シーズン予想に入る前に一つだけ今週のことを書いておく。土曜日、ピーターバラに向かうアウェイ遠征のバスに乗り込む直前に、スタジアムで故トレヴァー・フランシスの追悼エリアに足を運んだ。
彼はこのクラブにとってのNo.1レジェンドと言っても過言ではない存在だ。「イングランド史上初の100万ポンドプレイヤー」。お馴染みのキーラン・マグワイア氏がツイートしていたが、1979年当時の紙幣価値を現在に置き換えると、彼のフォレストへの移籍は2億5350万ポンド相当のものだったという。
今でもホームサポーターが入場するスタジアム入口の壁には、トレヴァーとジュード・ベリンガムが描かれたペイントが施されている。それほどまでの選手だった。心から、ご冥福をお祈りする。
2023/24シーズンのEFL展望
気付けばもう8月、来るシーズンの足音はこの週末にまで近付いてきた。
ここからは各3ディヴィジョン、開幕前の段階(先に言い訳をすると、8月終了時点ではない!)での予想を書き連ねることにする。
異論反論、意見、その他いかなるフィードバックも大歓迎です。ぜひTwitterやコメント欄まで!
チャンピオンシップ
これは本気の予想だ。それくらい私は、昇格組ながらにして今のイプスウィッチというチーム、そしてキーラン・マッケンナという監督が持つ能力の高さを信じている。実現すれば11/12シーズンのサウサンプトン以来12年ぶりとなるL1からプレミアリーグへの連続昇格という偉業でさえ、彼らにとって決して夢物語ではない。
確かに昨シーズンのイプスウィッチはL1で2位だった。それでも、順位以外の全ての数字がその破壊的なまでの力を如実に物語っていた。
101得点35失点、得失点は+66。1試合平均のシュート数17.26は2位以下(次のウェンズデイが14.67)ばかりでなくここ数シーズンのどのチームと比べても傑出していて、リーグで最後に負けたのが1月21日と調子も右肩上がりでシーズンを終えたのも強調材料になる。
故に今年1月のFAカップ3回戦ではロザラム相手に圧倒的優勢と目され実際に4-1で勝利、そして4回戦ではあのバーンリーを相手に再試合でこそ敗れたものの、1戦目では明らかにバーンリーを上回る出来で0-0のドローを演じた。彼らは昨シーズンの時点で既にチャンピオンシップ中位~上位級の力を備えていたと見るのが妥当だ。
そこに加えての上積みも大いに見込める。マッケンナ体制は途中就任からの3シーズン目、昨季後半の戦いぶりが示すように戦術の洗練度合いは極めて高いレベルにまで達しており、それでいて頭打ちを予感させる傾向もまったく見受けられない。
この夏にはジョージ・ハーストの完全移籍が叶った。オマーリ・ハッチンソンが新たな攻撃センスを加える。L1レベルでは図抜けた中盤だったジャック・テイラーも獲得した。いずれも「出来上がった」チームに新しいものをもたらせそうな選手たちで、レギュラー格の放出は皆無であることからも、充実の夏と言える。
極めつけは相手チームの戦い方だ。昨シーズンは完全にトップオブザトップの存在だったことで引いて守られる場面が多かったが、昇格組として臨む今季は(少なくとも最初のうちは)その傾向は変化するだろう。
マッケンナのような先進的な考え方を持つ監督にとって、これは必ず良い方に作用するはずだ。毎試合のように60~70%のポゼッションを維持する中でも、彼らは工夫を重ねて2列目や両WBのためのスペースを作り出し、その創造性を発揮させようとしていた。その苦労すら必要なくなるのだとすれば、次に待つ事柄は自明の理だ。
現在Sky Betの昇格オッズでは宿敵ノリッジと並ぶ5番手。昇格組3騎を除けばミドルズブラに次ぐ評価である。
だから、自分でこれを攻めた予想などと言うつもりはない。日本でもこのイプスウィッチが「見つかる」シーズンになってほしい、そう切に願う。
昇格組3チームの中では最上位にとったのはリーズだ。
第一に、この3チームの中では監督の実績が頭一つ抜けている。ダニエル・ファルケは間違いなくこのリーグの勝ち方を知っているし、タレントを活かす力にも長けている。ノリッジ退任後は彼個人としても結果が出ておらず、この仕事にかけるモチベーションも非常に高い。長期的な視点で見てこれが最善の道かどうかはさておくとしても、今シーズン結果を出すという点に関して言えば適任者と言えるだろう。
