土曜日深夜発の便で東京を発ち、17時間のフライトを経て、バーミンガムに着いたのが日曜日お昼の12時。飛行機の中で大分寝ていたので時差ボケは逆になかったが、やはりそれ以外の部分では日本と違うことばかりだ。
ドバイ→バーミンガムの便は出発が1時間くらい遅れてしまい、そのせいで空港まで送迎に来てくれたスクールのスタッフが到着ロビーに見当たらない。貰っていた連絡先に電話をかけまくり、なんやかんやと待った挙句に落ち合えたのは予定の2時間半後のことだった(今思えば別にバーミンガムに来たことはあるのだから、送迎なんて頼まずに自分で電車で移動すればよかった)。
寮に着いても直前でのイレギュラーが重なり、自分の部屋がどこかを探すのにも一苦労。レセプションに行き事情を話すと明らかに適当な部屋の鍵をくれて今はそこにいるが、ずっとここにいていいのかどうかはまだ未解決だ。
やはりここでは、とにかく問題を自分で解決する能力が求められる。聞けばだいたいのことは教えてくれるが、自分からアクションを起こさない限り状況が好転することはない。
気温も平均すれば20度くらいだが頻繁に雨が降るので基本寒く、localの話すスピードにまだ耳はついていけていない。スピーキングの時の脳内思考速度もまだまだだと感じる。当然まだ友だちもそんなにいないので、やはり心細くて、寂しい。
でもバーミンガムの街はやはり好きだ。(イギリスならある程度どこでもそうだが)自然が多くて景観が整っており、街中を流れる運河もとても象徴的だ。
そして人のあたたかみをこれ以上ないほどに感じた時もあった。
初日、Twitterでバーミンガムに来たことを伝える投稿をした。すると「あるチーム」のファンが100件以上のリプライ、1,000件以上のいいねをくれた。スタジアムでビールを奢るという申し出は数知れず、中には一緒にアウェイ遠征に行こうという誘いも複数来た。
また翌日、「あるチーム」のライバルチームのファンからちょっとおちょくった感じのリプが来ていたのでそれをおちょくりかえしたところ、前日に匹敵する量の称賛のメッセージが来た(見せられないけど!)。
“We all look after you“. この言葉をかけてもらえるだけで本当に心強く感じる。自分は一人ではないのだと感じる。フットボールを好きになってよかった。
まだ始まったばかりのバーミンガム生活。これからどんなことが起こるのだろうか。
今週気になったEFLのニュース
坂元達裕、コヴェントリーに移籍!
シェフィールド・ウェンズデイの監督就任会見
この夏2人目(しかも両方ウェストミッドランズ!)、全体では中山を加えて3人目の日本人選手がチャンピオンシップにやってきた。
坂元達裕選手、ようこそ!
Jリーグやベルギー時代の活躍については偉そうに語るだけの情報を持ち合わせていないが、確実に言えるのは「良いクラブに来た!」ということ。
Twitterでも書いた通り、「昨季POファイナルに敗れたチームへの日本人移籍」というだけなら昨夏の中山と似た条件に見えるが、ハダースフィールドとコヴェントリーとではクラブとしての安定性が段違いだ。
昨夏のハダースフィールドはコルベランが辞めて監督未経験のスコフィールドが昇格、オーナーシップの状況も不安定で、その中で主力が抜けたという厳しい状況に置かれていた。だから前シーズンの実績にも関わらず、どちらかといえば降格候補と評する声も多かった(実際その通りだった)。
主力が抜ける(抜けそう)という点ではコヴェントリーも同じだ。だがヨケレシュの後釜には既にエリス・シムズを獲得(彼を£8Mで取れたのはリーグ全体でもこの夏最大の補強かも)しているし、何よりこのクラブにはマーク・ロビンズというEFL屈指の「土台」がある。
比類なきシーズンの比類なきチャンピオン 「家なき」コヴェントリー、戴冠の軌跡
坂元のポジションもいい。おそらく彼が起用される右WBは、昨年はアーセナルからローンのブルック・ノートン・カフィーがレギュラーを務め、バックアップだったファンカティ・ダボ(上の記事にも登場する)もPO決勝でのPK失敗翌日にリリースの憂き目にあっている。
