今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:PO争いへワトフォードの怪気炎
League One:止まらぬポーツマスの高笑い
League Two:不調の首位vs好調の最下位、8-0…?
チャンピオンシップ
ドローに終わった試合から入るのは少し気が引けるが、まずは今週末最大の注目カードだったイースト・アングリアンダービーに触れておかなければならないだろう。
「15年間無敗」を勝ち誇るノリッジのサポーターによる試合後の大歓声がその場の全てを象徴していた。試合全体では間違いなくペースを握りながらも前半に逸機を繰り返し、守ってはソーシャルメディア上で煽り投稿を連発していたジョナサン・ロウに2発決められての引き分け。イプスウィッチにとって忸怩たる思いを残したこの一戦は、しかしながら、この対戦にさえ漕ぎつけられなかった数年間を経て彼らが刻んだ成長の軌跡を確認するかのような試合でもあったように思う。
確かに勝つことはできなかった。しかしまさしく黄色のファンが言うように過去14年間も覇権を譲らず、その間幾度ともなくプレミアリーグにさえ足を踏み入れたライバルチームが、あれだけ内容で先行を許してのドローという結果に全力で喜んでいた。この構図だけを見ても、今現時点での両者の力関係は歴然としている。
そしてノリッジにとってみれば、またしてもフェイクの結果が真の問題をひた隠した。ロウの2ゴールは素晴らしかった。その一方で、チームとしての完成度には純然たる差があった。それだけではない。もし逆転勝利を狙うなら何があろうとどう考えても90分を全うさせなければいけないロウが、あろうことか真っ先に交代要員となったこと。デイヴィッド・ヴァグナーの精神状態は明らかにもう限界だし、なまじ結果が出ていることでそんな彼に引導を渡すこともできない。1月はもう近い。何もかもが心配だ。
試合内容そのもので見れば、今週のヘッドラインを飾るべきだったのはこの試合以外にない。
アウェイで先制され(ちなみにGOTW級のウィル・キーンの一撃)、開始26分で8本もの枠内シュートを許しながらも、そこから取るわ取るわの5得点。いくら相手がどん底状態のプレストンとはいえ、1-5ウィナーのワトフォードが目を見張る成熟度合いを見せ始めた。
ジェイク・リヴァモアが底に入り、1列前に出たエド・カイアンベとイングランドに適応し始めたイスマエル・コネがその前で組み始めた中盤の微細な変化を除けば、結果が出ていなかった頃から特段何が変わったというわけでもない。しかし「誰が出ても同じ戦い方ができる」、つまりチームとしての戦術理解度の上昇が顕著に映る。
この日の1トップはヴァクン・バヨだったがベンチにもミレタ・ライオヴィッチがいて、今季ここまではこの2人で合わせて12ゴール。マテウス・マルティンスが右サイドで先発したのでヤセル・アスプリージャがこの日は途中出場すらなし。CBのライアン・ポーティウスやRBのライアン・アンドリュースもベンチ。これだけの選手たちを休ませつつもこのパフォーマンスができるのだから、チームとしてのベースに確固たる何かがあるのは明らかだ。
レスターとイプスウィッチに負けたのを除けばこれで直近の10試合で無敗。プレイオフ争いに入ってくるだけの実力を持っていることはもう否定しようもない。
それまでに既にホームチームがリードしていたことも書いておく必要はあるが、カラム・ブリテンの馬鹿げた退場で勝敗が決してしまったサウサンプトン 4-0 ブラックバーンの一戦。10人の状態で戦うことをリーグで最も避けたい相手に対して、1枚貰った状態でなぜかボールを高く蹴り上げたブリテンの行動については、ヒュー・デイヴィスが痛烈にも書き残したこの一節をぜひとも紹介しておきたい。
EFLの公式映像で実況アナウンサーは「ブリテンは何を考えていたんでしょうか?」と口にした。2016年6月、EU諸国全体が抱いていたセンチメントを再び響かせるかのように。