より重要な点として、選手層という観点から見るとリーズは相当良い準備をした状態で下がってきた。プレミア在籍中に思い切ってかなりの額を若手に注ぎ込み、結果彼らが往々にして「即引き抜かれるほどには育ち切っていない」状態で降格を迎えた。
現状確かにこの夏は獲得よりも放出が目立つが、今のところその中での最年少は24歳のタイラー・ロバーツ(彼にしても近年は主力と呼べるほどの存在ではない)。ウィリー・ニョント、ジョルジニオ・ルター、クリセンシオ・サマヴィル、ダルコ・ジェイビーといった20歳前後の選手らは軒並み残留の意思を示している。
買収のもつれで夏の動き出しが遅れてしまったのは当然気がかりだが、一発目でイーサン・アンパドゥを獲得するなど方針がはっきりしているのもいい。監督人事は別かもしれないが、少なくともクラブの中心にある戦略は降格前からブレていないことが伺える。それは降格組にとって最もシンプルで難しいことだ。
サウサンプトンにも基本的には同様のことが言える。新DoFジェイソン・ウィルコックスの任命時点で降格は現実的な可能性になっていて、半年間をしっかりと準備に充てた上でこの夏の市場に臨んでいることは明らかだ。
このクラブにとっての分水嶺となるのは、いかにラッセル・マーティンのプロセスを信じ切れるかという点に尽きる。
ここまで指揮してきたクラブの順位だけを見れば、広く語られるマーティンの高評価に疑問符を付けたくなる人もいるかもしれないが、彼はいずれ間違いなく業界のトップに上り詰めるであろう監督だ。留保すべきは、MKドンズもスウォンジーも決してリソースに恵まれたクラブではなかったということ。そのせいで過去3シーズン連続で、彼のプロセスの習熟はシーズン終盤まで待たねばならなかった。
初めてリーグ上位の戦力を有するクラブで指揮を執るとあって、マーティンの有名なスロースターターぶりにも変化が現れる可能性もある。さはされどもやはり彼のチームが序盤から走るということはどうしても考えづらく、その時にボードがしっかりと我慢できるか、その覚悟を持って監督人事を行っていたか。これがセインツの命運を握る。
最も心配なのは優勝候補筆頭とも目されるレスターだ。彼らのこの夏の動きから降格に向けたこれまでの準備を読み取ることはどうにも難しく、期待よりもずっと大きな不安が募る。
まず新監督のエンツォ・マレスカだ。ペップ・グアルディオラの元アシスタント、ロベルト・デ・ゼルビの親友。飛びつきたくなるヘッドラインが並ぶカタログスペックだが、監督としての能力は未だ未知数と言わざるを得ない。
唯一の監督歴となる21/22シーズンのパルマは、今シーズンのレスターと非常の多くの共通点を持つチームだった。ブッフォンやフランコ・バスケスといった2部には似つかぬスターを抱える降格組で昇格候補に挙げられ、3年契約を用意されてフルでプレシーズンも与えられたものの、PPG1.5前後の成績に留まり11月には解任。自身が求めるフットボールを植え付けるには「まだ時間が必要だった」と話していた。
前述のマーティンも同型だし、当然そういった監督を呼ぶこと自体が悪いということではないが、少なくともヴァンサン・コンパニと彼を同列に並べることはできないだろう。もちろんその時から時間も経っているので、マレスカが成功する可能性を否定するわけではない。ただそれを予感させる論拠が現状他の監督に比べて少ないことも事実だ。
選手層を見ても昇格組3チームの中では最も心配だ。確かに名の知れた選手は多い。一見豪華だ。しかし冷静にその顔触れを見渡すと、キャリアの全盛期を今現在あるいは今後迎えそうな「上り坂の途中にいる」選手の少なさが目に付く。
守備陣はまだいいが、問題は中盤から前である。キアナン・デューズベリー・ホールが唯一の例外だが、直接得点に貢献しチームを勝たせるポジションの選手にチームの中核になれそうな名前がない。マディソンやバーンズの後釜はどう考えても至上命題だったはずだが、現状では誰で埋めるつもりなのかが見えてこない。
コナー・コーディー、ハリー・ウィンクスという真っ先に行った補強にしても、リビルドに勤しむべきチームのそれではなかった。年齢そのものももちろん、降格組には一定数の「上がっている」選手が必要だと思うし、前述の2人はその真逆だ(ウィンクスに至ってはイタリアで目立った活躍もなくチームが降格している)。
