今週はやけに気候がいい。なんと日中の最高気温が連日30度近くに達しているほどで、それでいて湿度は当然高くないので、日本で言うと春か秋かという感じ。とにかく最高な天気だ。
7月からこちらに来て2ヶ月近くになるが、もう断トツで今が一番過ごしやすい。そして天気のことを話していると、必ずと言っていいほど誰もが「学校が始まる季節だからね~」と言う。素敵なお国柄である。
そんなバーミンガム生活だが、火曜日に驚きのニュースが入ってきた。バーミンガム市議会が破産したというのだ。
https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-birmingham-66715441
もちろん日本でも夕張市など自治体が破産したというケースはある。しかしバーミンガムといえば、押しも押されぬイングランドのセカンドシティである。日本で言えば大阪だ。それが破産?
私は都市経済の専門家ではないので訳知り顔で講釈を垂れることはできないが、バーミンガム市議会はここ近年数多くの問題を抱えていたらしい。男女同一賃金請求による7億ポンド以上の未払い分が積み残されていたり、新しく導入したオラクルのクラウドシステムの費用が想定の5倍近くになりそうだったり、傍から見ても散々な状況だ。
また市議会第一党は労働党であるため、一部には近年保守党政権が推し進める地方自治体への資金提供の大幅な削減に原因を求める声もあるが、これは当然他の自治体も同じなので論拠としては弱い。ひとえに、長年に渡る市の運営の失敗と見るほかにない。
今回の破産にあたっては「必要最低限のサービス以外が全て停止する」ということなので、例えばゴミ収集が来なくなるとか、そういった致命的な事態が起こるわけではない。ただ新しい計画等は全てストップしてしまうし、そもそも「必要最低限」の定義は明示されていない。
思えばこの街には絶賛放置中と見られる工事中の風景が多数存在している。果たしてこれらが再開する日はいつになるのだろうか。
さて、今週は久しぶりに試合を見に行った時の話だ。ただ依然として、試合そのものの話ではない。
舞台は「駐車場」である。
最近は「あるクラブ」(こう書くルールにしていたのを忘れかけていた)の試合を見に行きたいという相談を貰う機会が増えた。実際に先々週のプリマス戦には何人かの日本人の方が来ていたし、私はお会いできなかったがリーグカップのカーディフ戦でも「日本の人が来てたよ」と他のサポーターから教えてもらった。
実は先日、このSubstackでももはやお馴染みのクラブスタッフDavoからも「スタジアム内に日本語を掲示したいからアドバイスが欲しい」という相談が来た。これは当然クラブとして日本からの関心が高まっていることを認識している証拠だし、そこに対するアプローチを強化していく意識の表れだ。つまり、「セント・アンドリュースに来るなら今がチャンス!」なのである。(もちろんホーム側の応援で来てくださいね)
そこで今後さらに増えるであろう日本からの観戦者の方向けに、1つスタジアムのおすすめスポットをご紹介したい。
駅からの行き方だったりスタジアムの席からの眺めであったりはまあちょっと調べればわかることだが、「試合の前後に駐車場に行けば比較的簡単に選手と触れ合える」という情報はあまり知られていないように思う。
選手駐車場はメインスタンドの裏にある。メインと言っても、スタジアムエントランスがある方(Coventry Road側)はKOPスタンドといういわば裏側のスタンドなので、駐車場に行くにはTilton Road(クラブショップなどがある)の方からぐるっと一周していく必要があるのだが…。
ここで待っていると、試合のだいたい2時間前くらいに選手(一部は別の駐車場をアサインされているらしく全員ではないが)が続々と入ってきて、試合後は3,40分ほどで出てくる。ファミリースタンドの真裏ということもあり多くの子どもたちが待ち構えているが、試合前は比較的人もまばらで選手ともコミュニケーションを取りやすい。
選手ももちろんそこにいる全員にファンサービスしてくれるわけではない。しかし逆にまったく何もなしで立ち去ってしまうという人もいない。誰かしらには必ずサインをしていくし、中には少し話し込んでいく選手もいる。ある程度クラブから義務付けられている部分もあるのかもしれない。
実際私も過去何度か行っていて、まず選手を待っている時の雰囲気自体がとてもフレンドリーで大好きな場所だ。もちろん三好ともここで何度か話しているし、それ以外の選手ともコミュニケーションを取ったことがある。
この前の土曜日は初めて試合前に行ってみたら(インスタ参照)、スタジアムに入っていくギャリー・ガードナーに向こうから声をかけられるという信じられない出来事も発生した!これもあの日駐車場にいなければ、ギャリーが私のことを認知しているということを知る術はなかった。
ただ当然ながら一番に優先されるべきは子どもたちだと思うので、日本から来た我々が出しゃばってガツガツ行くのも違うとは思う。なのでもし行かれる方がいたら、まずはそのローカルそのものな雰囲気を楽しみつつ、三好などが出てきたらよきタイミングでコミュニケーションを図ってみよう。
こういった生の触れ合いこそが現地でフットボールを見る醍醐味だ。おそらく他のスタジアムにもこういう場所はあるはずなので、ぜひイングランドに来られる際は探してみてほしい。
今週のEFLアイキャッチ
全3ディヴィジョンで首位チームが敗戦、ニューリーダーズ誕生!
