先週末にはチャンピオンシップが第45節、そしてLeague OneとLeague Twoがファイナルデイを迎えた。
となれば幕を開けるのはもちろん、「スポーツ史上最大の発明」でおなじみのプレイオフ。L1とL2の項では最終節の振り返りに加えて、その昇格プレイオフも展望する。
今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:レスター優勝、最終節にも多くのステークが残る
League One:1年前の悪夢を乗り越え、ダービーが2位を確保!
League Two:大混戦のPO争いを制したのは…
チャンピオンシップ
金曜夜、眩いばかりの光に照らし出され、衝撃の内容とも言うべき4-0完勝でQPRがリーグを驚かせた夜。その結果が同時に指示したのは、レスターの自動昇格だった。
まずはこのQPRについて触れないわけにはいかない。マルティ・シフエンテスの就任時には10月末にして安全圏とは6ポイント離れた23位、それが最終節の1つ前に余裕を持っての残留決定。それにも増して印象的なのはこの6ヶ月間で見せた戦いぶりだ。
フットボールの形という形がほぼ存在しなかった前任時代を経て、すぐさまオフザボールの動きを整備し守備面を大幅に改善。それまで開幕からの14試合で2完封しか記録できていなかったチームがシフエンテスの就任後10試合で4完封し、xGAの数値もリーグトップレベルにまで上り詰めた。そしてその中で一度もブレーキをかけることなく攻撃面の改造にも着手し、この試合で見せたようなトランジションに頼らず相手を崩す術まで身につけてしまった。
イリアス・シャイールの処遇などオフシーズンに向けた不安定要素は残るものの、全体的には上がり目のみを残すQPRの夏。そこでの動き次第では、あるいは昇格候補ダークホースの一角に彼らを見出す向きも出てくるかもしれない。
https://twitter.com/Japanesethe72/status/1783987588245635148
レスターの昇格についてはTwitterにも既に書いた通りなので割愛するが、このあらゆる意味で簡単ではなかったシーズンを先頭で走り切ったエンツォ・マレスカの功績については改めて強調しておきたい。序盤戦で内容が伴わずとも勝ち続けてしまったことが逆に期待値を上げ、重荷となってのしかかってしまった後半戦。それでも決して小さくないプレッシャーに打ち勝った事実は、当初疑問視された彼の監督としての幅広い能力を示すものに他ならないのだから。
リーズの躓きを見届けた後でイプスウィッチが戦った2試合。14日間のブランクを経た後とはいえ決して遠くない距離を往復したアウェイでの2連戦、彼らは見事に4ポイントを掴み取り、自動昇格へのマッチポイントを手にした。
もちろんハル戦の87分にノア・オハイオに許した同点弾は一定程度痛いものではあったが、ミッドウィークのハードフォートヴィクトリーはそれを帳消しにした3ポイントと言ってもいい。両チームに確かな疲労の色が見えた後半、一度は追い付かれながらもすぐさま勝ち越してみせたその様は、まさしく今シーズンのイプスウィッチの真骨頂とも言うべき姿だった。
最終節、イプスウィッチの優位は揺るがない。何せ対戦相手は事実上降格が決定しているハダースフィールドで、しかもホームゲーム。この状況で1ポイントも取れないということは考えづらく、絶不調かつPOに向け選手の休養も予想されるサウサンプトンが相手とはいえ、リーズは奇跡を信じるしかない。
PO争いにも大きな進展が生じた。なんとここに来てウェストブロムが5位から陥落、ノリッジはよほどのことがなければ進出が決まり、6戦無敗のハルが最後の1枠を付け狙う。
ウェストブロムの3連敗目は内容の方がより気になってしまうような深刻さだった。シェフィールド・ウェンズデイを相手に文字通り成す術なく、守っても相手の3トップ3人に1点ずつ決められるらしくない敗戦。理由は定かではないながらも、ここに来てこれまでの好調を支えてきた全ての事柄が反転し始めてしまったように見える。
最終節の相手はもうただシーズンの終わりを迎えるだけのプレストン。しかもホームゲームとあって、普通であれば1ポイントは優に取れそうな対戦だ。しかし試合を迎える状況としてはほぼ最悪に近く、また意気軒昂なハルは守備面に大きな不安を持つプリマスとの対戦。当然プレッシャーがかかるのはウェストブロムの方だ。
下を見れば18位のストークまでは残留決定、そして先にも述べたように23位のハダースフィールドも事実上残留は難しくなってしまった(どの道相手がイプスウィッチだ)。となれば残るはあと1枠、現在その位置を占めるのはバーミンガムだ。
