10月も終わりを迎えようかという中にあって、イギリスでは一段と肌寒さが増してきた。バーミンガムの街中には早くもクリスマスマーケットまで登場して、目からでさえ冬の訪れを感じ取ることができる。
この秋口から冬にかけてといえば、監督交代の季節である。
EFLでは今季、開幕後からここまでで既に14件の監督人事が発生している。もちろんすべてが解任というわけではなく、ニール・ウォーノックやギャリー・ラウエットなどのように自ら職場を去った監督もいたが、最初はややスロースタートだったとはいえここに来て一気に決断に迫られるクラブが増えている印象だ。
中でも現在進行形で監督不在なのはチャンピオンシップとLeague Oneが2クラブずつ、League Twoは4クラブの計7クラブ。その中でもとりわけ個人的に注目している4クラブの事情について見ていこうと思う。
(なお次期監督オッズについては全てBetVictorのものを引用する)
ミルウォール(チャンピオンシップ)
代表ウィークの後半、今やこのリーグでは超長期政権と言っていい4年もの間に渡ってチームを指揮したギャリー・ラウエットの退任を発表し、周囲からの好奇の目線を浴びたミルウォール。その後Talksportでラウエット本人の口から「解任ではなく退任」という説明がなされてそのタイミングの謎は解けたものの、依然として後任人事は決まるそぶりがない。
このクラブの後任を考える上で重要なコンテクストとなるのは、もはやラウエットが指揮するクラブの後期では見慣れた光景となったあまりにもつまらないプレイスタイルへの不満が噴出していたことだ。昨季は最終戦をPO圏内で迎えるなど着実に成績を残してきた状況、さらに特段ミルウォールというクラブ自体に魅力的なフットボールの土壌がない中でも、今シーズンのアイキャッチでも何度か触れてきたようなファンからの攻撃的なチャントが発生していた。
この点を鑑みれば、例えば現在暫定監督を務めるアダム・バレットの正式監督昇格などは考えづらい。ある程度フットボールの質そのものに定評を持つ監督か、それをも上回るような強烈なパーソナリティを持つ人物の任命が予想される。
ミック・ビール、ニール・ウォーノックといった上位に並ぶ人物の顔触れは納得だ。その次にはジョン・ユースティス。ほぼ同じ形でバーミンガムから解任された過去を思えばラウエットの後任として名前が挙がるのも頷けるところだが、個人的には彼が行くとしたらもっと早く話がついていると思うので、ミルウォールに行く可能性は低い気がする(おそらく彼の拠点ミッドランズに居を構えるストークか古巣QPRからのオファーを待っているのではないか)。
また当初の段階では横浜F・マリノスのケヴィン・マスカットの名前が一番人気として挙がっていたが、ここ数日の間に彼の噂は少々トーンダウンしている。
実はレンジャーズへの監督就任報道が日本で報じられていた段階から、まだラウエット解任前だったミルウォールでもマスカット就任の噂が少し流れていた。しかし小耳に挟んだ話では、レンジャーズとの交渉の中で最終的に「マスカット側が日本でのシーズン完了を望んだ」らしく、そのせいでレンジャーズは彼を諦めることになったという(この話はあまり日本では報じられていないと思う)。これを考えるとミルウォールとて12月まで監督の任命を待つことはなかなか考えづらく、マスカットの線は基本的にはないと見るのが妥当そうだ。
リンカーン(League One)
前述のミルウォールと同日、その発表の直前に辞任を発表したのがリンカーンのマーク・ケネディだ。こちらも解任か退任かは言葉を濁した形での声明で、一説にはケネディが公に関心を表明していたアイルランド代表の監督人事との関連が噂されていたが、「クラブによる解任」という真相を語ったのはリアム・スカリーCEOだった。
https://www.bbc.co.uk/sport/football/67161710