総じてレスターの動きからは狙いが見えず、GKやDFのダブつきも依然解消されていない。8月終盤にパニックを起こす状況も容易に想像できる。選手の実績や財力に敬意を表してPOコンテンダーの一角としたが、解決すべき問題は多く残されている。
他でまず言及すべきはミドルズブラだろう。何事もなければ今シーズンは有力な昇格候補になるはずだったチームだが、ここまでは悪い意味で何も起きていない。守備面の課題がはっきりと露呈している中でDFの入れ替えがほぼないのはやはり心配で、昨季大きくパフォーマンスを落としたGKセニ・ディエンの補強だけでは到底プラス要素は見込めない。チュバ・アクポムのような突如成績を上げた選手が次のプレシーズンを全休してしまったのもいろんな意味で不安だ。
独自路線をひた走るサンダランドは当然今年も大きな注目に値する。まず重要になってくるのはロス・スチュアートの稼働率になるが、今シーズンもヨーロッパ各地からやってきた原石たちを見るのは純粋に楽しみだ。完全にメソッドを確立したように見えるこういった補強を行うチームにはぜひ好成績を残してほしい。
ダークホースに挙げている2つはいずれも夏の補強が際立ったチームだ。バーミンガムはいいとして、ストークも毎年のことながら強そうではある。まず目立った放出を抑えてタイリース・キャンベルなどの主力を守れそうなだけでなく、しっかりとアレックス・ニールの意向が反映されているのが何よりもいいし、ウェズレイのようなローリスクハイリターンの名前も際立つ。昨季は降格以後おそらく初めて「リーグで最も強いチーム」だった時期が春先にあった。今年こそは、の期待がかかる。
現状での明確な降格候補には2チームの名前が挙がる。QPRの地盤沈下はあまりにも著しく、果たしてイリアス・チェアーが残ったとしても苦戦を免れられるかどうかは甚だ疑問だ。エインズワースのやり方に合いそうな選手は誰も取れておらず、そもそもレズ・ファーディナンドが退団した今、クラブ内の指揮系統すら整っているようには見えない。開幕前からこのバラバラぶりではとても楽観的にはなれない。
シェフィールド・ウェンズデイ、というかデフォン・チャンシリは今の状況を恥じるべきだ。プレイオフであれだけの劇的な勝利を収めたのにも関わらず、今の彼らを取り巻くToxicな雰囲気を作りだした責任は全て彼の独善的なクラブ運営にある。ウェンズデイについては毎週のようにここで書いているのでもう深入りはしないが、ファンがあまりにも気の毒だ。
League One
「群雄割拠」という言葉がこれ以上なく当てはまった昨シーズンに比べて、今シーズンのLeague Oneは些か消去法的な考え方を強いられる面々が揃った。
5月にプレイオフが終了した段階ではまずバーンズリーの圧倒的優位は間違いないように思えたが、マイクル・ダフの辞任とあまりにも未知数なニール・コリンズの就任、そして複数の主力の放出に加えて獲得はほぼノンリーグからという夏の動きで事態は振り出しに戻った。
降格組にしてもニール・クリッチリーが戻ってきたブラックプールがまだマシなくらいで、存亡の危機を乗り越えたウィガンは勝ち点-8からのスタート、レディングはフットボールどころではない状況と、とても昇格の可能性を検討できるようなチームではない。
声高に宣言できるほどの自信はないが、ここは一定程度名前に敬意を表するという意味合いも含めて、ダービーとポール・ウォーンの経験がモノを言うと見る。昨季途中就任のウォーンにとっては初のフルシーズン、「2部昇格」というタスクは彼が幾度となく達成してきたものでもあり、通過点としなければならない。
もちろん昨季クラブ最優秀選手のデイヴィッド・マッゴールドリック、そしてキャプテンも務めたジェイソン・ナイトが出てしまったことは大きな痛手だが、守備面の大黒柱エイラン・カシンが残留しそうなのは大きい。また新戦力ではやはりケイン・ウィルソンの名前が一際目立つ。2年前のフォレストグリーンでの大活躍、そして昨季も怪我やシステム変更の犠牲者となっただけであることを考えれば、文字通りチームの強力な駆動力になり得る存在だ。
昨シーズンPO勢のボルトンも当然優勝候補の一角となる。バロウ時代から監督としては6シーズン目を数えるイアン・エヴァットだが、未だかつて彼のチームが「停滞」の1年に甘んじたことは一度たりともない。終盤に攻撃力が枯渇してしまった昨季の反省が必ずや活かされるはずだ。