この2週間では最下位のロザラム、そして23位のハダースフィールドにアウェイとはいえ1点しか取れず引き分け。ディオン・サンダーソンが飲酒運転で検挙されキャプテン剥奪、選手の練習への遅刻も頻繁に噂され、遂にこの試合後には “You’re not fit to wear the shirt“ のチャントがアウェイ席全体から飛んだ。もとより何のアイデアもないピッチ上の状態も深刻で、低空飛行のまま最終節を迎える。
その1ポイント上にいるのがプリマスで、こちらもレスター撃破後アウェイで2連続完封負け中。ミルウォール相手の今節も再び枠内シュート1本に抑えられ、ギリギリで踏ん張っていた守備も83分に決壊してしまった。この試合ではあのモーガン・ウィテカーをなぜか左サイドで先発させるという采配の迷走ぶりも無視できず、袋小路に陥ってしまっている印象を受ける。
この2チームの最終節は共にホームゲームで、しかも共にPO争いのチームとの対戦。プリマスは前述の通りモチベーションの高いハルとの対戦、そしてバーミンガムはPOはほぼ決まっているノリッジとの対戦となる。額面上ではバーミンガムの方が恵まれているが、両者の調子そのものを考えると特に強気になれる要素はない。
ただその2チームが勝ったとなればその上の2つにも矛先が向いてくる。実に第2節以来の降格圏脱出となったシェフィールド・ウェンズデイは最終節にサンダランドとの対戦。シフエンテスに匹敵するダニー・ルールの輝かしいイングランド1年目の完遂へはあと1ポイントとなった。そしてその1つ上にいるのがブラックバーンで、今週はコヴェントリー相手にシュート数26-6、相手に退場者も出て圧倒しながら勝てなかったツケを払わされる可能性も依然として残っている。こちらの相手は99ポイントを目指す王者レスターだ。
League One
トリッキーな結末をファンの誰しもが予感した最下位カーライルとの最終戦、ちょうど1年前に46試合目でプレイオフ圏からはみ出した悪夢をも振り払って、ダービー・カウンティが2年ぶりとなるチャンピオンシップ復帰を決めた!
ピーターバラの地でボルトンがロケットスタートを決め、遅れれば遅れるほどプレッシャーが増幅していったであろう重要な先制点は、なんともポエティックな形で開始5分にもたらされた。1月にブリストル・シティへの移籍を決め、もし自動昇格を果たせばこれが最後の試合となる状況だったマックス・バードの華麗な一撃。生まれ育ったクラブでの「あと3試合」を自ら葬り去り、それよりもずっと大きな置き土産を残した彼のゴールで、実質的に自動昇格の行方は決まった。
終わってみれば最後まで彼ららしく、これで今シーズン22個目、つまりリーグ戦のほぼ半分を占めての完封勝利。OPxGAもSPxGAも共に頭一つ抜けてのリーグトップ、その守備の充実ぶりで堅く勝ち取った昇格シーズンとなった。1年を通しては得点力不足に苦しむ場面も多く見られたものの、やはりポール・ワーンは何だかんだとL1での昇格必勝法を知っている。
来季に向けてはチーム目標をはっきりさせることが何にも増して重要だろう。そもそも昨シーズン、リアム・ロシニアーを解任してワーンを招聘し、スタイルではなく実を取る決断を下してのこの2年間である。そのワーンにしてもチャンピオンシップへの残留という意味では実績に乏しく、また今シーズンにも何度となくファンから彼への解任要求が激化した時期があったように、もともとのクラブサイズからしてより野心的な期待が寄せられることは間違いない。必ず遠くないうちにこのような議論が話題に上がる日が来るはずだ。
しかしまずはこの昇格を喜ぶ以外の選択肢もない。何せ彼らは2年前、文字通りの地の底を見たクラブなのである。消滅の危機に瀕してからの再びの上昇気流、デイヴィッド・クロウズオーナーをはじめとした関係者たちの尽力にも最大限の敬意を表す。
戦前に大きな焦点となったプレイオフ争いは、結局チーム的には1つ入れ替えが起きたことになる。後半戦の猛チャージで最終節前6位につけていたリンカーンが無念にも王者ポーツマスにホームで敗戦、この結果シーズンの大半をトップ6で過ごしてきたオックスフォードがPO圏に返り咲き、バーンズリーをも抜いて5位のスポットに滑り込んだ。
こうして出揃った4チームはなんだか見覚えのある面々。そう、そのオックスフォードを除けば、昨季のPO組から昇格したシェフィールド・ウェンズデイを除いた3チームが再び相まみえることになるのだ。もっとも、今季自動昇格した2チームは昨季にはPO圏すら逃していたチームで、CHからの降格組もどこにも顔を見せていないという点で、このリーグの力学構造は本当に面白い。