さらに言えば、ベルギー時代に彼が主戦場とした左WBにも昨年はジョシュ・ウィルソン・エスブランドというローニーがいた。何かと使い勝手のいいジェイク・ビドウェルがファーストチョイスであることからも、こちらのサイドでも十分にチャンスはあるはずだ。
移籍金を支払っての移籍であることからもわかるように、コヴェントリーが彼に求める役割はまず間違いなく「レギュラー」である。
昨季中盤でのカラム・オヘアの悲運の再離脱後、彼らは1月にノートン・カフィーとウィルソン・エスブランドの2人を相次いでローン獲得していた。あまりにも代えの利かないオヘアの直接の代役を探すことはできないから、代わりに「サイド攻撃」という新たな武器を手に入れようとした試みだったと思う。
結果的にグスタヴォ・ハーマーが特筆級のステップアップを見せたこともあって、このWBアップグレード作戦は決して成功とは言えない結果になった。しかしこの夏、今度は最前線のヨケレシュ、中盤のハーマーという屋台骨2本が抜かれようかという状況になって、新たな攻撃のパターンを見出す必要性が再び生まれている。坂元への期待はまさにそれだ。
初めてのイングランド、多少は長い目で見る必要もあるとは思う。それでも中山は一瞬にしてファンの心を掴み、不動のレギュラー格にまでのし上がった。
三好や坂元にそれができない理由があるだろうか?
もちろんない。
【シェフィールド・ウェンズデイ】
https://www.youtube.com/live/dspCEZoW82g?feature=share
チスコ・ムニョスという監督は、どこまでも人の運に恵まれないかわいそうな人物である。
先週水曜日に行われたシェフィールド・ウェンズデイでの彼の就任会見。話題を攫ったのは前監督解任の顛末を巡ってクラブレジェンドにブチ切れたデフォン・チャンシリオーナーの失態だった。
ダレン・ムーア解任事件については何度かTwitterでも触れてきたが、チャンシリが言う「向こうが4倍の給料を要求してきた」という話は仮に本当だとしてもパブリックに晒すべきことではないし、大して補強予算もないのにチャンシリが今季のPO争いを厳命したという噂もある。
彼がポジショントークに終始するのはもはや仕方ない。でもせめて、TPOはわきまえるべきだ。
就任記者会見での彼の破廉恥な醜聞がひた隠してしまったのは、全国紙記者からの「ムーアの解任についてどう思うか」という極めて品のない質問に対して、見事に切り返してみせたチスコの高いスピーカーとしての能力だ。
今会長が話したように、我々には変化が必要です。新時代です。3週間前に起きたことについては話したくありません。私が新たな時代の旗手となり、今目の前にあるタスクひとつひとつに集中していく必要があります。素晴らしいクラブ、素晴らしいファンがいるのだから、前を向かないといけません。
この会見は全国紙記者を対象としたもので、各地方紙にはその後それぞれに個別取材の時間が設けられていた。そこでもチスコは各番記者たちに軒並み好印象を与え、ファンには希望を与えた。
それでも残念ながら、ヘッドラインになってしまうのはチャンシリの乱心である。チスコが「いい人」であることは見逃される。ピッチ上の出来事は蚊帳の外となり、ピッチ外での奇妙な出来事に大衆の関心が集まる。
強いて言えば、イングランド1クラブ目のワトフォード然り、2クラブ目のウェンズデイ然り、彼(あるいは彼のエージェント)は人を見定める目があまり優れていないのかもしれない。
そういったクラブばかりを選んでしまうことに彼自身の責任がないとは言えない。それでも本来、そういった能力と監督として試合で結果を出す能力は切り分けて考えられるべきだ。
ワトフォード時代に「与えられた戦力の実力を引き出す」能力があることは既に証明している。
ならばこのウェンズデイではどうか。残念なことに、ここまで彼らの補強は全く進んでおらず、残留争いに足を踏み入れることはほぼ間違いだろう。
あの伝説のPOキャンペーンからはまだ2ヶ月も経っていない。今のところ、あれをきっかけとした好循環が訪れる気配はない。