チャンピオンシップ:スタートダッシュのお手本?プレストン首位浮上!
League One:スタートダッシュのお手本?エクセター首位浮上!
League Two:開幕戦は記憶の彼方、首位ノッツ・カウンティとエースの復活
チャンピオンシップ
ストーク 0-2 プレストンから出発する。何せリーグで2チームだけとなった無敗の一角にして、4勝1分の13ポイント!プレストンがシーズン初の代表ウィークを首位で迎えることになった。
このチームは決して相手を圧倒して勝ち続けているわけではない。この試合もシュート数自体は7本しかなく、もちろん1点はPKだった。
しかしその中で際立っているのが①相手に許すシュート数の少なさ、②異様なまでの決定力、という2つのファクターだ。
今シーズンここまでプレストンが許したシュート数は53本で、これを下回っているのはワトフォード(50)とバーミンガム(52)の2チームしかない。さらに枠内シュートに至っては5試合で10本しか打たれておらず、当然リーグで最も少ない数字だ。ここまでフルタイム出場のリアム・リンジー、ジョーダン・ストーリーのCB2人を中心として、守備陣の奮闘ぶりが現れている。
また攻撃の効率の良さも目立つ。ここまで打ったシュートの数44本はリーグワースト3位タイ(2位とも1本差)ながら、Goals per shotとGoals per shot on targetはそれぞれ3位と2位(ちなみにどちらも1位はロザラム)。ちなみにこの間xGはリーグワースト6位なので、「守備が凄く良くて決定力が上振れしている」のが今のプレストンと言えるだろう。
もちろんこの効率的な点の入れ方が長続きするとは思えないので、いつかは揺り返しが来ることも想定しないといけない。しかし守備に関してはかなりサステナブルな数字を残しているし、成績に大きく響くような崩れ方をするイメージも湧かない。この序盤の成功でライアン・ロウに対する期待値が上がり、彼が自身の成功の犠牲者となってしまわないかどうかが心配なくらいで、「こうすれば良いスタートダッシュを切れる」というお手本のような立ち上がりになった。
今週のパフォーマンスオブザウィークはなんといってもサンダランドだろう。先週「危険水域に入っている」と書いたサウサンプトンが相手だったとはいえ、この5ゴールのインパクトを過小評価することはできない。
例によって今季も早々にストライカーが不在となっての戦いを強いられているが、そろそろこのトニー・モウブレイが仕掛ける前線のシステムには固有名称が必要かもしれない。ジョーブ・ベリンガムやブラッドリー・ダックといった攻撃的MF陣に加え、挙句の果てには完全にBtoB型のダン・ニールまでもが時折「一番前にいる人」となり、便宜上のフォルス9の役割を担う。もっとも彼らに9番に成りすます意識があるようにも見えないので、まさしく一番前にいる人でしかないのだ。
そして触れないわけにはいかないのが5点目、というよりそのクリス・リグのゴールをアシストする見事なクロスを送る、「前」のユイソン・ベネットのルーレット3連発(3個目さえなければ「素晴らしい」という枕詞を付けられた…)である。
https://twitter.com/BenCra1g/status/1697966250637308143
こんなものは言ってしまえば若気の至りとしか言いようのないプレイだが、こんなに楽しい過ちなら毎週でだって見ていたい(そもそもその後のクロスは凄く良かった)。何よりこういったプレイから窺い知ることができるのは、今のサンダランドに漂う最も良い意味で自由な雰囲気だ。昨年のこの時期と比較すればチーム内では厳しい立場に追いやられてしまった選手が、自身の存在と能力をアピールすべく狂気のルーレットを連発する。ファンとしてこれ以上なく歓迎すべきことだと思う。
他目立つところではレスターの連勝街道をハルがストップ。結果自体は目を引くものだが、内容を語れば毎週チェックしてくださっている方にはもう飽き飽きする話になってしまうので、深入りはしないことにする。この試合もシュートを21本放ちながら枠内はたったの1本(!)、ヴァーディーのヘッドは惜しかったが蓋然性のある形ではなく、やはり攻撃パターンの異様なまでの少なさが心配だ。一方のハルはリアム・デラップとアダマ・トラオレの位置を入れ替え、驚きの右サイドからカラム・ドイルの脇を脅かし続けたデラップが決勝弾。自信に満ち溢れた守備と共に、リアム・ロージニアーの作戦がしっかりハマった試合だった。
