先週はつらい1週間だった。日曜日にロンドンから帰ってきて、月曜日の学校にいる間から体調がおかしくなり始めた。
最初は咳が止まらず、部屋が乾燥しているからだと半ば強引に信じ込んで家に帰ったが、その後喉が急激に痛むようになり、嫌な予感が確信へと変わっていった。
私は昨年の夏にも日本でコロナにかかったことがある。その時「ただの風邪」と明らかに違うなと思ったのは、1日ごとに異なる症状が1つずつ出てきて、こちらに休む暇を与えてくれなかった点だった。最初の日のメインは喉、次の日は咳、次の日は鼻水…。そして先週も、まったく同じことが起きた。
イギリスでは少し前まで街中の至るところでコロナの検査キットが配られていたらしいが、今やどこを見たってコロナのコの字もない風景が広がる中で、当然それは中止されてしまっている。
おそらくもう、別にコロナだと診断されたからといって何かが変わるわけでもないし、重症化さえしなければ特段騒ぎ立てるほどのことでもないのだろう。とはいえ自分がかかったのかかかっていないのかはやはり気になる。何のためにもならないのだが、調べたところ1ポンドで検査キットが買えたので、もはや節々が痛む身体を押して水曜日に受け取りに行った。
結果は陰性だった。あれ?
ということで陰性だったのだが、まあそもそも精度の低い抗原検査でもあるし、それをさらに体調の悪い自分1人でやっているのだから、結果が間違って出ている可能性もまったく捨てきれない。症状的にも辛さ的にもおそらくはコロナだろうという前提で先週はどこにも行かなかった(代表ウィークで本当によかった!)。
先にも少し書いたように、今やイギリスではコロナウイルスなど “Still a thing?“ という感じで、本当に限られた場所にだけ残る注意の張り紙くらいでしかあの大流行の面影を感じ取ることはできない。ここは一時期はかなり極端なゼロコロナ対策を打った国だが、政権が変わっていることを抜きにしてもその後の対応もまた極端で、なんとも思い切りの良い風土である。
最近コロナがニュースになることといえば、その当時のコロナ対応の振り返りを現在の政府などが中心となって行っている件についてがほとんどだ。概ねの見解としてロックダウンをしたことは間違いだったとされているようで、今後同様の事態が発生した場合に備えて、大掛かりな反省会が行われている。
その一方で、未だに新たな変異種が確認されているのも事実で、依然として新たな感染者も報告され続けている。ただ現在感染者数のトラックは患者の入院数などを基に行われているらしく、その数で言えば減少傾向にはあるらしい。
https://www.theguardian.com/world/2023/oct/05/covid-uk-how-tracked
今回最も疑問に思った点がここだった。買ってきた検査キットにはセントラルに報告する仕組みの記載がほぼない。一応書いてはあったと思うが、それが義務化されているようには到底見えず、国として正確な感染者数を追う意欲は完全にないのだなと感じた。
これに対して個人的に良いも悪いも特に思わないのだが、各人・各家庭の自立力に判断が委ねられているという点は興味深く感じた。私などはシンプルにつらかったこともあって自主的に自宅隔離したが、何かもっと大事なことがあれば普通に外に出ていっても構わないという考え方なのだろう。そしてその大前提として、「しんどければ休んだり自宅からにしたりしても構わない」という確立された社会の仕組みがある。これはもしかしたら日本もそうかもしれないが、一種自分の成長の機会になったようにも感じた。
私に関して言えば、咳や鼻づまりこそ少し残ってしまったものの、今週からは普通に活動を再開している。
何せ今週は大一番が待つ。先週はずっと家にいたおかげでルーニーの就任会見もフルで見ることができた。次はピッチ上で、新しい我がチームの姿を見ることができる。土曜日が待ちきれない。
今週のEFLアイキャッチ
チャンピオンシップ:おやすみ!
League One:Michael Maradona, isn’t it?
League Two:数多のヘッドライン候補の中でも、グロスターシャーの5-0に分かれた明暗
League One
前回の代表ウィークよりはいくぶんましな4試合開催のLeague One。全試合に一言つけていこうと思うが、その中でまずスタート地点とすべきはやはりこのゴールしかない。
下位クラブ同士の内容にも乏しい1-1ドロー。にもかかわらずEFLは、たった1つのゴールのためだけにこの試合をYouTubeのロングハイライト枠に割り当てたことになる。それほどまでの衝撃、ベテランセンターバック狂気の一瞬、マイクル・モリソンが正真正銘のマイクル・マラドーナになった日!
