラブ」のサポーターから連絡が来て、「今ベリーにいるなら飲まない?」と誘われた。1人は試合に来ていて、もう1人は来てはいなかったようだが、いずれもSNSを通じて私の存在を知っていたらしい。今は仕事などの事情でマンチェスター近郊に住んでいて、いつか会いたいなと思ってくれていたらしく、私のツイートを見てすぐに連絡をくれた。
知り合いなんているはずのないベリーの街で、日付をまたぐまで遊べた。これもフットボール、これもコミュニティの持つ力。そのおかげで、人生がより豊かなものになっていく。
ぜひ今後マンチェスターまで行かれる予定がある方は、ベリーの街にも足を延ばしてみてほしい。
そこには(マンチェスターから)往復10ポンドにも満たない交通費を補って余りある、フットボールの原体験が待っている。
今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップは代表ウィークでお休み
League One:たったの2試合、事実上のブレイク?
League Two:量も質もゴールラッシュ!
League One
代表ウィークとあって通常であれば注目の集まるLeague Oneだが、今週行われたのはなんとたったの2試合。代表に2人以上招集された場合には延期要請ができるため、10試合がこれによって流れたことになる。
しかも試合を行った4チームのうち、3チームはL2からの昇格組(残り1チームのエクセターも昇格2年目)。それだけリーグ全体の競争力が上がっている、と結論付けるのはやや単純かもしれないが、いずれにしても近く代表ウィークの中断対象がL1まで広がったとしても何ら不思議ではない。
そんな中でもこのリーグの面目躍如と言うべきか、たった2試合の中でも首位交代劇が発生した。
昨季L2王者のレイトン・オリエントがしっかりと試合を支配した末に掴んだ逆転勝利は、首位エクセターとのアウェイゲーム。前半12本後半7本、合計19本のシュートを放ち、試合を通して5本しか打てなかった相手にディミトリ・ミッチェルのスーパーゴール以外の見せ場を作らせなかった。
アウェイでの強さは昨季タイトル奪取の決め手にもなったオリエントの武器の一つだったが、仕事をするべき人がそれを果たしての勝利、しかもそれが首位相手だったのだから、今季初アウェイ勝利の意味も格別だ。とりわけ複数年のキャリア停滞を経て再びL1でのエース格を託されたジョー・ピゴットにとっては大きな同点弾となった。
一方のエクセターは先週も書いた通り、そもそもここまでの快進撃自体があまりサステナブルなものとも思えなかったため、特に驚くほどの結果と内容ではないように思う。当然だがここからズルズル行かないことが何よりも重要だ。
代わって首位に浮上したのがスティーヴネッジだが、こちらも90分に追いつかれる締まらない結果ではあった。相手のカーライルがアウェイ初ポイントだったことも思えば少し不満すら残るものの、とはいえ7試合の歩みを正当に示した順位であることに変わりはない。フィジカルなスタイル故に昨季同様のバテが心配されるくらいで、ここまでのシーズンは120点をつけていい出来だ。
League Two
とにかくゴールが見たいという人はLeague Twoを見るべきだ。今シーズンL2の1試合平均得点数は2.95、昨シーズン同時期の2.34に比べればその違いは明らかで、既にいくつかの異様なスコアラインを思い出すこともできる。
5-5、6-0、そして今週の5-3。そして驚くべきことに、そのすべてにスウィンドン・タウンが関わっている!
5-3なのにDisallowed goalまで4つ。つまりこの日カウンティ・グラウンドに訪れた観客は、ゴールが揺れる瞬間を12回も見たことになる!
ここまでの6試合で20失点11失点、合計31ゴールが飛び交っている(その内1試合はゴールレスドローだったのだが…)のだから、今シーズンのスウィンドンはまさに稀代のエンターテイナーと言っていい。それでいて3勝3分の無敗、1試合未消化ながら首位とは3ポイント差の5位。しっかりと成績も伴っているのがまた素晴らしい。
この日も2ゴールのジェイク・ヤングは得点王ランク独走の今季9点目。ちなみに彼のローン元のブラッドフォードは今季7試合で5得点。逃した、というか勝手に逃がした魚は本当に大きかった。
彼だけでなく、執念のアシストを見せたチャーリー・オースティンやL2ベストアタッカー論争には欠かせない存在となったダン・ケンプも含め、もしかすると今EFLで一番見ていて楽しいチームかもしれない。ファンがなんともうらやましい限りだ。
そして今週はこの試合、というかこのマンスフィールドの3点目に触れないわけにはいかないだろう。
動画を見てくださった中には、まず「1点目の間違いでは?」と思われた方もいるだろう。確かに手前にいるジョージ・マリス(背番号10)のリアクションが雄弁に物語るように、このデイヴィス・キーラー・ダンのオーバーヘッドも凄かった。普通であればゴールオブザウィークだ。しかしどうかそこで再生を止めずに、最後まで見てもらいたい。
時間がない?なら心配はいらない。これを見てほしい!
その頭髪の見事な脱色っぷりをも凌駕するアーロン・ルイスのとんでもない一撃である。状況、シュートの音、軌道。先週アンドレ・ドゼルのゴールでも似たようなことを書いたが、正直に言おう、1週間でその衝撃は塗り替えられた。強く、強く、プスカシュ賞に推薦したい。
MKドンズとノッツ・カウンティの2位-1位対決がドローに終わり、再び首位にはジリンガムが戻ってきた。4連続1-0勝ちからの連敗、そしてまたしても1-0勝ち。結果的に首位なのに5得点5失点、得失点は0となっている。
しかしリーグ随一のUnderperformerたるハロゲイト相手に、この日も決して褒められた内容ではなかった。何せ50分から92分まで両チームともにシュート0本。その後スクランブルもスクランブルなゴールマウススクランブルでシュート4本を荒稼ぎし、その最後の1本が決勝点となり勝利をくすねたものの、今季ここまでのOPxG 4.00はリーグ21位。再びの首位交代までそう待つ必要があるようには思えない。
逆に印象的な勝利を重ねるのがクルーだ。フォレストグリーンとのアウェイ戦、なんとまたしても先制を許しながら(今季7試合で6回目!)、その後4点を奪っての逆転勝利。これで今シーズンは後半だけの成績なら15得点2失点の「全勝」となり、未だかつてないSecond Half FCぶりを見せつけている。もちろん目を向けるべきは攻撃面の好調ぶりの方で、プレイオフ圏浮上も妥当な対価と言えよう。
騒がしい2週間ほどを経て好調ニューポートを4-1で破ったクロウリー、同じく好調のAFCウィンブルドンに競り勝ったストックポート、そして大エースのポール・マリンが遂に戻ってきたレクサムあたりも今週のビッグウィナーに数えられる存在だ。
そしてイアン・ドウズの解任に至ったトランメアを下したのはコルチェスター。ここまでの戦いぶりに期待値との剥離が見られるチーム同士だったが、内容には2-0どころではない差があった。特に先制点を決めたジョー・テイラー(5月のチャンピオンシップPO決勝の延長でオフサイドゴールを決めたルートンの選手、と言った方がわかりやすいだろう)は俊敏性・技術ともにL2レベルを優に超えるものを持っていそうで、ゴール量産のシーズンとなるかもしれない。
そして今週の反省枠は、こんなに面白い試合ばかりの代表ウィークだったのにブラッドフォードとグリムズビーの凡庸な1-1ドローを放送カードに選んだSky一択だ!