明らかに8月のベストチームだったノリッジも今シーズン初の敗戦、しかも相手はここまで未勝利だったロザラムというのも驚きではあった。しかしロザラムの2点はいずれもスローイン起点の見事なゴールだったし、その後ノリッジは十分すぎるほどチャンスは作れていた。実はこれで開幕5試合中3試合で先制したことになるロザラムは守りきれたこと含め当然誇るべき試合だったし、デイヴィッド・ヴァグナーはやけに自嘲的なコメントを出していたが、ノリッジとてもっとシンプルに「運」に敗因を求めてしまって良い試合だったように思う。
カルロス・コルベランダービーはハダースフィールドが今シーズンの初勝利。ここまで攻撃面はある程度見通しが立っていた中で守備が踏ん張り切れず、という展開が多かったが、1つ結果が出たことで良い方向に循環が進んでいきそうな雰囲気はある。一方のウェストブロムは相変わらずのやけに消極的な戦いぶりで、ここまでプレスをしない理由が何かあるのかと考えたくなってしまう。
他にはスウォンジーが準ローカルライバルのブリストル・シティ相手に2週連続の逆転負け、マイクル・ダフのチームらしからぬ負け方が続いており少し時間がかかるかもしれない。そして先週も大きな懸念を書いたミドルズブラは今週もフリーパス同然の中盤を披露し遂に最下位、重要な代表ウィークを迎える。
League One
先週首位に立ったオックスフォードは10人の状況で後半追加タイムに追いつくも、その同点弾を決めたグレッグ・レイが直後ファウルで2枚目を貰って最終的に9人に。そしてPKを与えてしまいポート・ヴェイル(これで4勝1分1敗、しかし開幕の7失点のせいで依然得失点は-3!)に敗戦、この結果ニューリーダーズには昇格2年目のエクセターが立つことになった!
エクセター首位の要因を分析しようとすると、基本的にチャンピオンシップのプレストンの項で挙げた要因のコピーペーストでほぼ成り立ってしまう。
そもそもの失点数(2)が現在L1最少でもあるのだが、打たれたシュート数で見ても2位とはたった1本差の4位(36)、OPxGAも3.01で3位。一方OPxGはリーグ14位とボトムハーフに入ってしまうが、コンヴァージョンレートではリーグ上位に入ってくる。この2チームはリーグこそ違えど、ここまでの歩みが本当によく似ている。
1つ考慮しなければいけない材料として、ここまでの対戦相手がほぼ中位から残留争いのチームだったことは無視できない(2例外と言っていいブラックプールとポーツマスにはそれぞれドロー、負けでもあった)が、ここからの対戦相手も比較的楽なことを思えば喫緊の課題ではない。盟友が解任の憂き目にあったギャリー・コールドウェルだが、彼自身の2年目のスタートは願ってもないものになった。
その「盟友」スコット・ブラウンのフリートウッドからの解任はやや驚きの人事だった。確かに5連敗で下には今季まだ点を取っていないチェルトナムだけ。それでも7月に新契約を結んだばかりで、それには昨季の印象的なデビューシーズンのクレジットが大きく寄与していると思われただけに、なぜこの程度の結果で我慢しきれなかったのか。続報が待たれる。
結果的に引導を渡す形になったのはチャールトン、皮肉にも先週監督解任を行ったばかりのチームだった。あの無関心極まる守備の面影は少なくとも今週には見られず、マーキーサイニングのアルフィー・メイが2ゴール。心機一転と言うに相応しい試合である。
解任バトンが紡がれてしまった形となり、こうなると気になるのはフリートウッドの次の試合。しかし今週予定されていたブラックプール戦は代表招集多数で延期、その次はオックスフォード。どうやら心配する必要はなさそうだ。
ボルトンとダービー。開幕前の自動昇格候補2強の直接対決、それなりの力の差と共に制してみせたのはホームのボルトンだった。ここまでの6試合、あの例外中の例外と言うべき奇妙なウィガン戦0-4負けまで含めたとしても、ボルトンの試合は基本的に彼らの圧倒的な支配が展開の大前提となっている。まだ首位ではないとはいえやはり彼らの強さに疑いようはなく、いつ走り出しても不思議ではない。