それ以外にも「パネンカでのPK失敗→4点目を取った後に謝罪」というチャーリー・アルカラスの行動などコメディ要素もふんだんに交えられた試合だったが、一番の注目点はカイル・ウォーカー・ピーターズとジェイムズ・ブリーの両フルバックがサイドを入れ替えていたことだ。リーグ随一のスキルと突進力を持つKWPの攻め上がりはセインツの戦術において一つの軸になり得る要素で、これまで彼は「傾く側」の右サイドに位置しながらその能力を発揮してきていたが、役割的により中に入ってプレイに関与できる左サイドへのスイッチは実にその意図が明確だ。実際にこの日の彼のボールタッチ数は開幕1,2戦目に次いで今季3番目に多い119回、逆サイドのブリーよりも40回近く多くボールに触ったことになる。結果が出ている中でもラッセル・マーティンは改善の手を止めていない。
シェフィールド・ウェンズデイとQPR、ここ数週の話題を独占する鮮烈な新監督同士の対決となった試合にケリがついたのは90+3分。86分に追いつき、90+3分に勝ち越し!しかもベイリー・タイ・カダマートリとアントニー・ムサバというルールボールの象徴的存在2人の活躍で、ダニー・ルールのウェンズデイが復活の日々を謳歌する。
シュート数は8-5という一戦、試合を通して特に多くのチャンスがあったわけではなかったが、それ自体もイリアス・シャイール(最近彼本人による発音動画を見つけたのでこう表記する)やクリス・ウィロック擁するQPRの前線を抑えたことを意味するウェンズデイにとっては見過ごせない好材料だ。依然今季4勝のチームがここ4試合で3勝、それもこの上ない時期に調子を上げてきた。
ハルはカーディフを終始圧倒する試合運びで3-0の快勝、私にとってはスコット・トゥワインの今季1発目のフリーキック弾が遂に出たことが何よりも嬉しい。
何せMKドンズ時代の21/22シーズン、彼はたった1シーズンのうちにリーグ戦で直接フリーキックを6回も決めた選手である。それ以上何かを証明する必要などどう考えてもない、現状のフットボール界全体を見渡してもそうは類を見ないフリーキックの世界的名手と呼ぶに相応しい存在だ。なのに相次いだ怪我を経てのハル加入後、少しゴールから遠ざかったくらいでそのフリーキックの実力に懐疑的な声が出ているのが悔しいほどだった。
もちろんそんな声が出てしまう理由の一端には、セットプレイに限らないここまでの彼のプレイ全体への煮え切らなさも関係していたと思う。これは以前にも書いた通り慣れないサイドでの起用が大きく関係していたように思うが、もう1つの理由として同じエゴイストタイプのスターマン、ジェイダン・フィロジーンとの噛み合わせが悪かったことも考えられるかもしれない。そのフィロジーンが離脱した穴を埋めるべく左ワイドFWに入ったこの試合で出色の出来を示したとあって、彼の周りの物事がはっきりと好転し始めた。
League One
先週月曜の鮮烈な首位攻防戦快勝に続いてまたしても大きなアドバンテージを取る週末、ポーツマスへの追い風が止まらない!
相手は戦前のトップハーフとはいえここまでの10敗全てが完封負け、21試合で13ゴールしか取っていなかった世にも奇妙なシュルーズベリー。従ってアウェイでの0-3というスコアを決して鵜呑みにすることはできないが、周辺チームの結果と合わせて考えれば、ポンペイにとっては笑いが止まらない週末だ。
これで無敗記録が止まってしまったブラックプール戦以降、合計スコア10-0での4連続完封勝利。しかもその10得点を8人の選手で分け合っている点も特筆に値する。その一翼を担った大エースコルビー・ビショップの負傷も癒え、彼の穴を埋めてきたクシニ・イェンギのオーストラリア代表としてのアジアカップでの離脱を目前に控えたこのタイミングで無事復帰。あの敗戦を引きずるどころか、むしろそれをモチベーションに変えて再び首位の座を固めてみせたというのだから、称賛を贈るほかない。
加えて他チームの躓きである。2位に浮上してきた絶好調のピーターバラこそ勝ったが、その下にいたボルトンとスティーヴネッジが共に勝ち点を落とした。とりわけ先週のショック癒えぬまま、といったようなボルトンは退場者まで出してのブリストル・ローヴァーズ相手の完敗。なんとも対照的な一連の流れを経て、首位交代目前の状況から一転して両者の差は9ポイントにまで広がった。
オックスフォードとバートン、遠目に見ると見分けが付かないようなよく似たエンブレムを持つ両チーム同士の対戦は、ホームのオックスフォードが3-0の完勝を収め3位に復帰。より重要なことに、これがデズ・バッキンガムにとってのリーグ初勝利となった。