もちろん戦力面で最大の問題となるのはジェイムズ・トラッフォード(今や1900万ポンドのゴールキーパー!)、コナー・ブラッドリーという2人のスーパーローニーの穴だが、素早い動きでネイサン・バクスター、ジョシュ・デクラス・コグリーという後釜をフリーで早々に確保できた。またお馴染みのカルロス・メンデス・ゴメスも、昨季はディオン・チャールズに頼り切りだった前線に別の持ち味を加えるだろう。
他でメンションに値するのはまずオックスフォードだ。全てが悪い方向に噛み合い残留争いを強いられた昨シーズンだが、禍を転じて福と為し、最後の最後にリアム・マニングを迎え入れることができた。
彼が「イングランド国内を見渡しても最も有望な監督の1人」とまで評価されていたのは今からたった1年前のこと。昨季前半のMKドンズでの躓きはスコット・トゥワインという絶対的すぎた存在の代償、そしてその後の(ボードの責任による)編成の失敗のみに責任を求めていいはずで、事実オックスフォード就任後はチームを目に見える形で上昇させた。
ノッツ・カウンティからやってきたルベン・ロドリゲスにしても、カーディフからやってきたマーク・ハリスにしても、クラブが必要としていた前線のエナジーを補給する出色の補強だ。本来のポテンシャルを考えれば昨シーズンからの大復活があっていい。
新オーナーがやってきたチャールトンも補強面では目を引く存在だ。キャリアの絶頂期を迎えるアルフィー・メイに加え、昨季は悔しいシーズンを過ごしたパヌーチェ・カマラもつい最近までL1のチートコードとしてプリマスの中盤に君臨していた。唯一気がかりなのは監督のディーン・ホールデンで、行く先々で人気になる人物ではあるが、1シーズンを通して有力なチームを作り上げた経験がまだない。もし結果が出なければ、シーズン早々での監督交代も考えられる。
勝ち点-8からのスタートとなるウィガンには、一方でこの上ないほどの上昇ムードを漂わせながらの開幕が待つ。1年前のダービー同様に地元出身の救世主が現れクラブ存亡の危機を脱したばかりか、ファンから絶大な人気を誇る監督のショーン・マローニー、そしてセロ・アースゴーアなどの複数の有望な若手選手を売却せずに済んだ。さすがに自動昇格は厳しいにしても、もしかするとPOくらいならあるかもしれない。
片や現在進行形でクライシスを経験し続けるのがレディングだ。またしてもHMRCへの返済が滞り現在は再び移籍禁止処分中、そもそも選手の頭数が足りていない上に、新監督ルベン・セジェスが志向するハイインテンシティのスタイルにはいかにも向かなさそうなベテランも多い。トム・マッキンタイアなどは資金確保のためにこの夏に売却されても何ら驚けず、それをもってしてもシーズン中どこかのタイミングで勝ち点剥奪が起きる可能性も十分にある。彼らの下に4チームも入ることは想像しにくい。
また(元)オーナーのアンディ・ピリーが詐欺罪で投獄されたフリートウッドも深刻な状況だ。何せほぼ彼の独力で現在の地位を築いたチームとあって、突如今後の資金源が極めて不透明な状況に陥ってしまった。このリーグは毎年のようにピッチ外の問題で降格枠が埋まってしまっている。
League Two
League Twoがここまでの注目を集めるシーズンもそうはない。その大きな理由は過去最強の昇格組2チームの存在、とりわけEFLにようこそ、5部王者レクサムにある。
しかしここで優勝候補と見るのはもう片方のチーム、帰ってきた世界最古のクラブ、ノッツ・カウンティである。
そもそも昨シーズンのナショナルリーグが大きな注目を集めたのは、シーズンを通してこの2チームが一歩も引かぬデッドヒートを演じたからだった。結果的には4ポイントの差が付きレクサムが優勝したわけだが、それも最後の拮抗しきった直接対決の結果によるものが大きく、(たった4ポイントでさえ)両者の力関係を正式に反映したものではない。
その考え方に立脚すると、この夏の戦力の上積みが重要な意味合いを持ってくる。
ノッツはこの夏、前述したルベン・ロドリゲスをオックスフォードに放出したが、逆に言うと目立った戦力ダウンはそれだけ。昨季42ゴールのマコーリー・ラングスタッフはなんと残留の見込みで、それに加えてロドリゲスの穴埋めというにはあまりにも派手な(これも前述の)デイヴィッド・マッゴールドリックを獲得してしまった。