今やもう35歳、キャリアの大半をチャンピオンシップで過ごしてきた実力者とはいえ、そのプレイスタイルは流行りのボールプレイングDFとは程遠いノーナンセンスCB。故にそのパブリックイメージからはかけ離れた5人抜きゴールの衝撃は計り知れず、あっぱれと言う他にない一撃だった。
共に昇格組のカーライル 0-1 レイトン・オリエントの一戦は昨季L2王者のアウェイチームに軍配。双方が今シーズンの目標を残留に設定する中で、先週ボルトン相手にアウェイでモニュメンタルとさえ言える勝利を飾ったカーライルだったが、今回もその勝利を次につなげることができなかった。
その一方で、ここ最近のオリエントは着実に「直接のライバル」を叩くことに成功している。開幕からの6試合では1勝1分4敗と厳しいスタートを切ったが、その後の6試合では逆に4勝1分1敗と完全に持ち直した。この試合でもポゼッションでは先行を許しながらxGAは0.47の超高水準。前線の顔触れも固定され始め、ピゴットのアシストからルエル・ソティリウの決勝点、形になり始めたと見ていい。
ちなみにオリエントに関しては、先日悲劇的な出来事の影響で84分に(1-0で勝った状態で)中断となったリンカーン戦について、1からやり直しという不条理さを感じざるを得ない裁定が下っている。EFLのルールなので仕方ないのだが、1人の仲間の命を助けようとしたサポーターの懸命かつ賢明な行動を思えば、なんともやるせない再試合となる。
同じく昇格組の中では頭一つ抜けた成績を残しているスティーヴ・エヴァンズのスティーヴネッジだが、今週は「トンプソン」をスタメンに3人も並べたのにも関わらずここ4試合での3敗目となってしまった。試合後のインタビューで性懲りもなくEFLへのVAR導入を要求してみせる節操のなさがなんともこの人らしく愛らしいのだが、この試合に関しては文句を言いたくなる気持ちもわかる。
3-0というスコアラインだったとはいえ、1点目と2点目のラッキーな性質を思えば、ブラックプールとしては思わず笑顔があふれてしまうような勝利だった。それでも先日パートナーの流産を経験したばかりのオーウェン・デイルに2点目のような幸運が降りかかる世の中は圧倒的に正しいし、3点目はWBに転向しているCJ・ハミルトンによる見事な勢いの得点だった。ここ5試合3勝1分1敗で7位、歯車がかみ合い始めた。
リンカーン 0-1 バートン。リンカーンにとってはこれが今季ホームでは初の敗戦、しかし放ったシュート10本の内ベストのxGが0.05ではそれも当然のこととして受け入れる他なく、心配な順位表・パフォーマンス両面での下降が続く。
今にして思えば強豪チームとばかり当たって開幕7試合2ポイントだったバートン。その後初勝利からは4勝2分での6戦無敗、先週は鮮烈なマンデーナイトでの勝利も飾って、ディノ・マームリアが昨季同時期の再現に成功し始めている。
League Two
こちらは1試合だけ延期で11試合が開催。その中でも数多くの注目に値する結果があったが、「Substackヘッドライン賞」を獲得したのは5ゴールという派手な結果でホーム初勝利を挙げたこのチームだ。
ホーム初勝利、どころかここまでホーム6戦6敗だったフォレストグリーンの快勝劇。12分のジョー・テイラーのポスト直撃、あるいはその後の間接フリーキック(絶対にもっとやりようがあった)といったコルチェスターのチャンスがモノになっていれば必ずや試合は別の展開になっていたはずだが、1点目と退場に絡んだジェイ・ミンギの大きなヘルプもあり、結果的にはこのスコアになった。
先週も書いた通り、いくら多くのチームが苦しむ降格直後のシーズンとはいえ、フォレストグリーンは戦力だけを見れば(今節前の段階で)最下位に沈むようなチームでは決してない。攻守両面におけるUnderperformingが顕著かつ新米指揮官がダグアウトに座るチームでもあり、こうしたきっかけを掴めば一気に立ち直る可能性も十分に見込める。
一方のコルチェスターである。2週前にノッツ・カウンティに5-4で勝ってから再びの3連敗、内容に安定感がまるでなく、この日の5失点目などは状況を鑑みたとしても選手の姿勢が崩れていなさすぎる。退場者が毎試合のように出ているのも問題だが、それとは逆方向の問題も同時に抱えているようだ。
今季ここまでの起用選手で見れば、24チーム中最も平均年齢の低い選手たちを送り出しているのがこのコルUでもある。プロセス型監督ベン・ガーナーのチームでもあり、間違いなくもっと長い目で見るべきなのだが、彼自身の言動からも既にプレッシャーは高まってきていることが伺えるのが気がかりだ。
ただその一方で、試合後にはキャプテンのコナー・ホールがスタンドに向かい、直接ファンと言葉を交わして去り際に拍手を受ける場面も見られた。もちろんイングランドでは比較的珍しいシーンで、こういった勇気ある主将としての行動が報われてほしいものだ。
