おそらくもう理由は説明するまでもないが、今回はバーミンガムの監督交代劇について詳しく綴る予定だった。
しかしある事情により、この件については別の場所で日を改めて書くことになった。Twitterでの投稿を見て楽しみにしてくださっていた方がもしいたら、さらにお待たせする形になってしまい本当に申し訳ない。
そのためここでは、ジョン・ユースティス解任・ウェイン・ルーニー就任に際しての解説という類のものではなく、一個人として今思うことという座組で短く書き残しておこうと思う。
ユースティスが解任されたのは今週の月曜日で、ルーニー就任が発表されたのは水曜日。今日は金曜日なのでこのウィークデイの間に全てが起こった、というのが形式的な真実ではあるのだが、実際のところ土曜日にはその後起こる全てのことが報道などによって予言されていたため、我々はちょうど1週間かけてこの一連の動きに順応してきたことになる。
もっと言えば、ユースティスがunder pressureにあるという状況自体は、夏の間から延々と報じられてきたことでもあった。それは成績どうこうの話ではなく、クラブをグローバルブランドにするために買収し、常にスケールの大きな取り組みを行ってきた新オーナーの動きを見れば明らかだった。
私はジョン・ユースティスという監督が好きだ。アストンヴィラのバックグラウンドを持つとはいえ仮にも地元出身、このクラブの根幹にある理念を理解している。フットボール哲学もモダンで、リアリストだ。時として疑問を抱かざるを得ないような意思決定も見受けられたが、どこまでも完璧な監督なんて存在し得ないのだし、何より彼の下で選手たちが団結している様がとても好きだった。
なので日曜日、どうやら本当に解任する気なのだとわかった時には、やはり少なからず怒りも覚えた。
まして合計スコア7-2での連勝を飾った直後である。この2試合に勝たなければおそらく首は飛ぶだろうと覚悟していた。しかし勝ってもなお解任なのか、そう思うとなんともやりきれない気持ちになったし、実際月曜日の解任声明のワーディングにも非常に良くない感情を覚えた(詳しくは立ち入らないが)。
一方で、もうひとつ重要な点として、「ユースティス解任が不満だからといってそれをルーニーにぶつけることはあってはならない」と強く思った。これは少し時間こそ要したが、現在では間違いなくファン全体の総意と言えるように思う。
この理由については別の場所で詳しく言及するが、先に端的に言っておくと、①オーナーへの信頼感、②ルーニーへの期待、といったところだ。
一部にはルーニーのダービーとDCユナイテッドでの成績をもって、彼の監督としての能力をあげつらう向きもある。これほど馬鹿げた言説はない。ダービーでも、DCでも、彼は基礎中の基礎とも言うべき部分が抜け落ちたクラブで監督として奮闘していたのだから。
そしてルーニーの名前が後任候補として広く取り上げられるようになって以来、Sky Sports Newsでは連日にわたってバーミンガム・シティが1時間枠のトップで取り上げられていた。昨日まではスタジアムにリポーターまで派遣して中継していたし、当然就任記者会見も生中継された。
このExposureを見せられればオーナーが掲げる計画の正当性とスケールを再確認せざるを得ないし、あのウェイン・ルーニーがバーミンガムに来た意味を実感することもできる。ルーニー自身にとっても非常にプレッシャーのかかる仕事になることは間違いないが、そんなことはお構いなしだと答えた記者会見での言葉は非常に心強かった。
だから結果としてどうなろうがそのリーズニングに納得が行っているので、結局今回の決断は多くのファンにとって腹落ちするものとなった。ここには他クラブのファンからでは理解できない、複雑怪奇なここ十数年を過ごしてきたバーミンガム・シティならではのものがあると思う。
その詳細については別の場所(2週間後くらいかな?)での論稿を見てもらうとして、まずはマイクル・キャリックとの初戦を楽しみに待つことにする。
今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:ノースイースト激動の一週間、最後の主役はダン・ニール
League One:ジョーイ・バートン、またもご乱心…
League Two:サルフォード3連勝、立ち返ったフットボールの基本
チャンピオンシップ
水曜日にニューカッスルがPSGを4-1で破り、先週は英国のみならず世界のフットボール界の主役となったイギリス・ノースイースト。だからこそ土曜日、サンダランドがミドルズブラをホームに向かえた “Wear-Tees Derby“ には、大きな意味があった。