もともとの予算規模やクラブへの期待度を思えば一見十分その水準には達しているように思えたケネディの解任。このBBCのインタビューからも彼らがクラブ内部で独自の判断基準を持ち合わせていることは明らかで、そもそもバーミンガムのコーチからの転身を遂げたケネディの就任自体も予想外の人事だったことを思えば、監督界ではほぼ新顔に近い人物の抜擢が濃厚かに思えた。しかし…。
やはりこのダニー・カウリーのリンカーン復帰という字面は極めて魅力的だ!クラブをEFL復帰、そしてそれ以上の上昇ルートへと乗せたあの伝説的な仕事から早4年、その後の2クラブでは思い描いたほどの成功を経験できなかった中で、カウリー兄弟という選択はロジック的にもエモーション的にもとてもしっくりくる。具体的な話が出ているわけではないようだが、期待するしかない人事だ。
ブリストル・ローヴァーズ(League One)
EFL最新の監督人事は今週木曜日に発表されたばかり。お馴染みのジョーイ・バートンを解任したのが現在L1で16位のブリストル・ローヴァーズだ。
シーズン前の順位予想では上位候補の一角に名前を挙げたクラブだが、昨季リーグ最優秀選手アーロン・コリンズの残留やその他の豪勢な補強とは裏腹に、最近アイキャッチでも何回か取り上げていたような本来とは異なる理由での目立ち方に甘んじていた昨今。この解任発表のTwitterポストを(公然の場でバートンに何度となく批判されてきたMF)ルーク・トーマスがいいねするなど、ピッチ外の部分で不必要に注目を集めてしまっていた感が否めない。
内容的には時として上位チームとも互角以上にやり合うなど決して悪くなくポテンシャルは確か、さらにその中で資金力と野心を兼ね備えここまでは特段の問題も見られない新オーナーの傘下とあって、おそらくこの仕事を見据えている現在フリーの指揮官は多いはずだ。
そうした理由からか上位には新興監督というよりも既に実績を持つ顔触れがずらりと並ぶ中で、昨日マーケットムーバーとして話題になったのがイアン・ホロウェイだ。些か「中東系新オーナーの一発目の監督人事」としては年を取りすぎているような気もするが、バートンの直後でそれ相応のパーソナリティを求められる中と考えれば、その部分で彼が見劣ることはない。
個人的にはクリス・ワイルダーあたりも乗ってきそうなプロジェクトだと思うが…。
ブラッドフォード(League Two)
言わずと知れたマーク・ヒューズを10月初めに解任し、そこからの試合をMFケヴィン・マクドナルドの選手兼任監督体制で戦っているブラッドフォード。結果自体は出ている暫定体制ではあるが、先週のアイキャッチでも書いた通りいかにも長期的な上積みがなさそうな勝ち方が続いており、新監督の任命は必須に思える。
そもそもブラッドフォードといえばクラブの規模自体優にL2を超えるものを持っていて、予算面から見ても長年昇格候補と言われ続けながらUnderachivementを繰り返してきたチームでもある。その「誰がやってもダメな理由」を考える必要こそあるかもしれないが、実績が欲しい多くの監督にとって魅力的な場所であることに変わりはない。
それだけにディーン・ホールデンという選択は過去と同じ過ちを繰り返すことにならないか心配だ。経歴的にはチャンピオンシップとLeague Oneで指揮を執ってきたバリバリの監督、ただそのいずれもで結果・内容を残したとは言い難く、決してキャリア的に上向きな指導者ではない。自信をもって次のクラブでは大丈夫、と言えるほどの証拠は何一つなく、スタイル的な明瞭さも見られないことから、今ブラッドフォードが必要としているタイプの監督ではないと思う。
このリストの中で言えばカール・ロビンソンが実績的にもタイプ的にもブラッドフォードのようなクラブには一番合うと思うのだが、26倍であれば数字的にはアウトライアーの部類だ。先に書いた通り癖のあるクラブで自分の色を出すことが求められるだけに、それ相応の個性を選ぶ必要があるだろう。
今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:順位表底辺に閉塞感漂う
League One:“Invincibles“ ポーツマス!