首位かつパス系をはじめとした数々のスタッツリーダーのノッツ・カウンティ。ここまでなんと公式戦無敗かつOPxG2位、OPxGA首位のマンスフィールド。この2チームが争うノッティンガムシャーのダービーマッチ。Skyで放送もされた今週最初の試合は、L2の歴史にすら残るようなハイレベルなマッチアップが期待された。
メドウ・レーンに集った大観衆の前で、タイトル獲得への意思を高らかに表明してみせたのはマンスフィールドの方だった。しかも先制を許してから一気にギアを上げての4得点。ルーク・ウィリアムズが完敗を認めたノッツのダメージというよりも、シンプルにマンスフィールドが大きな弾みにできるような結果だった。
この試合の勝因を考えた時に、やはり彼らは圧倒的に正しかったように思う。vsノッツ・カウンティ、オープンな展開が当然予想される中で、先制された後にギアを上げることができたのは試合前のメンタル面の準備がしっかりできていた証拠だ。また得点パターンとしてもハイターンオーバーの1点目、そしてセットプレイの2,3点目とこれもノッツ相手には定石の形。ここまで負けていないのも納得である。
その2,3点目を取ったセンターバック2人はいずれもこれが加入後初ゴール。そしてその脇を固める両フルバックは背番号が9と11、つまり本職の選手ではない。この完全に新しいバックラインで結果が出ていること、そしてこのダービーマッチで記念すべきゴールが生まれること、どれを取っても印象的と言う他にない。どうしても派手なチームに注目が集まる今季のL2だが、マンスフィールドも自動昇格ミックスの中に足を踏み入れたと言っていいだろう。
敗れたノッツに代わって首位浮上となったのは8連勝のストックポート。17位という現在の位置さえデータ面からはOverachivingなハロゲイト相手だったとはいえ、いつも通りの圧倒的なパフォーマンスだった。気の早い人が開幕直後の躓きで過度に心配していたが、開幕13試合で結局は首位浮上、ここまでは妥当な帰結と言える。
レクサムとサルフォードのコマーシャルダービー。突如復調したサルフォードがアウェイで2点を先制したものの、それでさえまたしても開演したレクサム劇場の序章でしかなかった。何せ88分の同点弾から89分の逆転弾まで、その間わずか54秒!なぜこうも毎回毎回、このチームは(文字通り)ドラマチックな展開を演出できるのだろうか。まるでフットボールの常識に適っていない。
これでレクサムは13試合で27得点25失点、つまりレクサムの試合では1試合平均でちょうど4点が入っていることになる。ちなみにノッツ・カウンティも13試合で28得点25失点、さらにクルーとスウィンドンまで1試合平均4点に迫る合計スコアを記録している。ああ、これぞプライムLeague Two、信じられないリーグだ!
PO圏内にいたAFCウィンブルドンはイラク代表招集で不在だったアリ・アルハマディの穴もあったか、再三の決定機を活かしきれずホームで敗戦。見事に勝ち点を掠め取ったブラッドフォードはこれでケヴィン・マクドナルドが選手兼任暫定監督に就任して以来連勝、要求がシンプルになったことによるまさしく暫定監督になったチームの勝ち方という感じで今後の積み上げが課題にはなるものの、順位表ではPO圏内まで3ポイント差に迫っている。
先週最下位のサットンに0-4で敗れたウォルソールだが、今週はPO圏内のジリンガムに4-1で勝利する見事な天邪鬼ぶりを見せつけた。そのジリンガム、こちらも暫定監督のキース・ミレンは前半に相手ウォルソールの選手をタッチライン際で転けさせて一発退場し極めて奇妙な形で「インパクトを残した」が、ブラッド・ギャリンソン会長は試合後Twitterにスタッツを投稿して満足げな様子を見せた。ニール・ハリスの解任理由がその保守的なスタイルだった、という説はどうやら本当らしい。
最後に、スタメン抜擢された19歳マックス・ディーンの2ゴールで後半追加タイムまで2-0とリードしたMKドンズに、バロウが90+3, 90+5の2ゴールを浴びせて追いついた試合。試合後のグレアム・アレキサンダーの言葉の数々は、過去フットボール界でも類を見ないほどに独特な種類のものだった。
結果的にこれがMKの監督としての彼の最後の姿となり、後任にはゲイツヘッドからマイク・ウィリアムソンが移ってくることになった。
もうここではディテールには立ち入らないことにする(今後嫌でも語ることになるので)が、最近EFL外では最も注目を集める存在だったと言っても過言ではないトッププロスペクト監督が遂にEFLにやってきた。もちろんMKといえば、ラッセル・マーティン、リアム・マニングといった前任者たちの名前を持ち出すまでもなく、「プロセスを嬉々として我慢できる」チームでもある。今後数週間、いやあるいは数シーズンに渡って、大注目の存在となった。