ミドルズブラのファンとして知られるトニー・モウブレイがサンダランドのベンチに座り、サンダランドのアカデミーで幼少期を過ごしたサム・グリーンウッドがボロのスタメンに名を連ねる。そしてニューカッスルを憎む気持ちは皆同じ。そんな主役候補多数のダービーマッチ、結果的に話題を攫ったのはダン・ニールと主審のジャレッド・ジレットだった。
0-4。もちろんこのスコアを生み出した主要因は前半終了間際のニールの退場だった。サンダランドは1人少ない状況での戦い方に定評のあるチームではあるが、さすがにこの舞台でマイクル・キャリックのチーム相手では分が悪く、そのグリーンウッドの先制弾でボロがリードを奪ってからはもう独壇場だった。
さて、そのニールの退場である。ネット上では主審のジレットの判断を非難する声が多数上がっていたが、(その過程に多少の問題があったにしても)最終的にニールにレッドカードを提示した彼の判断は努めて正しかったと思う。
まずあの退場シーンだけを切り取って見ている人が気付けない最初の事実として、↑のハイライトでは最初に登場するシーン、ニールが貰った1枚目のカードが本来はレッドであるべきだった。どう見てもボールには行っていない、どう見ても足裏を見せての正面からのタックルである。
この時主審のジレットは迷わずイエローを提示した。彼は比較的クリアな視界を持っていたのにもかかわらず、である。おそらく試合はまだ17分、それまで特にインシデントも起きておらず、試合を壊しかねない判定を下すことに多少の躊躇もあったかもしれない。しかし本来どんな状況であろうがファウルの基準は変わらずに持つべきだし、どちらかと言えばこちらの方が「誤審」だったと思う。
その上で問題の終了間際のシーンを迎える。中継を見ている時には何が起きたのかまったくわからなかった。何も見えなかったからこそ「ニールが何かを言ったのだろうな」ということは容易に想像できた。
審判への文句や遅延行為に対して今シーズンからカードの基準が厳格化されたことはもはや周知の事実だ。繰り返しになるが、どんな状況であろうがそれは同じ基準で適用されなければおかしい。モウブレイは試合後「(2枚目を出す前に)もう少し順を踏んで警告してほしかった」と言っていたが、それがあったとしてもなかったとしてもニールが不用意な文句を言った行為そのものに責任を問われることに変わりはない。ましてあの1枚目を見逃してもらっておいて、なのだから。
ボロはこれで4連勝、既にトップハーフまでも1ポイント差まで迫ってきた。代表ウィーク明けの次節はウェイン・ルーニー初戦のバーミンガムをキャリックがホームに迎える一戦だ。
首位を走るレスター、そして2位イプスウィッチの勝ち点獲得ペースは歴史的な領域にまで突入しつつある。開幕11試合でこの2チームより勝ち点を稼いだチームを調べると、過去20シーズンを振り返っても05/06のシェフィールド・ユナイテッドただ1チームだけ。つまり今シーズンは、ここ20年間のベスト3が2チームも在籍しているのである。
イプスウィッチの勝ち方は開幕からずっと変わらないが、レスターには明らかに変化が見え始めた。なんとここ2試合で許した枠内シュートはわずか2本、シュート数すら合計8本しかなく、相手を圧倒する戦いぶりを示し始めた。
10試合以上が経過し、まず最初に見え始めたエンツォ・マレスカの特徴としては、「選手を自分の型にかなり強引にはめ込むタイプの監督である」という点だ。
攻撃時リカルド・ペレイラが中央に入る偽フルバック式の3-2-5を頑なに採用し続け、夏前にはクラブ内で厳しい立場にいたヤニック・ヴェスターゴーアはこの試合でもピッチ上では断トツのパス成功数181本を記録(ちなみにストークがチーム全体で215本)。レフトバックには本職ではない選手が入ることも多く、最前線のケレチ・イヘアナチョとジェイミー・ヴァーディーの使い分けも単にターンオーバーしているだけのようにも見える。
これは良い面にも悪い面にも取れることなのだろうが、この「選手層=強さ」では決してないチャンピオンシップにおいて、序盤の内容こそ優れなかったものの結果的にこれだけ走っているのだからここまでは「成功」という評価以外を下しようがない。結局選手に求める役割・そしてコーチングが相当はっきりしているからこそ、傍目には適正外に思える選手でもそのポジションをしっかりこなせているのだろう。ここまでは順風満帆の出だしだ。
下位ではQPRに好奇の目線が集まる。内容はその字面からは程遠かったとはいえ何がしかの理由で4連敗を喫していたブラックバーンに対して、ホームでまったく見せ場のない0-4の敗戦。カルトヒーローたるギャレス・エインズワースのハネムーンピリオドは遂に終焉を迎え、スタジアムには大ブーイングが鳴り響いた。