League Two:チームは4連勝もアクリントンに大混乱
チャンピオンシップ
極力ポジティヴな部分に着目して振り返りを行っていくのが本来の私のスタンスではあるのだが、今週に関してはミッドウィークも含めて連敗したチームから触れていくことにする。その出発点はボトム2の両者だ。
ワトフォードとはオーナーシップが目立つ直近うまく行っていないチーム同士、プリマスとは言わずと知れた昇格組同士。共に無視できないテーマを持ったシェフィールド・ウェンズデイの代表ウィーク明け2試合だったが、結果的には双方敗戦。新監督のダニー・ルールは連敗スタートを切る形となった。
これまでの何もできずに負けていた頃に比べれば、内容的には格段の進歩があったと言っていい。近年のドイツフットボール界の本流と言っていい流れを汲む監督とあって、就任初戦にしてワトフォードの地で見せた4-2-2-2のシステムと戦いぶりからはレッドブル色が早くも浸透している様が見受けられ、プリマス戦でもムスタファ・ブンドゥの見事なフリーキックで失点するまでは前半を優勢に戦うことができていた。
一方で、その失点直後のズルズルと行ってしまう部分からは、13試合3ポイントという成績を残している所以もはっきりと垣間見えた。ただ当然新監督の就任直後、スタイル的にはかなりの変化を強いられた中で、スタミナ面などにも改善の余地は大幅に残されている。次は日曜日にローカルダービーでもあるホームでのロザラム戦、紛れもない大一番だ。
まだ少しは期待が持てるウェンズデイに比べて、23位QPRは目を覆いたくなるような1週間を過ごした。
土曜日は残留争いライバルのハダースフィールドにダレン・ムーアの下での初勝利を献上。そして火曜はウェストブロム相手に見るも無残としか言いようのない惨敗。ギャレス・エインズワースへのプレッシャーは頂点に達しつつある。
xGが0.24あるだけまだいくぶんマシに見えるが、これにしたってただセドリック・キプレにブロックされただけのシュートである。相手GKに手を使わせることすらほぼできなかった90分、ウィークデイにアウェイ遠征したファンの心情を思うとあまりにいたたまれない。
加えて土曜日に敗戦を喫した相手のハダースフィールドはミッドウィークにカーディフ戦0-4の完敗。単純な比較にはなるが、今のQPRがいかにリーグ内で取り残されてしまっているかを推し量る上では見逃せない結果だ。もはやファンへのネグレクトと呼んでも差し支えないような、無気力にも見えるパフォーマンスの数々が続いてしまっている。
デッドマンウォーキングに見えるエインズワースの監督としての寿命はもはや風前の灯と言っていい。そういえばこの前、ミック・ビールがQPR公式の投稿にいいねをつけていたが、果たして…。
同じ下位勢では、スウォンジーとコヴェントリーも連敗でそれぞれ順位を19, 20位へと落としている。というかつい最近までPO圏付近にいた両者なので、現時点の順位は「いかに中団グループが混線か」を指し示す指標でしかないのだが、ここ最近の好調ぶりを思えば少し冷や水をかけられたような1週間になってしまった。
スウォンジーに関して言えば、土曜がレスターとの試合で先制してなお健闘を見せた上での逆転負け。これはもう仕方ないとして、火曜にホームでワトフォードに敗れた後に大声量のブーイングが巻き起こってしまった点が気がかりだ。確かにチャーリー・パティーノを最後まで使わなかった等の采配はあったものの、あの4連勝をもってしても、それまでに形作られたマイクル・ダフとファンの間でのすれ違いは解消されていないらしい。ピッチ上の中身というより、雰囲気の面で心配が残る。