ラングスタッフとマッゴールドリックの2トップだなんて、本来L1でですら反則級なのではないかと思うほどだ。既に昨季の段階であれほどの力を誇ったチームで、この補強には参ったと言わざるを得ない。
一方のレクサムは驚くべきことに、この夏ここまでに獲得した新戦力はたったの1人。そのウィル・ボイルは本来L2に下がってくるべきではないトップクラスのDFではあるが、多くの人が予想していた大補強に動く構えすら見せていない。
夏の移籍に関しては監督のフィル・パーキンソンに全権が与えられているという。パーキンソン曰く「既に昨シーズンの段階で戦力が整っていたため」この夏に大きく動くつもりはないとのことだが、個人的には今の戦力がL2の優勝候補筆頭に推されるだけの質を兼ね備えているようには思えない。
それに加え、プレシーズンの終盤で大エースのポール・マリンが全治3ヶ月の怪我を負ってしまった。これを受けてもまだ補強に向かわないのだとすれば致命的にすらなりかねず、サンダランド時代に強いプレッシャーのかかる状況下での仕事に失敗した経験を持つパーキンソンの前歴から考えても、歯車が大きく狂ってしまうきっかけがそこかしこに散りばめられているように見える。
そのため個人的にはノッツの優勝、レクサムをPO争い付近に配置した。ただどう転んでもこの2チームが今シーズンL2の中心となって回っていくことに疑う余地はなく、楽しみは尽きない。
昇格争いという面ではストックポートに触れないわけにはいかない。こちらも昇格組にして優勝候補筆頭に推された昨シーズンは、立ち上がりの10試合での失敗を度外視すれば5月のPOファイナルに至るまで、結果的に昇格したチームすらも上回るほどの出来で勝利を重ねた。
この夏もニック・パウル(より原音に忠実に「パウエル」から変えることにする)、イボー・トゥーレといったド級の補強が続き、成功を約束する指揮官のデイヴ・チャリナーも順当に留任。昨季に比べるとやや注目度は下がるシーズンとなるが、何事もなければまず自動昇格は堅いだろう。
そしてもう1チーム注目を集めるのがジリンガムだ。降格組として臨んだ昨季は年末年始までわずか1勝で最下位とどん底を味わいながら、新オーナーによる買収と1月の補強でクラブの雰囲気が一変し、2023年の成績はリーグ2位。さすがはニール・ハリスという戦いぶりで残留を果たした。
スコット・マローン、ジョニー・ウィリアムズ、アシュリー・ナディソンといった獲得選手たちの顔触れも多いに評価できるもので、昨シーズンからの上昇気流は未だ継続中と見ていい。一気に自動昇格まで考えられるポジションだ。
他にはサルフォードもニール・ウッドの2年目で上積みが見込める状況、遂に不要な注目を避けられる状況になったことで真の実力発揮があるかもしれない。ベン・ガーナー初のフルシーズンとなるコルチェスターもスタイルの浸透で一気に上昇する可能性を秘め、またここはジュニア・チャマドゥの売却による7桁単位の収入が見込める点も見逃せない。
また残留争いに目を転じると、恥ずべき昨シーズンの迷走から抜け出す様子が見えないクロウリーは昨夏とは対照的な無名のノンリーグ選手の獲得に終始し、WAGMIによるクラブ運営へのモチベーションそのものが疑問視される最悪の状況。そして1年前のジリンガムとよく似た状況の降格組モアカムにも明るい兆しは見えず、資金投入の見込みが立たないことから苦戦が予想される。
その他の質問
(質問をくださったみなさん、ありがとうございました!)
ミルウォールについての所感
少なくともプレイオフ争いには絡めるのではないかと思います。ボルトンの項で触れたイアン・エヴァットと同様に、ギャリー・ラウエットもまた年々チームに確かな進歩を植え付けられる監督で、近年でもプレッシングの方法に変化を加えていて周囲の環境への適応能力には目を見張るものがあります。
その上で近年多くのクラブが興味を示してきたケヴィン・ニスベットの獲得で(彼1人でどうにかなるものではないにしても)戦い方のバリエーションは増えると思いますし、彼に限らずこの夏ここまで獲得した4人全員、今のチームに溶け込む姿が容易に想像できるのが素晴らしいです。ここに若手の突き上げも必ずあると思うので、やはり侮れないチームですね。
ワトフォードの昇格見込みは?またディーニーの復帰は?