チェアーとアームストロングに全てを任せたと言わんばかりの守備的MFで固めたスタメンも当然助けにはならず、ファンの間での雰囲気は毒々しいものになりつつある。2023年にロフタス・ロードで多くの勝ち点を獲得しているチームのランキングを見ると、彼らはなんとトップ3にすら入っていない。異常である。
ダレン・ムーアが大歓声で迎えられたシェフィールド・ウェンズデイへの凱旋ゲーム。特にハイライトそのものを見る必要はない。
League One
オックスフォード 2-1 ブリストル・ローヴァーズがヘッドラインを飾る。結果的にはレッドカード3枚が乱れ飛んだ一戦、とはいえこれで5連勝となったオックスフォードを讃えるのがまずは筋なのだろうが、敵将ジョーイ・バートンにそんな常識は通用しない。
これで今シーズン4敗目となったブリストル・ローヴァーズだが、彼が素直に対戦相手を称賛したことはおそらく一度たりともない。まだこのクラブ公式ではマイルドに言っているが、試合直後のインタビューではより声高に自分たちの方が「圧倒的に良かった」こと、そして審判に大部分の責任があることなどを並べ立てていた。
一つの指標としてxGを見れば、オックスフォードの1.94に対しブリストル・ローヴァーズは1.19。別にPK等があったわけでもなく、シュート数自体もオックスフォードの方が上。客観的に彼の発言を裏付ける論拠は何もない。
とりわけ最近はバートンのご乱心が目立つ。つい先週も彼は自チームの選手であるルーク・トーマスに「到底男とは呼べない、1人の愚かな若者」と公共の場で言い放ったばかりだ。実はトーマスにこういった言葉が浴びせられたのは今回が初めてではなく、おそらく発破をかけるための作戦なのだろうが、様々な意味からしてこの2023年に取るべき行動とは言えない。
今週の試合後にも恥の上塗りは続いた。事の発端はBBCラジオブリストルがアップしたバートンの試合後インタビューに対し、1人のオックスフォードファンが返信した泣き笑いの絵文字。SNSの確認に余念がないバートンはすぐさまこれを発見、さらにこの「クリス・ホッグ」がオックスフォードのアシスタントマネージャーであると気付き、彼の凡庸な選手生活をスター選手として活躍した自身の現役時代と比較することで、自分を馬鹿にしたホッグを笑いものにしようとした。
もっとも、この「クリス・ホッグ」がただの同姓同名に過ぎない一介のサポーターだと判明した時、笑いものになってしまったのはバートンの方だった(未だにツイートを消していない図太さだけは本当に凄いが)。
観戦した試合についても書いておこう。スタジアムの感想はいつも通りインスタの方で詳しく書いた通りだが、ロンドンの街中を歩いていると突如として現れるブレイヤー・グループ・スタジアムで、レイトン・オリエントがレディングを下した一戦を見てきた。
この試合は基本的に、26分にオリエントが先制してから35分にレディングが追い付くまでの10分間だけを例外として、それ以外の80分間は常にオリエントが攻め続けている展開だった。結果的にはGKデイヴィッド・バトンのミスによって90分に決勝点が入ったが、xGやシュート数を持ち出すまでもなく、オリエントが圧倒したと言っていい内容だ。
シーズン序盤には健闘も見られたレディングだが、これで今シーズンリーグ戦のアウェイゲームでは6戦全敗。さらに昨シーズンまで含めても最後にアウェイで勝ったのは昨年11月12日のことで、ほぼ1年近く勝利がない。
試合後には選手・監督とアウェイエンドの一部ファンが揉めるシーンがあった。先にはっきりさせておくが、他でもない彼らレディングファンには怒りを露わにする権利がある。彼らよりも苦しみ続けてきているファンはイングランド内にはそう存在しない。
その一方で、その怒りの矢面に奮闘を続ける若手選手も立たされてしまったことになんともやるせない気持ちを抱いた。彼らもまた頑張っている。批判を免れるべき、とは言わないが、先にそれを受け止めるべきは別の選手であり監督だ。もっと言えばオーナーだ。これがクライシスクラブの悲しき定めなのだろうか。
首位ポーツマスは今週も勝利して無敗をキープ。攻撃の多様化が見えるピーターバラがこれで6戦無敗、一方で同じPO圏内ではボルトンがカーライルにホームでまさかの敗戦を喫した。カーライルはこれでシーズン2勝目、ボルトンはどうも降格圏付近のチームにめっぽう弱い。
その降格圏付近ではウィガンがこれで4連敗。開幕直後の快進撃で評価を上げたショーン・マローニーだったが、そこからの急失速でファンからの疑問の声が上がるようになってきてしまった。これで3試合連続で退場者が出ており、規律面でも大きな悪循環が見え始めている。
そして何より、今週はこの件に触れないわけにはいかない!