3位ボルトンと6位バーンズリーという昨季のPO準決勝と全く同じカードは既に金曜日にファーストレグを終え、アウェイのボルトンが1-3でバーンズリーに先勝。その着実なシーズン毎の進歩にも関わらずファンからは厳しい声も聞かれ始めたイアン・エヴァットのボルトンだが、今シーズン通しで見せてきたパフォーマンスという面から見れば、この4チームの中では抜けている。バーンズリーはPO前にドミニク・タールハマーというオーストリア人の新監督の就任が内定し、公式発表用の写真等も撮り終えていた中で、直前になり彼がワークパーミットの認可条件を満たさないことが判明。直近の恥ずべき混乱に輪をかけるような事態に陥ってしまっている。
4位ピーターバラと5位オックスフォードの対戦。事態をよりややこしくするのは3週間前、オックスフォードホームで行われたこの試合での5-0という派手なスコアラインだ。もちろん昨季はあのウェンズデイとの伝説の準決勝を演じたポッシュのこと、今季もBSMトロフィーで優勝するなどレギュラーシーズン外での強さは健在だが、直近で0-5負けを喫している相手に良いイメージを持っているはずがない。ようやくデズ・バッキンガムの真価が発揮され始めたオックスフォードは自信を持ってこの対戦に臨むはずだ。
3チームが争った残留争いでは結局ケンブリッジのみが勝ち点を掴み、スティーヴネッジに敗れたチェルトナムの降格が決まった。記憶に新しい開幕からの11試合連続無得点という惨憺たるスタートから始まったシーズン、その中でダレル・クラーク就任後に見せた目を見張るカムバックは歴史的残留への期待を抱かせるに十分なものだったが、最後の最後に力尽きてしまった。それでもその降格の仕方は4チームの中で最もポジティヴと言ってよく、来季に向けて十分期待を持てる状況だ。
League Two
昨シーズンに比べて総ゴール数が200点以上増えたエキサイティングなLeague Twoの23/24シーズン。かつてこのリーグに期待するのは酷だったような支配的なスタイルを持つチームの増加によって訪れたL2新時代を象徴するかの如く、最後まで手に汗握る争いが展開された。
EFLのファイナルデイまで残った中では最も先の読めない戦いだったL2のPO圏争い。その最後には、実に11月からトップ7の座を守り続けてきたバロウの8位転落という結末が待っていた。昨年末に7連勝を記録した時点では自動昇格争いすら見据えた時期もあったが、その後スモールスカッドの悲哀もあってか持ち味のソリッドさが急激に消え失せてしまい、守備面のスタッツが悪化。最後の7試合ではたった2ポイントしか取れず、目前にまで迫っていたPO圏の権利がすり抜けてしまった。
なんともバラエティに富んだ顔ぶれが揃ったPOの対戦は共に来週の月曜日に始まる。
4位MKドンズと7位クロウリー、往々にして今季のL2らしい複雑でシステマチックなフットボールを試みる両者の対戦。マイク・ウィリアムソンの就任後すぐさまその支配的な本能を目覚めさせ、このPOにも大本命として臨むMKに立ち向かうは、プレシーズンには降格どころか各所で最下位候補不動の本命として名前を挙げられていたクロウリーだ。最終戦で滑り込んでのPO進出、あるいはイプスウィッチにも匹敵するほどのストーリーオブザシーズン候補となった彼らには、MKにも対抗しうるほどのテクニカルな中盤と前人未到のGoals Prevented 17.9を記録したGKコーリー・アッダイがいる。
こちらも驚異の道筋でPOに歩を進めた5位ドンカスターは6位クルーとの対戦。2-0でリードした状況からこの躍進の立役者の1人でもあったGKティモシー・ロトゥタラが退場(その後アピールに成功し出場停止は回避)し、最終節にして連勝は10で止まってしまったものの、ドンカスターがこのPOに持ち込む勢いは当然計り知れない。対してクルーは3月以降の成績2勝4分6敗がリーグ23位、どうにかこうにか貯金を切り崩してこのPOに進んできた。チームとしての充実度には大きな差があるが、クルーに打つ手は残っているのだろうか。
そのクルーとコルチェスターが戦った最終戦、PO進出と残留に向けては共に引き分けが必要な状況下でスコアが1-1となった後はほぼ無気力試合の様相を呈し、残留争いにも必然的に決着がついた。
スティーヴ・モリソン就任後は特筆に値する追い上げを見せたサットンだったが、それまでに背負った負債があまりにも大きかった。それでも最終戦はMKドンズを相手に2度も2点のビハインドを負う状況から追いついての4-4ドローゲーム。アウェイエンドに駆け付けたファンが万雷の拍手を贈ったのは言うまでもなく、EFLへの昇格を経てほぼクラブそのものというべき存在にまでなっていたマット・グレイの退任を完全に乗り越えて、再びナショナルリーグの舞台から再起を期すことになる。