コヴェントリーに関しても不可解な日々が続く。xGバトルで言えばこれで7連勝、にもかかわらず水曜のロザラム戦に至ってはxG2.50を記録しながらの逆転負けで、ここまでフットボールの力学に逆らいながら結果を出せていないチームはそう見たことがない。あくまで第三者的な意見だけで言うなら相当運が悪いのだが、ファン目線で見ると違うものなのだろうか。一つ大きなポジティヴになり得る要素として、カラム・オヘアがそのロザラム戦で復帰を果たしている。
上位陣ではレスターがいつも通りの連勝。そして9位ミドルズブラがリーグ6連勝(公式戦7連勝)で一気にトップハーフまで上がってきた。
土曜日の相手バーミンガムについては再来週あたりのSubstackでしっかりとルーニー就任後の初期段階を振り返りたいと思うが、その後の火曜日ノリッジ戦も含め、ボロはシーズン当初の心配を嘲笑うかのような本来の戦いぶりを取り戻したと見ていい。
何がいいかって、その見違えたような守備陣である。キャリック政権のボロといえば、昨季の一番良かった頃でさえシュート数の暴力に物を言わせた「殴り勝つ」スタイルを身の上として、その代償に守備面のアンダーラインデータが芳しくない数字になってしまっていた。ところがこの連勝中のxGAでは、最初の2試合こそ1を超えた数字ではあったものの、直近4試合では0.56→0.55→0.25→0.55という高次元で安定した推移を見せている。
何かメンバー的に大きな変化があったわけでもなく、キャリックが既存メンバーの練度を高めたという理由付けがやはり一番しっくりくる。もともと結果が出なかった時期も別に内容的にはそこまで悪かったわけではないが、ここ最近の戦いを見ていると場面場面での数的優位の作り方などはかなりスムーズになってきていて、とりわけそれはルーニーの下で急な改革に乗り出したバーミンガム戦で明白な違いとして現れていた。昨季は左サイドを上げて行っていたアシンメトリーを今季は右サイドにするなどいくつかの変化も加えている中で、戦力面で明らかなダウングレードがありながらもすぐに立て直してきたキャリックの手腕には改めて脱帽するほかない。
そのボロの火曜の相手ノリッジにも最後に触れておこう。何せ今週最も面白かった試合の当事者でもある。
今季ここまでで最大のxGアウトライアーの1人だったクリセンシオ・サマヴィルの印象的な2発、そして試合後のダニエル・ファルケのクラッシーな振る舞い(結果的にこれはヴァグナーへのプレッシャーを強めそう)など本当に見どころの多い試合だったが、その中でもやはりガブリエル・サラのパフォーマンスについて触れないわけにはいかない。
1ゴール1アシストという表面的な結果以上に、攻守両面どのシーンを見ても黄色い背番号17の影響力を視認できない方が難しく、常にボールに関与する位置で試合に参加していることがわかる。それでいてセットプレイも質が高く、味方に指示を出すような場面も見られる。これほどまでに目立ちたがりで、しっかりと最後の最後までチームに貢献できる選手はそうはいない。
もちろん思い出されるのはグスタヴォ・ハーマーの昨シーズンの驚異的なパフォーマンスにはなるのだが、昨季のコヴェントリーにはヴィクトル・ヨケレシュもいたことを考えると、チームの依存度で言えばガブリエルの方が上かもしれない。万が一彼が長期離脱でもしようものならノリッジは残留争い行きすら考えられる現状で、今季ここまでのパフォーマンスの傑出度という意味では、サンダランドのジャック・クラークと双璧を成すと言っていいだろう。
League One
2位オックスフォードをチーム内でのウイルス蔓延という緊急事態が襲った週末、その影響もあってか今週の彼らは2試合で1ポイントしか取れず。その機に乗じて試合数の不利さえも覆す4ポイントクリアの首位堅持、未だ無敗のポーツマスを幸運が掴んで離さない。
火曜日のケンブリッジ戦で6連勝が止まってしまったものの、やはり圧巻だったのは土曜のカーライル戦だった。追加タイムの決勝弾、セットプレイからのセンターバック得点、もう何度この景色を見たことだろうか!