開幕戦の笛が鳴ってから1119分目、時間にして18時間以上が経過して、遂に生まれた今シーズン初得点!チェルトナムの時計を動かしたのはロブ・ストリートだった。
League Two
先週に続いてのヘッドラインメーカーは3連勝のサルフォードである。その前評判を考えればこの時期の3連勝で騒ぐのすら些か奇妙に思えるほどだが、それまでのあまりに低いパフォーマンスレベルを思えば、この突如の好転には驚かざるを得ない。まして今週の相手は今季ここまで1敗、自動昇格争いに加わっているクルーだった。
この試合のターニングポイントとなったのはやはりサルフォードの勝ち越しゴールのシーンだろう(↑のハイライトでは4:22あたりから)。1-1の状況、直前にクルーがネットを揺らしたものの比較的遅いタイミングでオフサイドの判定が下り、そこからのリスタートで逆にサルフォードに2点目が入ってしまった。
もちろんこのゴールがその後の試合展開に大きく影響を及ぼしたことは疑いようがない。しかし一方、ここでサルフォードがリードを奪って以降も各種スタッツはほぼ互角でもあったし、サルフォードの進歩自体を否定することはできない。相変わらず後方でのボール回しをゴール前でのチャンスに変換する方法論には欠けるが、一つ変化が見え始めた点として、長身のマット・スミスなどを活かしたシンプルな戦い方も同時に遂行できるようになっている。
この3試合、あるいは1つ2つと落としていれば、今頃ニール・ウッドの首は飛んでいたかもしれない。ここに来て立ち返ったフットボールの基本、彼らがこのバランスをキープできれば、順位表でも更なる浮上があって然るべきだ。
開幕戦で現在首位のノッツ・カウンティに5-1で勝って以来1分9敗。Doom and gloomと言うしかない状態だったサットンにも大きな勝利が生まれた。しかもよりにもよって前半37分までに4-0とケリをつけてしまう圧勝劇、対戦相手ウォルソールの失望も計り知れない。
シュート数は12-12、xGもほぼ同じと内容面ではスコアほどの差はなかったはずだが、サットンにしてみれば本来得意とするセットプレイからのゴールが出たことが喜ばしい。若干急場凌ぎ感のあったウォルソールの4バックの穴を突き、容赦なく得点を重ねた。
そのサットンが最下位を脱出し、代わって「今年も」24番目に入ってしまったのがフォレストグリーンだ。昨季L1で最下位降格、そして今季も12試合を終え最下位、得点11はリーグ最少タイ。事態は深刻に思える。
今週のアクリントン戦も、バーミンガムからローンのジョシュ・アンドリュースに許した2ゴールはほぼ同じ形だった。CBにライアン・イニス、この日は控えだったがファンカティ・ダボなども擁する守備陣を思えば、この工夫のないパターン化した失点は極めて心配と言わざるを得ない。また最前線にトロイ・ディーニーが座る攻撃陣も前述の通り迫力に欠け、ここまでは特に取り立てる点すらない。
いくら監督初挑戦のデイヴィッド・ホースマンとはいえ、このままの状況でそう時間が与えられるようには思えない。次は21位コルチェスターとのホーム戦、言うまでもなく大一番だ。
監督交代後初戦を戦ったブラッドフォード、ジリンガムの2チームは、それぞれスウィンドンとMKドンズを相手に勝利。とりわけあの爆発的な攻撃力で名を馳せるスウィンドンを苦手のホームで完封したブラッドフォードにとっては象徴的な1勝となった。
またクロウリー 0-1 レクサムの上位対決は後半退場者を出しながらも粘ったレクサムに軍配。クロウリーはシュート25本を放ちながらもその内枠内はたったの5本で、その前の2試合で8失点を喫して以降レクサムは2試合連続の完封劇。相変わらずスクリプトのないクラブである。