ヴァレリアン・イシュマエルという新監督のチョイス自体はとても評価できるとは思います。ただそれは彼のために適切なサポートをクラブが用意できる場合の話であって、ワトフォードのこの夏の移籍市場での動きは、彼のような特定のタイプの選手を多数必要とする監督のための動きには見えません。「取れる選手を取ってきた」という感じです。
相手に走り勝つために有用な人材は元からクラブにいる選手ばかりですし、それにしたって数は足りません。昨シーズンのエドワーズ就任に端を発する顛末に多くのファンが辟易している中で、正直クラブとしての進歩が感じられる夏とは言い難く、上位予想をするだけの根拠を見つけるのは難しいです。
ちなみにディーニーは今レクサムに行くかも、という話が出ています。
今シーズンの注目選手、特に得点王候補は?
一口に注目、といってもそれだけでは数が多くなりすぎてしまうので、1つ指定のあった「得点王候補」に絞ることにします。代表に選ばれる、プレミアのクラブから注目されるなどはシーズンが進んでいく中で活躍を続ければ自然とそうなることだと思うので、今考えても仕方がないかと。
CH: 昨季得点王が残留中も先に述べた通りアクポムはいろいろと不透明な状況。もし残留すればシェイ・アダムズ(サウサンプトン)が別格なのでは?シーズン通してフィットしていれば、という条件付きでロス・スチュアート(サンダランド)にもチャンスがあるかも。
L1: こちらも昨季得点王のアーロン・コリンズ(ブリストル・ローヴァーズ)が残留。ただもし夏に残ったとしても、得点王になれるくらいのペースで点を取っていたら冬に抜かれてしまうと思うので、ディオン・チャールズ(ボルトン)あたりが有力かも。アルフィー・メイとマイルズ・リーバーンのチャールトンデュオももし噛み合えば面白そう。
L2: なんとも珍しいことに、よく考えればここも昨季得点王のアンディ・クック(ブラッドフォード)が残留している。クックはおそらく移籍しないだろうが、前述のラングスタッフ&マッゴールドリックのノッツ・カウンティコンビが単純に強力だ。マリンも有力候補だったがさすがに厳しそう。
ブレントフォードからのローニーで気になる存在は?
現状ローンが決定している4名の中で最も旬な存在はマシュー・コックス(ブリストル・ローヴァーズ)です。何せイングランドU20代表の正ゴールキーパー、元々AFCウィンブルドンから来た選手ですが、ローン移籍自体はこれがキャリア初。
ブリストル・ローヴァーズには昨季正GKを務めていたジェイムズ・ベルショウも依然残留しているものの、ブレントフォードは昨季もエレリー・バルコムをこのクラブに送り込んでいて、一定の出場時間確約を取り付けていました。また単純にジョーイ・バートン監督が後ろから繋ぐスタイルへの変更を画策しているので、おそらくコックスの出番は多いと思います。
EFLの情報収集を行う手段は?
これは本当に多くの方に聞かれることですが、やはり物理的にEFL全36試合を毎週見続けるのには無理があります(とりわけ日本にいたら)。ハイライトの視聴も厳しい時があるので、なるべく試合を見るようにはしていますが、ある程度文字情報に頼らざるを得ません。
一つの有効な方法は各クラブの地元紙番記者をフォローすること。これならReadingだけで完結するので、英語が不得手という方でもなんとかなると思います。
もしリスニングが可能ならPodcastを聴くのが一番です。あえてどことは言いませんが、今の現地EFL界隈はある1つのPodcastを大きなインフルエンサーの軸として回っていると言っても過言ではありません(上述の予想も彼らの考えに多分に影響を受けました)。聞いている内に内容は理解できてくるものなので、もし耳にお暇があれば聴いてみることをおすすめします!
ということで、今シーズンのEFLもいよいよ開幕の時を迎える。私ももちろん土曜日はスウォンジーへ。日本でもDAZNでの放送が既に発表されている。
9ヶ月間のジェットコースターライドへ、いざ乗り出そう!
ストックポートカウンティを取り上げて頂きありがとうございます。ノッツカウンティとのアウェイにはクラブの公式のバスで招待してもらい2021年に行きました。今シーズンは私たちがmassiveになる為の飛躍のシーズンになりそうです。現地のスポトニアンたちはとにかくニックを楽しみにしてます。by藤原理一