2週間前のウィコム戦のデジャヴかと言わんばかりに、最後に決めたのはまたしてもコナー・ショネシーだった。リーグ唯一の一桁失点、その立役者たるショネシーとリーガン・プールの新加入CB2人は、攻撃面でもなんと2人合わせて既に5ゴール。それもその内4点が同点弾か決勝弾という重要な場面でのものだ。
これだけ聞くと少なくとも攻撃面に関しては運の要素も感じてしまうが、ここまで8ゴールのエースコルビー・ビショップへの供給も含め、ここまでセットプレイから8得点(リーグ2位)、ヘッドで7得点(リーグ1位)という数字を考えれば、ボックス内へのボールの質という明確な強み・得点パターンの存在を否定することはできない。「各々の強みを活かしたソリッドなチーム」、簡単なようで難しいこの特徴を体現するポンペイを最初に止めるのはどこだろうか。
首位の次は最下位に目を移そう。何せチェルトナム初勝利の記念すべき土曜日、まずはそれを支え続けたファンを讃えたい!
そして就任2試合目で今季初得点、3試合目で早くも勝利を掴んだダレル・クラークにもそれ相応の賛辞が贈られなければならない。決勝点こそリアム・サーコムのクロスかシュートかわからないようなゴールだったが、それ以外の部分でも1つのボールに対して割く人数、こぼれ球への反応速度など、極めて基本的な部分での改善が見られる。
この直後ミッドウィークのブラックプール戦はアウェイでもありいきなり3点を許す厳しい展開になったものの、そこから2点を返し(もちろん今季アウェイ初ゴール)最終的にポイント獲得に迫っただけでもこれまでとは見違えるような姿だった。間違いなく歴史に残るレベルでの無得点ロードを突っ走り、一度は完全に選手が自信を失ってしまった中で、少なくとも「残留争い」には挑めそうなレベルにすぐチームを回復させたクラークの仕事ぶりには感服だ。
それ以外では土曜にシュルーズベリーに敗れてアウェイエンドが激昂、ポール・ワーンへの批判チャントに飽き足らずコナー・ハウラハンが駆けつけての話し合いが持たれるという事態にまで発展したダービーが極めて厳しい局面を迎えたものの、その中迎えた火曜の試合で危なげないホーム戦勝利を飾り一旦騒動は沈静化の兆し。
そのダービーに敗れたのは9月中旬まで首位にいたエクセターで、こちらはこれで6連敗。6連敗自体も今年に入って2度目とあって、急転直下ギャリー・コールドウェルへの風当たりが増してきている。その直近6試合ではわずか1得点、火曜のxGに至ってはわずか0.15とあって、軒並み怪我を負っていた前線の主力が復帰し始めてもなお戻らない調子に不安は募る一方だ。
League Two
まずは一にも二にもアクリントン・スタンリーだ。これで4連勝、降格組の中では最上位の6位に浮上してきたのがピッチ上での出来事だが、最初に取り上げるべき理由はそんな上辺の事象ではない。
https://twitter.com/BBCLancsSport/status/1713980860653769006?s=20
事の発端は2週間前、長年に渡って監督のジョン・コールマンと共にクラブの地位を押し上げてきた大功労者たるアシスタントマネージャーのジミー・ベルが応じたこの物珍しいインタビューだった。おそらくはコールマン/ベル側からの働きかけで行われたこのBBCによるインタビューの中で、彼は今シーズン末に切れる自身らの契約問題について、クラブ側から依然として一切のアプローチがないことに極めて率直な形で不満を表明したのだ。
これに黙っていなかったのがオーナーのアンディ・ホルトだ。以前からブログでも再三再四に渡ってその発言を取り上げてきた人物で、EFLのピッチ外での問題に興味を持っている方の多くがその名前を記憶しているのではないかと思う。