レイトン・オリエントとスティーヴネッジの昨季L2優勝争い延長戦は、アウェイのスティーヴネッジが0-3の快勝で3位に浮上する一幕となった。ここまでチームとしての形がしっかりしているとリーグの差などそこまで関係ないのだろう。前節はケンブリッジを破り立て続けの上位撃破を狙ったオリエントを問題にせず、力強いパフォーマンスを見せた。
順位的にはやや奇妙だが、L1で唯一無敗を維持し続けているのがポーツマスだ。しかしここまで複数得点すらわずか1回、ロースコアゲームとドローの多さ故に実力を疑問視する声もそれなりにあった中で、強敵ピーターバラを相手に文句なしの逆転勝利を飾った。
先制されるまでのほぼ何もない戦いぶりが嘘かのように、前半の終了間際から畳みかけた3ゴール。歓迎すべきキャラクターの存在をアピールする試合だった。
League Two
開幕戦とて46試合の中のたった1試合。だからそこで1-5で敗れたからといって、決してその評価をガラリ一変させるべきではない。そんな統計学の常識を雄弁に語るノッツ・カウンティの「次の5試合」、堂々の首位浮上となった9月初週!
もうマコーリー・ラングスタッフの想定外のスロースタートを心配する必要もないだろう。ストライカーとしての自己完結能力、ポジショニングの巧みさ、そして当然シュートのうまさが詰め込まれたこの2ゴールを見れば、決して彼が「チームに下駄を履かせてもらっている選手」ではないことは一目瞭然だ。
ここからは10月末まで前評判、そして実際のシーズンの出だしいずれかの意味で大変に手ごわいチームとの対戦が続く。しかしそこに入っていく上での状態としてはほぼ最高に近いものがあり、純粋に楽しみな向こう2ヶ月になる。
今週を首位で迎えたのはMKドンズだったが、先週も書いたようにここまではxGバトル全敗の5試合。そして今週は実際の試合の結果でもルージングサイドに回ることになってしまった。
それを差し引いても今週のL2で最も印象的なパフォーマンスはその対戦相手、クルーだったと言えよう。こちらも1点早々に取られてから後半3点を取っての逆転勝ち、しかもその後半には散発4本のシュートしか許さず、文字通りMKを圧倒してみせての完勝だった。
ここまでのクルーと言えば開幕からの4試合中3試合が2-2ドロー、しかも全部0-2から追いついての2-2というよくわからない縛りプレイを展開するなど、攻守のアンバランスさが目立っていた。この試合も先制こそ許しはしたが、そこからは前のようにズルズルと行くことなく、それでいて攻撃面の良い点は残しての3ゴールだった。内実はどうあれ首位相手にこれをやったのも評価できる点で、当然浮上を見込んでいいだろう。
シュート23本を放っての1-0勝利。まあどちらの取り方もできるレクサムのトランメア戦アウェイ0-1勝利だが、ここはポジティヴな方に取りたい。よくよく見ればここまで強いチームとばかり当たってきている中で(今週は除く)、シュート数が安定して相手を上回っているばかりでなく、チャンスの質も明らかに向上を続けている。
ましてこの日勝ったのは前日の書類不備によるルーク・アームストロング獲得失敗(50万ポンドのクラブ記録移籍になるはずだった)の嫌なムードを吹き飛ばす意味合いもあった。代役を務めることになりそうなサム・ダービーの逸機が目立ったのは心配ではあるものの、モチベーションは高いはずだ。
一方で順位がそのまま心配に直結するのがサルフォードだ。当然昇格候補ながら連敗で17位、しかも順位だけで言えばもっと下の昇格争いライバルストックポートとは大きく違い、内容そのものがかなり酷い。今週のモアカム戦も25分に先制を許し、その後当然ポゼッション62%を握る支配となったものの、シュート数はたったの7本。しかもそのほとんどがいかにもxGの低いミドルシュートで、つまりはコナー・マカレニーの個人技のみに頼った攻撃だった。
これは今週に限った話ではないし、あのカラバオのリーズ戦でのGKアレックス・ケアンズの大ヒロイックがなければ、今頃雰囲気はもっと毒々しいものになっていたと思う。2年目のニール・ウッドにとっては早くも正念場と言っていい状況となっている。