「父親や他の家族のことを思うとホッとした」という初勝利後にしては珍しい第一声。オックスフォード出身、もちろん自身も家族もオックスフォード・ユナイテッドの一ファン。前監督の突然の退任に伴ってそんなクラブの指揮を任され、様々な事情があったにせよここまで思うような結果は出ず。そんな中での初勝利、というコンテクストを説明して初めて、このバッキンガムの発言には感慨深い意味が生まれる。こういった背景を持つ監督を実際に迎えることができるクラブはそう多くない。うらやましい限りだ。
他、初勝利という意味ではケンブリッジのニール・ハリスが素晴らしいスタートを切っている。チャールトンと互角に渡り合い引き分けた就任初戦に続き、ホームでブラックプールを破っての初勝利。今シーズン自分たちより順位が下のチームに対してまだアウェイで勝っていないブラックプールの脆弱性を見事に突き、79分に退場者を出しながらも前半に逆転して奪ったリードを守り切った。
再生続くチェルトナムは72分間を10人で戦った末の見事な勝利にあと一歩まで迫りながら、不甲斐ないそれまでを過ごしたレイトン・オリエントが89, 90+2に畳みかけての逆転勝利。リッチー・ウェレンズへのプレッシャーが強まりつつある中ではあったが、これで降格圏とも9ポイント差となり土俵際で踏みとどまっている。
League Two
8-0だ。8-0である!
「首位vs最下位の対戦」という理由付けは適切ではない。首位とはいえ公式戦ここ6試合未勝利だったストックポート、最下位ながら公式戦ここ8試合でわずか1敗のサットン。ここまでのシーズンの潮目が変わらんとするこのタイミングでの、8-0である。
あるいはあの13連勝のために悪魔に魂を受け渡していたのか。連勝ストップ後の底知れぬ不安を脇に追いやるべく、怪我人だらけのストックポートが顕著なステップアップを示した。何せ8点取ったのにもかかわらずウッドワーク直撃も2本、スコアが2桁に到達していたとしても何らおかしくなかったのだ。攻撃陣に対して厳しい批評が寄せられていた昨今だったが、1試合でそれら全てを黙らせてしまった。
またこの試合を受けてサットンはマット・グレイを解任。依然リーグ最下位に沈む現状、そしてこの惨敗のショックを思えば外野の視点からは頷ける部分もあるが、この監督とクラブの実に深い関係を思えば本能的に反対したくなる性質を持つ監督人事だ。歴史的な昇格を成し遂げた実績はもちろんとして、勝っても負けても試合後にはよくパブに現れ、ファンにビールを奢ることもしょっちゅうだったという。「降格したとしても解任には反対」と主張するファンさえ一定数いたことがその関係性を物語っており、次の監督には難しい仕事が待つ。そうでなくとも怪我人続出中の予算規模下位クラブ、グレイ以外であれば今からNLに入ってもどうかという状況の中で、まずは監督探しの段階から難航は避けられそうにない。
2位に浮上してきたバロウにも触れなければならないだろう。これでリーグでは11試合無敗での6連勝、9試合で2失点という驚愕の数字も目に付く。
この試合に至ってはセットプレイから3得点での3-0勝利、前半にリードしたのにもかかわらず許したシュート数はたったの4本。そのスウィンドンの最後のシュートは56分のものとあって、リードした状態での試合運びのうまさはもはや別次元に突入している。周囲にひしめくチームとは方法論を異にする中でも、堂々たる自動昇格候補として名を上げ始めた。
他ではモアカムがドンカスター相手のアウェイで驚きの0-5勝利。暫定監督として1試合指揮を執り、そこで0-6で敗れながらも正式監督昇格を果たしたことで非難の的となった新監督ジェド・ブレナンだが、初勝利もまた何とも派手に決めてみせた。
さらに「追加タイム王」でお馴染みのクルーは87, 90+5で逆転を許す今までとは正反対の展開も、90+7に再び同点に追いついてみせる離れ業。なんとも騒がしい彼らとは対照的にまったく元気がないのがノッツ・カウンティ、今週もハロゲイト相手にいつもの流動的なボール回しがうまく行かず、シュート数ですら敗れる完敗でトンネルに入り込んでしまった印象だ。