彼は何がしかの理由で今年の3月から(以前あれほど活発に発言していた)Twitterに姿を現さないようになっていたが、チームがMKドンズに勝利した土曜日の試合後に突如アカウントを復活させ、ファンからの「あらゆる質問」を募集しそれに答え始めた。
今見返してみてもなお、この時から現在に至るまでの彼の精神状態が正常であるようには到底見えない。以前からよくTwitterでの連投を繰り返す人ではあったが、とりわけコールマンとベルへの批判の言葉はかなり汚く、これまでのような「クラブのため」ではなく自らの感情に任せた投稿を続けているようにしか感じられなかった。
そして遂に土曜日の22時41分、彼はTwitter上でクラブを売りに出すことを宣言する。
https://twitter.com/AndyhHolt/status/1715845907294326938
もちろん彼がアクリントンの歴史に名を刻む功労者であることは変わりようもなく、これまでの功績がこれで台無しになるわけではない。ただそれにしても、あまりにも残念な事の顛末である。コールマン/ベルが取った手段は確かに少しエクストリームなものではあったが、監督がメディア(とファン)を使って契約延長への動きを引き出そうとするのは別になくはないことであって、例えば最近だとナイジェル・ピアソンもまったく同じストラテジーを使っていた。
一体どの部分がそこまでホルトの気に障ったのかはわからないが、もはや両者の関係は修復不可能に見える。はっきりと昨シーズンの降格を「監督らのせい」と書かれてしまったコールマン/ベル側にしても今すぐ辞表を叩きつけたとて何ら不思議ではない。その中で火曜日に強敵AFCウィンブルドンとのアウェイ戦に2-4で勝利したのは感嘆するほかないのだが、成績とは裏腹に極めて不安定な状況が続く。
リーグ9連勝を飾ったストックポート、しかもその9連勝目が同じ自動昇格圏にいたクルーとあって万事が順調に見える現状ではあるが、その中で残念という言葉では言い表せないほどの恐れていた事態が起きてしまった。今季既に9ゴール、このリーグでは頭2つ抜けた実力を示していたルイ・バリーがハムストリングを負傷、数ヶ月の離脱となってしまったのだ。
その派手な経歴に似合わぬ苦労の日々を経て遂に花開いた彼のここまでのパフォーマンスを思えば、あらゆる面で感情が揺さぶられる負傷離脱だ。この試合に関して言えば代わって入ったカイル・ウートン(彼も待望の復帰を果たしたことになる)が1G1Aの活躍を見せたが、まだ10月ということを考えれば、この段階でバリーを失うのが大きな痛手となることは当然否定のしようもない。彼らにとっては最初の山場を迎えることになる。
兎にも角にも15試合を終えトップ3はストックポート、ノッツ・カウンティ、レクサムとシーズン前の昇格候補3強が並んだ。実はその下の4位に1ポイント差で1試合未消化のスタッツ最強集団マンスフィールドがいるのだが、そこを含めたとしても基本的には順当に強いチームが上に来ているここまでの経過と見ていい。
そこに端然と迫ってきたのが13位のサルフォードだ。サルフォードというか、マット・スミスだ。34歳、遂に迎えた全盛期、ここ4試合7ゴール!火曜のドンカスター戦に至ってはハットトリックでのチームは3-0勝利、これぞ独壇場である。
これほどまで毎試合事も無げにヘディングでゴールを量産する選手がいれば、チームも調子を取り戻して当然だ。もともと姿勢がいいのもあるのだが、もう見るからに今の彼には溢れんばかりの自信が漂っている。既に2桁得点の選手が4人いるハイレベルな得点王争い、その中でもチーム得点の約半分(46%)を占める傑出度は群を抜いていて、まさしくチームの浮沈を一身に背負う。